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人類の罪  作者:
止まっていた時間
18/89

油そば大盛りで!

……今、なんて言った??

柊木さんの話に、思わず耳を疑う。

衝撃が強過ぎたのか、その後の柊木さんの話が耳に入ってこない。


「黒い兄ちゃんは、これどう思う?」


柊木さんが縛に問いかける。

縛はしばらく考え込んでから、


「簡単に見つかったら、14年も探してないですよ。」


とだけ言った。


柊木さんは、縛に何か言いたい事でもあるのか、じっと見つめる。


……変な空気が流れる。


誰もが次の言葉を探していると、店の電話が鳴った。

柊木さんが立ち上がり、電話の方へ向かう。


結愛ちゃんは何か思う事でもあったのか、じっと考え込んでいる。


縛は、もう用は済んだと言わんばかりに荷物を片付けていた。


「結愛、お母さんから『まだ帰って来ないの?』って電話が来てたぞ。早く帰ってやれよー」


そう言われた結愛ちゃんは静かに頷き、時計を見る。


今の時刻は22時。


「もう遅いから、お父さん車で送って!」


そう言った結愛ちゃんは荷物を持って立ち上がる。


つられて、俺と縛も立ち上がった。


「じゃ、兄ちゃん達。今日はこれで解散だ。何かあればいつでも来いよ。」


店の前で解散すると、空を見上げる。


雲に月が隠れていた。


少しだけ雲の隙間から漏れ出す光に、思わずため息が出る。


---------------------------------------------------------------------


車に乗ってから、ずっと無言なお父さん。


どうしたんだろう。そう思って見ていると、お父さんは重たい口を開いた。


「……結愛は……自分を産んだお父さんとお母さんを知りたいか?」


車のハンドルを握りながら、お父さんは肩を震わせていた。


「全然。私はお父さんとお母さん、二人がいるから。」


そう言った私の言葉に、お父さんは安心したように少し笑った。


その表情を確認した私は顔を上げる。


もうすぐ家に着く。


明るい光が漏れる家の前。


お母さんが、こっちに手を振りながら笑顔で立っていた。


その光景に、私もお父さんも思わず笑顔になった。


---------------------------------------------------------------------


「なぁ、縛。ご飯、ラーメンでいい?」


そう聞く俺に、縛は少し悩む。


「僕、ちょっと調べたい事があるので、ご飯は一人で食べてください。ではっ。」


そう言って、縛は夜の街へ消えた。


……なんだ、あいつ。ラーメンが嫌だったのか?

まぁ、ラーメンは譲れないから一人で食べてもいいけど……


久しぶりに一人ご飯だぁ!


何食べよう〜。


「味噌ラーメンもいいけど、油そばも食べたいなぁ〜」


一人で悩んでいると、いい匂いが漂ってきた。


グゥー。お腹が鳴る。


顔を上げると、すぐそこには油そばのお店があった。


よしっ、油そばにしよ。


店に入って食券を買い、店員さんに渡す。


久しぶりの油そばだから大盛りにした♪


「お待たせしましたー!」


机に油そばが置かれる。

……大盛り?

ん……?

こ、これは大盛りを超えてるんじゃ……


でも、頼んだからには最後まで完食するのが礼儀!!


「いただきますー!」


気合いを入れて最初の一口を食べる。


油が体に染みる〜〜。


美味しい〜♪


なんとか全部完食すると、重たいお腹を抱えて帰宅する。


あぁーくるしっ。


ソファーに寝転がると、iPhoneを取り出して動画を見る。


ふぁー。


今日、色々あったなぁ……

動画を見ているうちに、思わずウトウトする。

ちょっとだけ寝よう。そう思って、iPhoneを机に置いた。


-----------------------------------------------------------------------


ピッ……ピッ……ピッ……。


規則正しく鳴る機械音だけが、静かな病室に響いていた。


息を吸う。


ただ、それだけの事がこんなにも苦しいなんて知らなかった。


胸が潰されるように痛い。


喉の奥から助けを求めようとしても、漏れるのは掠れた空気だけ。


――誰か。

――まみ……ハク……


そう叫んだはずだった。


でも、声は出なかった。


指一本動かせない。


目の前にいる人に手を伸ばすことすらできない。


ここにいる。


まだ、ここにいるのに。


どうして誰にも届かない。


視界が少しずつぼやけていく。


……嫌だ。


まだ……


生きている。


俺はまだ、生きている。


まだやりたい事がある。


伝えたい事がある。


なのに――


誰にも気付かれないまま。


消えていくなんて……


そんなの、許さない。


-----------------------------------------------------------------------


「――っ!!」


勢いよく身体を起こした。


ハァ……ハァ……


荒い呼吸だけが部屋に響く。


胸元を掴む。


……痛くない。


指も動く。


声も出る。


「…………夢?」


そう呟いた自分の声に、少しだけ安心する。


でも、不思議だった。


夢の内容はほとんど覚えていない。


ただ――


苦しかった。


怖かった。


そして……

どうしようもないくらい、悔しかった。


「……なんで、俺……」


自分の頬に触れる。

そこには、いつ流れたのか分からない涙が残っていた。


「大丈夫ですか?」


パッと顔を上げると、縛がこっちを見ていた。

手にはブランケットを持っている。


「だ、大丈夫!ちょっと夢見てただけ。」


「体震えてるけど……大丈夫ならいいですけど。ソファーで寝てるから悪夢見るんじゃないですか?」


そう言って、縛は俺の腰に手を回して抱き上げる。


「うぉ!?大丈夫だって。歩けるよ。マジ下ろして。」


「そうですか?お風呂入れたので、そのまま入ってくださいね。」


下ろされた俺は「はぁーい」と返事をしながら、自分の服を用意する。


お風呂場に向かう俺の体は――


もう震えていなかった

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