第107話 ドマーニを皆に紹介した翌日、俺とクロノスはSランクダンジョンに戻った
その間に皆が風呂から上がり始める。じゃあ、部屋を作っている間に皆がそれぞれ出てきた。
準備をするためにラスとロイはキッチンに向かった。
じゃあ、俺は自分の仕事をしましょう。
とりあえず、この部屋を一部屋にしたい。広さは畳十四畳くらいで。そこは寝室。ベッドは二つ。その間には車椅子が動けるエリアが欲しい。そしてトイレと風呂、ミニキッチンが欲しいがそれは増築か空間拡張でもいい。ただし、換気扇が欲しい。特に風呂には換気扇は絶対だ。車椅子が中で動きやすい方がいい。それと介護用の風呂用椅子も必要。あとは、入り口に段差はない方がいいかも。水漏れなどはしないように。その隣にはミニキッチン。そして車椅子用のトイレは必須。前世の知識しかないので、あんな風な便利な車椅子用トイレがありがたい。
うーん、こんな感じかな。便利なことはお任せしますので、よろしくお願いします。あ、ミニキッチンは寝室の奥に空間拡張してもかまいません。ミスリル侍従が使いやすい方がいいです。
よろしくお願いします。
(創成魔法)
うわ、まぶしいな。収まるまでに少しかかるか。そういえば、車椅子って、ホームセンターにないかな。プロ用のところに良い物があるかもしれない。ちょっと見てみるか。
(ホームセンター)
おっと、福祉用品がプロ用のところにあるな。今の車椅子はすごく大型だし、重そうだ。それなら軽いものがいいかもしれないな。ええと、ちょっと見てみるか。車椅子って、手押しと魔力で自走できるものがあるらしい。それなら、以前の電動って感じか。魔力の方が重さは軽いんだな。そうか、水晶に魔力をためるからな。あ、魔力をためる場所を考えてなかったな。それなら作業場に集中システムを作るか。寝室と風呂の建物と作業場でわければ効率がいいかもしれないな。
この自走式の車椅子は二十五キロくらいらしい。それなら随分軽いよな。今のは持ち上げることは難しいからな。これ、使ってみるか。
おお、出てきたぞ。これ、随分小ぶりだな。でも、魔力で動くから少し背が高い。このクッションも良い物らしい。ここに魔力を入れるのか? じゃあ、ちょっと入れてみるかな。
創成魔法は続いてるから、今の間にっと。
ちょっと多めに入れましょうかね。ええと、うん、そろそろ満タンになるかな。押し手も高さが変わるみたいだ。右のレバーを動かせば、自由に動くな。これは良いかも。もう少しクッションを座面から背中まで、何かなかったか?
確認してみれば、オプションであるぞ! これもいいな。
「ドマーニ、ちょっとこっちに来て」
はい、と車椅子を侍従が押してやってくる。
「これ、使ってみてくれ」
「これは?」と不思議そうだ。
「これは内緒の話なんだが、俺は勇者召喚に巻き込まれた異世界人だ。だから今までいろいろあった。その能力でいろいろとやってきた。他の国の異世界人からも、重すぎるスキルだからと特別なスキルを受け取った。だからストレージの中にこの世界にない食料品や車椅子や道具類などを取り出せる。
本格的に冒険者を初めてハクという初めての眷属を得てからは、どんどん増えてな。だから君の力になれることもあると思う。この車椅子は俺の住んでた世界の物だが、軽いし便利だと思うぞ」
「素晴らしいですね。もちろん、内緒にしますのでご心配なく。これは無償でいいのですか?」
「問題ないぞ。それとドマーニって言いにくいな。名前は?」
「あ、私、アリー・ドマーニといいます。アリーと呼んでください。それで、この車椅子は……」
「移動してみろ。クッションもあるから」
そう言えばミスリル侍従がアリーを抱き上げてそっと車椅子に下ろした。
すると腕に力を入れて座る位置を調整している。うん、クッションもあってよかったな。
だが、どうやって使うのか、と迷っているようだ。
それなら教えようか。
「ここにあるロックを解除するんだ。その後は、進むだけならこのレバーを押すんだ。前に押せば前進、右と左も同じだ。停めるときは、レバーを中央で停めるかわからなければ右手を離せばいい。それだけだ。段差や長時間、狭いところに入る時には、侍従の力を借りないとダメだろうけどな。ちょっと動かしてみるか? 侍従は押しても移動できるし、隣で一緒に移動してほしい」
「カシコマリマシタ」と請け負ってくれたので、大丈夫だろう。ちょっと安心したのは内緒だ。古いのはどうしようかと聞くので、アイテムボックスに入れておけばいいと言った。それなら部品を取ったりするときには使えるから。
大喜びで古い車椅子を手で触って収納した。
「タケル様。そろそろ食事を取られませんか?」
