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帰還



 近衛悠斗は極々普通の高校生である。

 唯一、普通の高校生と違う点を上げるのであれば彼が幼少の頃より《近衛流體術》という特殊な武芸を身に付けていたところであろう。



「……おお。懐かしの我が家が見えてきたぞ」



 ここ1週間の間、悠斗はエルフの里に武者修行の旅に出かけていた。

 新しく《幻鋼流》と呼ばれる特殊武術を身に着けた悠斗は、久しぶりに感じる自分の家の匂いを味わいながら門を潜る。



 性別転換の実@レア度 ☆☆☆☆☆

(生物の♂♀を転換させる。効果時間は6時間)



「ん。あれは……?」



 屋敷の庭に足を踏み入れるなり悠斗の視界に飛び込んできたのは、庭の木に実っていた面白そうな効果を持ったアイテムであった。


 ケットシーの村から持ち帰った《神樹》という特殊な植物からは、時々こういったレアアイテムを収穫することが可能だった。



「残念ながら俺には、女になりたい願望はないわけだが……」



 持っておけば何かの役に立つことがあるかもしれない。

 そう判断した悠斗は《性別転換の実》をバックの中に仕舞う。



「ご、ご主人さま!?」



 悠斗の帰還に対して誰よりも早く気付いた少女の名前はスピカ・ブルーネル。

 

 頭から犬耳を生やしたライカンは他種族に比べて優れた嗅覚を有していた。

 家主の匂いに気付いたスピカは、お尻から生えた尻尾をピョコピョコと動かしながらも駆け寄ってきた。



「会いたかった……会いたかったです……!」


「俺もだよ。スピカ。会いたかった」


「はう……」



 挨拶代わりにハグをするとスピカはトロンと呆けた表情を浮かべる。

 主人の帰りを誰よりも心待ちにしていたスピカの様子は『忠犬』という言葉がピッタリと当てはまっていた。



「その声……主君が帰っているのか!?」



 続いて悠斗の前に現れた少女の名前は、孤高の女騎士シルフィア・ルーゲンベルク。

 悠斗の外出中は屋敷の中で剣の修行に励んでいたシルフィアであったが、悠斗の帰りを心待ちにする気持ちはスピカと比べても勝るとも劣らない。


 時間を見つけては門の周りをウロウロとして悠斗の姿を探していたのである。



「ただいま。シルフィア」


「――あ、ああ。おかえり。主君。無事で何よりだ」



 シルフィアは悠斗にハグされるスピカの様子を羨ましそうな目で見つめていた。


 叶うことなら自分も悠斗の胸の中に飛び込みたい。

 けれども、騎士として厳格な教育を受けていたシルフィアは自分の気持ちに素直になることができないでいた。



「ん。次はシルフィアの番だな」



 そんな気持ちに目敏く気付いた悠斗は、大きく腕を広げてシルフィアが飛び込んでくるのを待った。



「ど、どういう意味だ主君……!? 私は別にそんなつもりは……」


「いいから。少し黙っていろ」


「あっ……」



 悠斗が強引に体を抱き締めに行くとシルフィアはトロンと呆けた表情を浮かべる。


 微かなに汗の混ざったオスの匂い。

 修業から帰ってきた悠斗の体は一段と逞しさを増しており、シルフィアの胸の鼓動を悪戯に早めさせていく。



「んじゃ、さっそくで悪いが寝室に行こうか」


「「…………」」



 悠斗の意見に異議を唱えるものはいなかった。

 1週間もの間、悠斗との『夜の楽しみ』を絶たれていた2人はそれぞれ欲求不満で悶々とした日々を過ごしていたのである。



(……言えない。エルフの里で別の女の子たちと関係を持ってしまったなんて言えるはずがない)



 一方の悠斗はスピカ&シルフィアとは違う意味でドキドキと心臓を高鳴らせていた。


 エルフの里でハード&ハーレムな修業をこなしてきた悠斗は、同時に複数の女性と関係を持ってしまい修羅場に発展しかねないピンチに追い込まれることもあった。


 新しく出会った女の子たちとイチャイチャするのも楽しいが、何より大切なのは近くにいる女の子たちを幸せにすることである。


 エルフの里での経験により――悠斗は今あるものを最優先で大切にしていこうと決意するのだった。


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