第21話 王都を出発して、短時間で盗賊討伐かよ!
門では俺の商人としてのカード、従魔のタグを確認して、気をつけてと送り出してくれた。
見慣れた王都も巨大な門が、背後でゆっくりと遠ざかっていく。人捜し、そして新しい出会い。不安がないと言えば嘘になるけど、今は背中のハクと胸元にはニジがいる。……よし、行こうか!
ゆっくり歩いて街道を進んでる。
このまままっすぐに進めばいいだけだね。
ニジも目を覚まして、バッグから顔を出してる。俺は変わらずハクの背中に乗っかってるんだ。これ、本当に乗り心地がいいんだ。魔導具のクッションも置いてるけどね。
しばらくして、人がいなくなったら、ハクは駆け出した。気持ち良さそうにモヒカンが揺れてるね。
風を感じて嬉しそうだよ。
時々、森を見ているのは、魔物の気配なんだろうけど、雑魚はいらないし、ハクの側には出てこない。これはすごいね。本能で感じてるんだろう。
そんなのんきなことを考えていると、街道から少し離れた場所で誰かが襲われてる。なんで、そんな場所に? と疑問を持った。
『主、盗賊らしいけど、どうする?』
「そうだね、人がいるから助けようか」
『了解。じゃあ、空から行くから結界張って』
了解だよ、と座っている場所に結界をはる。新調した椅子も入ったよ。
それを感じたのか、ニジが外にでてきた。どうするんだろうと見ていれば、俺の肩に乗っかったね。少しは高い所から見えるからいいのかな。
ハクが空で停まった。
少し先には豪商だと思われる馬車と、沢山の冒険者たちがいた。
だが、少し遅かったようだ。
冒険者たちは数人を残して息絶えているし、豪商の腹には長剣が突き刺さってる。
はぁ、なんでこんな奥に、と思ったんだけど、弱々しい結界の魔力残滓がある。結界があると安心していたか。
冒険者たちは、逃げようとしたが、目撃者は残さないんだろう、すぐに殺された。
あと、数分早ければよかったんだけど。
『主、盗賊は殲滅する?』
「そうだね、あんなやつらは必要ないよね。やっちゃおうか。地上に降りたら俺も降りるから。背中にニジがいるからね。結界は張ってる」
了解、と聞こえたと思ったら、一気に地上へと突っ込むハク。うぉ! すっごい速さだよね。
地上に降りる少し前に、ニジにハクの背にいるんだよと告げて、結界を通りすぎ、飛翔で浮かんだ。
「うわぁ!? なんだ、この魔物。みんな、気をつけろ、でかいのが来たぞ!」
失礼なやつだな。
「ねえおじさんたち。この子は魔物じゃないよ。霊獣で僕の眷族だね。さて。人殺ししたんだから、命はいらないよね。ほんの少し間に合わなかったよ」
「なんだ、ガキ! お前の従魔か。霊獣だ? おい、高く売れそうだぞ。おまえら、ガキをやれ。俺たちは従魔を捕まえる」
おー! と大人数で俺に向かってくるんだ。
もう、面倒だね。
刀を抜いて、迎え撃つ。だが、なかなか来ないんだけど。
ハクは? と見れば少し浮いて、四肢を使って盗賊たちを翻弄している。じゃあ、俺も負けられないか。
やっとたどり着いた盗賊を真っ二つに切る。
次々と襲ってくるんだけど、面倒だね。
右手で剣を振り、左手で魔法を使ってみた。
<氷刃>
シュパパパーと盗賊五人の首が飛んだ。
一瞬で静まりかえった街道。さっきまでの威勢はどこへやら、残った盗賊たちの顔から血の気が引いていく。……でも、後悔するにはもう遅いんだよ。
それを見て、理解したんだろう、ハクも本気を出したみたい。
太い爪で盗賊たちをなぎ倒し、後ろ足の爪でも切りさく。
あはは、すごいね、ハク!
五分くらいで、三十人ほどいた盗賊たちが倒れた。間違いなく死んでるだろうね。五体満足なやつはいないから。まあ、盗賊は放っておいていいけどね。
じゃあ、この馬車、どうするかな。
とりあえず、おいておけば誰かが持って帰るかな。いや、ダメだろうよ。それはただの盗人だね。
じゃあ、仕方ないからストレージに入れようかな。
豪商が身につけていたものは、大したものはなかった。
まあ、それはいいけど。後で確認して整理しよう。
じゃあ、アジトを探すかな。
マップを使って探せば、すぐにわかった。
やっぱり近いよね、アジトって。
とりあえず浄化してハクの背に乗る。
戻った時には、ニジが大きく跳ねて喜んでた。なんだか、嬉しそうだね。
そのままハクに道順を伝えれば、一気に飛んでくれる。
あっという間に森の岩棚に到着した。
ここも洞窟かな?
人の気配はないね。どうやら、お頭も一緒に行ってたらしい。まあ、人がいなくてよかったよ。奴隷とかいた日には、どうすればいいのかわからないからね。
とりあえず、洞窟に入ってハクと並んであるく。
ニジもというので下ろしてやった。
ピョンピョンと跳んで先に行っちゃうんだけど、大丈夫なの?