え? と時計を見るともう八時だ。
悪い、と伝えて移動する。アリーは上手に車椅子を動かしてるな。
「移動する場所は石を敷くか」と呟いた俺を見上げるのはアリーだ。にっこり笑顔を返しておいた。
皆、戻ってきたらしく、揃っていた。テーブルの上には、様々な料理がそれぞれのトレイに盛り付けられている。そう、人は仕切り付きの皿をラスの提案で作ったのだ。従魔たちはさすがに無理だったが、クロノスだけは仕切り皿のデカいのにしたのだ。当然、アリーの前にも置いてある。アリーは不安だったのかリカの隣に車椅子を止めたようだ。女同士やりやすいだろう。
皆、今日の討伐の話を順番にしてくれる。ハクとフィーリア、ニジは全体の半分ほどは進んだらしい。今のところはそれほど恐れる魔物は出てこないということだ。明日も気をつけるようにと伝えた。
次は、冒険者組とドラゴニュートのアレックスはどうやって進めているのかを聞いた。バウによると、冒険者たちはリカを守りながら進んでいたという。アレックスは少し離れて魔物を倒していたと聞いた。
リカの仕事はそれほど時間はかからない。通路の罠もチェックながら進むリカの側にはバウが同行して進むらしい。当然、皆もそれぞれ役目を決めて進んでいるらしい。アレックスとパトリオットは落ち着いていると聞いた。だが、俺は少し不安だ。いつまでこの行儀の良さが続くか、怪しいものだ。
それはそれとして。
ここで、皆に紹介することにした。
「今日、新しい仲間が増えた。魔導錬成師のアリー・ドマーニだ。うちの魔導錬成部門をになってもらう。アリーは足が悪い。車椅子がないと移動できないが、これは特別に軽い車椅子を用意した。だが、いつも侍従が側についてる。アリーはセバスを作った職人だ。少し身長が伸びたので、今の子を作ったらしい。だからアリーのことは、ええと、アリー、侍従の名前は?」
「一応、私はブブって読んでます」
「だそうだ。だからアリーとブブは体調を見ながら仕事をする。皆も、一般庶民に使ってもらえそうな物あれば聞いてみてくれ。理不尽な要求はしないように。あまりに酷いと屋敷にはいられなくなるぞ。それくらい貴重な仕事をするんだからな」
ここまで言っておけば大丈夫だろう。これで変なことをするなら破門しかない。俺の言うことが聞けないなら、ファミリーではいられなくなるから。
食事を終えた俺は、ニジを肩に乗せてアリーの部屋を確認に行った。
アリーとブブに確認してもらい、驚いていた。これは素晴らしいです、とアリーは喜んでいる。車椅子も小型になったので、ベッドの間でくるりと回ることができる。隣には大型のトイレと車椅子用の風呂もあった。キッチンはベッドの奥に空間を拡張した部分がある。ただ、トイレと風呂は増築されてあった。少し大きくなった部屋は、外から見ても少し大きい。これなら裏側に工房を作ってもいいかもしれない。どうやら、大きめの部屋があればいいらしい。棚などは木箱でも何でもいいと聞いた。机は持ってきたから大丈夫だというので、トイレと小さなキッチンを置くことにした。
今夜、発動しておこうと考えて、部屋の裏側に少し距離をおいて同じ大きさの一部屋に決めた。
入り口や窓などには鍵を付ける。入り口は日本にいたときのような鍵がいい。必要な物で足りないものがあれば、お願いします。
(創成魔法)
おお、ちゃんと発動したみたいだ。これで明日の朝、確認するとしよう。
その旨をアリーに伝えて寝室に迎えば、セバスがベッドにシートを掛けてくれていた。すぐにブブが手伝いを始めたので、任せておくことにした。
じゃ、俺は風呂に入って休むと伝えて屋敷に入った。そうでないと、ニジがかわいそうだ。そろそろ午後9時になるからな。
遅くまですみません、と言うアリーに手を振って自室に戻り、風呂に入ってニジと一緒に泳いだ。ニジにどうだったかと聞けば、楽しかったらしい。ブルーとも具合がいいらしい。魔道具の中からでも問題なく攻撃ができると、楽しそうに笑った。そうかそうかと頭を撫でてやる。俺も明日はクロノスと一緒に二つ目のSランクに入るからと言っておいた。頑張ってね、と激励してもらい、頑張るからともう一度温まってゆっくり眠った。
早朝、ラスとロイがキッチンにいた。俺たちが食事していると、アリーが起きてきた。
「おはおうございます」
「おはよう。どうだった、寝心地は」
「はい、とても良かったです。ぐっすり眠ることができました。ありがたいです。何も恐れることなく眠れるなんて、幸せです」
それほど、いろいろと緊張していたんだな。
