油そば大盛りで!
……今、なんて言った??
柊木さんの話に、思わず耳を疑う。
衝撃が強過ぎたのか、その後の柊木さんの話が耳に入ってこない。
「黒い兄ちゃんは、これどう思う?」
柊木さんが縛に問いかける。
縛はしばらく考え込んでから、
「簡単に見つかったら、14年も探してないですよ。」
とだけ言った。
柊木さんは、縛に何か言いたい事でもあるのか、じっと見つめる。
……変な空気が流れる。
誰もが次の言葉を探していると、店の電話が鳴った。
柊木さんが立ち上がり、電話の方へ向かう。
結愛ちゃんは何か思う事でもあったのか、じっと考え込んでいる。
縛は、もう用は済んだと言わんばかりに荷物を片付けていた。
「結愛、お母さんから『まだ帰って来ないの?』って電話が来てたぞ。早く帰ってやれよー」
そう言われた結愛ちゃんは静かに頷き、時計を見る。
今の時刻は22時。
「もう遅いから、お父さん車で送って!」
そう言った結愛ちゃんは荷物を持って立ち上がる。
つられて、俺と縛も立ち上がった。
「じゃ、兄ちゃん達。今日はこれで解散だ。何かあればいつでも来いよ。」
店の前で解散すると、空を見上げる。
雲に月が隠れていた。
少しだけ雲の隙間から漏れ出す光に、思わずため息が出る。
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車に乗ってから、ずっと無言なお父さん。
どうしたんだろう。そう思って見ていると、お父さんは重たい口を開いた。
「……結愛は……自分を産んだお父さんとお母さんを知りたいか?」
車のハンドルを握りながら、お父さんは肩を震わせていた。
「全然。私はお父さんとお母さん、二人がいるから。」
そう言った私の言葉に、お父さんは安心したように少し笑った。
その表情を確認した私は顔を上げる。
もうすぐ家に着く。
明るい光が漏れる家の前。
お母さんが、こっちに手を振りながら笑顔で立っていた。
その光景に、私もお父さんも思わず笑顔になった。
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「なぁ、縛。ご飯、ラーメンでいい?」
そう聞く俺に、縛は少し悩む。
「僕、ちょっと調べたい事があるので、ご飯は一人で食べてください。ではっ。」
そう言って、縛は夜の街へ消えた。
……なんだ、あいつ。ラーメンが嫌だったのか?
まぁ、ラーメンは譲れないから一人で食べてもいいけど……
久しぶりに一人ご飯だぁ!
何食べよう〜。
「味噌ラーメンもいいけど、油そばも食べたいなぁ〜」
一人で悩んでいると、いい匂いが漂ってきた。
グゥー。お腹が鳴る。
顔を上げると、すぐそこには油そばのお店があった。
よしっ、油そばにしよ。
店に入って食券を買い、店員さんに渡す。
久しぶりの油そばだから大盛りにした♪
「お待たせしましたー!」
机に油そばが置かれる。
……大盛り?
ん……?
こ、これは大盛りを超えてるんじゃ……
でも、頼んだからには最後まで完食するのが礼儀!!
「いただきますー!」
気合いを入れて最初の一口を食べる。
油が体に染みる〜〜。
美味しい〜♪
なんとか全部完食すると、重たいお腹を抱えて帰宅する。
あぁーくるしっ。
ソファーに寝転がると、iPhoneを取り出して動画を見る。
ふぁー。
今日、色々あったなぁ……
動画を見ているうちに、思わずウトウトする。
ちょっとだけ寝よう。そう思って、iPhoneを机に置いた。
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ピッ……ピッ……ピッ……。
規則正しく鳴る機械音だけが、静かな病室に響いていた。
息を吸う。
ただ、それだけの事がこんなにも苦しいなんて知らなかった。
胸が潰されるように痛い。
喉の奥から助けを求めようとしても、漏れるのは掠れた空気だけ。
――誰か。
――まみ……ハク……
そう叫んだはずだった。
でも、声は出なかった。
指一本動かせない。
目の前にいる人に手を伸ばすことすらできない。
ここにいる。
まだ、ここにいるのに。
どうして誰にも届かない。
視界が少しずつぼやけていく。
……嫌だ。
まだ……
生きている。
俺はまだ、生きている。
まだやりたい事がある。
伝えたい事がある。
なのに――
誰にも気付かれないまま。
消えていくなんて……
そんなの、許さない。
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「――っ!!」
勢いよく身体を起こした。
ハァ……ハァ……
荒い呼吸だけが部屋に響く。
胸元を掴む。
……痛くない。
指も動く。
声も出る。
「…………夢?」
そう呟いた自分の声に、少しだけ安心する。
でも、不思議だった。
夢の内容はほとんど覚えていない。
ただ――
苦しかった。
怖かった。
そして……
どうしようもないくらい、悔しかった。
「……なんで、俺……」
自分の頬に触れる。
そこには、いつ流れたのか分からない涙が残っていた。
「大丈夫ですか?」
パッと顔を上げると、縛がこっちを見ていた。
手にはブランケットを持っている。
「だ、大丈夫!ちょっと夢見てただけ。」
「体震えてるけど……大丈夫ならいいですけど。ソファーで寝てるから悪夢見るんじゃないですか?」
そう言って、縛は俺の腰に手を回して抱き上げる。
「うぉ!?大丈夫だって。歩けるよ。マジ下ろして。」
「そうですか?お風呂入れたので、そのまま入ってくださいね。」
下ろされた俺は「はぁーい」と返事をしながら、自分の服を用意する。
お風呂場に向かう俺の体は――
もう震えていなかった