「ニジ、危ないから気をつけて」
「ピピィ~」
あはは、ちゃんと返事をしたね。
奥へと向かっていると、扉の前でニジが跳ねてる。
どうしたの?
どうやら、なにかあるらしいね。
じゃあ、とドアの中の気配を探ると危険はないみたい。それなら、とゆっくりドアを開けた。
は?
思わず止まったよ、俺。
部屋の中には、中身が金らしい麻袋が山積みになっている。それと木の箱にいれられていたのは大金貨だね。こっちは? ええと、これも大金貨。これは……白金貨だよ。
残りの大きな木箱は全て白金貨だった。
じゃあ、あの袋は?
鑑定して見れば全てが金貨だ。中くらいの箱は銀貨、小さい箱は銅貨だった。それぞれ、ふたつずつあったけど、ため息しか出ないよ。
とりあえず、アイテムボックスに入れて、これは本格的に中身を確認した方がいいと感じた。
まだ時間は早いけど、今日やるかな。ついでに料理の下ごしらえもやりたい。
他のお宝は、と見てみれば大型の魔導具はなかったけど、マジックアイテムはいろいろあった。
小物たちだけど、そこそこの値段するよね。
アイテムボックスの時間停止型、容量無制限はたくさんあったよ。あと、容量に制限があるものもかなりあった。
それ以外は、珍しいものはなかったね。
すごかったのは、武器と防具だね。
武器は様々ありました。見たこともないものもあったんだ。これはなに? と鑑定すれば、どうやら、この一角は防具、武器など、全てが迷宮産らしい。どれも一級品だけど、俺の持つ刀から伝わってくる研ぎ澄まされた気配には及ばない。見たこともないものなので、とりあえずは確保しよう。
それ以外は、ランクの高い新品と指定して、集めた。
貴族の平服は、もういらないね。
とりあえず欲しいものは確保したんだけど、あとは食堂かな。
だが、それはかなわなかった。
前まで行ったとき、悪臭しかなかったから。
じゃあ、と外にでて、どこにいくかと考える。
その時、ハクが空に上がった。
あ、魔物がいたんだね。
俺と肩の上のニジは結界を張ってます。見上げると、ワイバーンと小型の竜みたいなのがいるね。
あ、ハクが魔法を使って倒しているよ。ワイバーンのクビがスパスパきれて落ちてくる。
あらら、とそのままストレージに回収した。そして本体も同じように入れました。
そのあとも三回お代わりしましたよ。これでワイバーンが十匹です。あとの小さな竜もどきは、クビを狩って森に放ったので、必要ないんだろうね。
『お待たせ、主。汚れたかな』
(浄化!)
おお、綺麗になったよ。
「じゃあ、そろそろ行くか。どうせなら、どこかでお昼にする? それに荷物を整理したいんだ。あと、料理の下ごしらえもしたい」
『わかった。じゃあ、尖った岩山がいい?』
「そうだね。それなら問題ないと思うよ」
わかった~と嬉しそうに背に乗れという。
ニジと一緒にハクの背に乗り、結界を張り直した。すぐに空に上がったハクはあちらこちらを見ながら進んでますね。少し高い場所まで行くからと言ったので、お任せだな。
ニジはハクの背上で楽しそうに回りを見てるね。
『主、あのあたりにはいろいろ岩山があるよ。どれがいい?』
ええと、回りを見てみよう。
あまり山が近くない方がいいなぁ。それなら……
「ハク、あの岩山にしよう。今から上をカットするからね」
了解~
返事が聞こえたので、目当ての岩山の山頂をカットした。シュッと音がして山の上が吹っ飛んでいったね。カットした岩は遙か下の森へ消えて行く。ちょっとやり過ぎたかな。まあ、誰にも見られてないし、自分たちが快適なら問題ないよ。奥側も結構深かったんだ。よかった、安心だよ。
ハクは静かにカットした岩山に降りてゆく。
無事に降りたあと、すぐに結界を張った。魔力マシマシでね。
回りから落ちないように、少し内側に張ったよ。ニジが落っこちると大変だし。
ハクの椅子を外してやれば、身体をブルブルと震わせてるね。
『主。今日は風呂を作るの?』
「うん、作るよ。その前にいろいろ確認したいんだ。そうだ、じゃあ、お風呂先に作ろうか? 水を入れたら泳げるよ、どうする?」
『それ、いいな。頼める?』
いいよ、とニジを確保してもらい、土魔法を発動する。「ピピィ!」とニジが期待に満ちた声をあげる。プルプルと身体を震わせる姿は、まるで子供がプール開きを待っているみたいだね。
ニジが休む場所もいるから、この辺りは十センチくらいの深さで。あと、その向こうは深さ五十センチで。あと、ここからは、深さが1メートル50センチくらいで。
そう言いながら、石で線を引いた。
<土魔法>
ゴゴゴーゴリゴリガガガー
あはは、土木工事だよ、やっぱり。
じっと見ているのはハクと背に乗ったニジだね。
とりあえず、俺はさっき回収した馬車を取り出す。
中を確認する為に荷物をバラした。