そうこうしていると、セバスがそれぞれの部屋を回って、皆を起こしている。とりあえず、腹一杯朝食を食った俺は、アリーの仕事場を見に行くことにした。入り口を入れば、マットが敷かれている。どうやらここで車椅子のタイヤの汚れを落とすらしい。中は、板張りの床がきれいに敷かれている。壁には棚の一つもないが、どこに何があればいいかを今日、考えてもらおうか。戻って作ってもいいからな。テーブルなどはロイもいるし、セバスとブブで移動もできるだろう。うん、それでいいな。
クロノスも食事が終わったらしいので、デザートの果物を美味しく食べて出発することにした。
ニジが「きをつけてね」と送り出してくれる。セバス、ラス、ロイ、アリー、ブブ、そしてバウとリカ、ハク、フィーリアに送られて出かけることにした。
「お前たちも気をつけてな。何かあればすぐに連絡しろよ。行ってくるから」
皆の笑顔を見て、手を振りながら空間をダンジョン内の階段に開いた。
しっかりと入り口を閉めてクロノスと一緒に階段を下りた。
次は七階層だけど、何がでるかなぁと覗いてみた。うん? 何もいないぞ。どういうことだろう。少し向こうに、でっかい草むら? というか森かな。
「タケル、ここはラフレシアがたくさんいる。そこまま進むのは無理だ。取り込まれれば溶けるだけだ。ここは空から行く方がいい。そして焼き尽くす。我の背に乗るのだ、タケル」
「え? いいのか?」
「その方が早いからな」
わかった、と小型のドラゴンになったクロノスの背に乗った。すかさず、ググンと大きくなったクロノスは、俺を乗せて空に上がった。かなりの高さのある空を進むんだが、森がざわついてるのがわかる。
ある程度まで進んだら、クロノスがブレスを吐き始める。おお、すごいな、これは。直接近づきたくないぞ。溶ける、絶対に……
あっという間に半分以上森がなくなった。残りもあっという間に消し炭になっちゃったんだ。恐ろしい話だ。階段を見つけていたので、その前にゆっくり下りてゆくクロノスは周りを確認して静かに降り立った。
その間にドロップ品も回収出来ているので、人型のクロノスと階段を下りる。「七階層でSランクか」と聞こえて、そうなんだよな、まだ七階層なんだ。
そんな風にSランクが多い階層をクロノスと俺でやっつけてゆく。
ここは何階層まであるんだろう。ちょっと探索してみるかな。
ええと、ここが十一階層だから……残りは二階層だけか? ここって、若いのかな。
クロノスに聞けば、おそらく誰も魔物を狩らないので、進まないんだろうと言う。そういうものか? と問えば「そういうものだ」と教えてくれた。
これなら残り二階層だから頑張るかな、と二人で笑い階段を下りた。
十階層からは既にボス部屋はなく、全ての魔物がボスクラスの魔物が出てくる。今後、このまま階層が増えたら、恐ろしいダンジョンになりそうだ。
さて、ここは何がいるのか……おお? これってオオカミかな。
「ワルプルギスだな。Sランク魔物だ。同族に狩られて生き残った奴だろうから、おそらく強いぞ。地上で戦うとかなり難しいだろう。空から倒すか」
「わかった、じゃあ、そうする。普通の攻撃で大丈夫かな」
「弾丸でいいだろう。なんでもいい、氷でもいいぞ」
「そうだな、そうするか。少し大きめの弾丸にするよ。クロノスは?」
「そうだな、俺も弾丸にするか。飛翔で飛べばいいだろう」
じゃあ、やろうかと二人で空に上がる。
そこからは狙撃祭りだ!
二人で倒していくんだが、あまり数はいないみたいだ。それぞれの個体が強いからだろう。ひときわ体のデカい個体がいるんだが、これはおそらくボスクラスだろう。当然、ミサイルサイズをお見舞いした。
振り向けば、クロノスが最後の一頭を打ち倒していた。
瞬間でドロップ品はストレージに入ったので、次に行こうか。
二人で階段を下りてゆく。
ここは何だろう、と周りを見て探索すると、Sランク魔物の冥狼王アヌビスと子分のようにたくさんいたのは獄狼ガルムだ。
じゃあ、行こうかとクロノスと空に上がる。当然、空から弾丸攻撃だ。ただ、冥狼王アヌビスだけは一筋縄ではいかなかった。最後に二人で集中攻撃をお見舞いして、なんとか倒した。
「やっと終わったね」
「ああ、これ以上深くなったらどうなるか。考えるだけで恐ろしいことだな。今日で終わるなら心配はない」
そうだな、と二人で奥に向かった。迷宮核を回収して数歩下がって祭壇を破壊することにした。
(祭壇破壊魔法)
バラバラと祭壇が崩れ始めたので、クロノスと転移陣に乗った。
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【あとがき】
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