ごっこ遊びにて
年下の少女に狂わされる!ファム・ファタール百合
年下の少女に狂わされるお姉さんたち。
ファム・ファタールの少女達に狂わされ心乱される女性達の短編集
芝生の揺れる音が耳に心地いい。
昔は、ここでよくエカチェリーナとごっこ遊びをしていた。おもちゃティーカップにおもちゃのポットで注いで。お茶会ごっこなどをよくしたものだ。
「おねえさま、好きな人っているの?」
エカチェリーナは突然真面目な顔になって言った。
私は「好き…?私はエカチェリーナが好きよ」と返した。今思えば中途半端な返事だった。
あの頃の私は恋愛感情を知らなかったのだ。エカチェリーナは既に知っていたのだろう。昔からませた所のある子だった。
エカチェリーナは顔を輝かして、くすくす笑っていた。そして少しだけ悲しい顔になって、絵本を閉じた。
「おねえさま、私、王子様なんていらないの」と言う。
エカチェリーナなら素敵なお姫様になるだろうなとぼんやり思った。同時に、胸がちくりといたかったのは、もう既に彼女が好きだったのかもしれない。
「おねえさま、わたし、おねえさまが好き」
そう言って初めて触れあった唇は、レモンの味ではなかった。
もっと神秘的で、甘くて、胸が熱かった。
「内緒にしてね」と悪戯っぽく笑うエカチェリーナ。
私は固まってしまって、ゆっくりとした思考で、すごく幸せだった。
整えたての芝生の青い香りが風になる。エカチェリーナが「お姉様~」と向こう側で手を振っている。「今行く」と煙草を火消しにねじ入れた。
芝生が歩く度にさくさくと鳴る。ふわふわしたワンピースに日傘を差したエカチェリーナはモネの日傘をさす女のように美しい。その腰を抱いてつむじにキスを落とす。
「まあ、お姉様!キスをするならちゃんとしてくださいな」
と文句を言うわがままな可愛い恋人。屈んでお望み通り唇にキスをすれば、嬉しそうに手を握ってくる。
エカチェリーナは昔を覚えているだろうか。あの日から私はお前の虜なのに。然り気無い仕草でエカチェリーナの唇を指でなぞる。柔らかくて艶やかな唇。
これが私ものということが嬉しくて、もう一度キスをした。
「お姉様、外だけどよくて?」
「見せつけてやれ」
エカチェリーナとのキスは魔法だ、私を熱くさせる。幸せがどうしても満ち溢れて口から出てきそうだ。なんの女神の気まぐれかは知らないがエカチェリーナが私を好いてくれていることが、この上なく嬉しくて、この時間が堪らなく大切に思えた。




