カオス
きっと14年前のあの日に、私とお父さんは出会った。
でも、私はその日のことを何も覚えていないし、知らない。
物心ついた頃から、私の隣にはいつもお父さんとお母さんがいた。
厳しいけど、少し心配性なお父さん。
優しくて、さっぱりしたお母さん。
「結愛、危ないぞ」
「結愛、大丈夫か?」
普通ならそんなお父さんを鬱陶しいと思うくらい。
でも私は知っている。
お父さんが時々、私を見て泣きそうな顔をすることも、書斎に隠されている記事の事も、自分が本当の子どもじゃない事も……
でも、私は2人がくれた温もりも知っている。
あれは、まだ小学2年生だった時。
友達からの何気ない一言だった。
「結愛って、お父さんやお母さんに似てないよね〜」
その一言が、まだ幼い自分に深く刺さった。
「そ、そうかな。お父さんとは結構似てると言われるけどなぁ……。」
表面では、何事もないかのように笑って話しているけど、内心では恐れていた。
「えー、だって……」
という友達の話は、もう私の耳には入らなかった。
心にあったのは、今まで感じていた違和感。
そして、その違和感がある場所を私は知っている。
お父さんから、絶対触ってはダメだよと言われている引き出しがある。あそこにきっと何かがある。
そう思って、帰りの会の後すぐ帰ると、お父さんが鍵を隠している場所から、鍵を取り出し引き出しを開いた。
そこには、一冊のアルバムがあった。
難しい漢字ばかりの新聞、えっと…この漢字は……と子ども携帯で調べる。
そして分かったのは、私の知らない大きな事件。その事件が書かれていた新聞の後には、2枚の写真。
一枚は、ボロボロの服を着ていた私。
その裏には、お父さんの字で『はじめまして』と書いてある。
そしてもう一枚は、家族アルバムでも見た事ある。
お父さんやお母さんに抱っこされながら笑う私。
裏には、日付と『今日から俺たちの娘』柊木 結愛
ずっと疑問に思ってた。小学校の授業で名前の由来と赤ちゃんの時の写真を持って行く時、なんで自分には1歳より前の写真がないのか。
子どもながら、ふと納得した。棚に鍵を掛けて、部屋から出ると、お菓子を用意していたお母さんが待ってた。
「結愛おかえり〜今日大好きなたい焼きにしたけど、あんことカスタードどっちにする?」
いつも通り笑うお母さんに、私はぎゅっと抱き付いた。お母さんはなに?と笑いながらも、私の事もぎゅっと抱き締めて、嬉しそうに笑うその姿に、私はもう、これ以上探す事をやめた。
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「知っていたのかぁ?」
震える声で話す柊木に、その娘の結愛は静かに頷く。
あー、これでもう一つあの人に近付いた。
あと、少し……
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……驚いた。まさか柊木さんの娘も被害者だったのか…… でも、高校生になりたてのように見える…… 当時、一番小さい子は3歳だったんじゃなかったのかぁ?そう思って、14年間も事件を追っていた縛を見る。
………?どうした?感動で胸が痛いのか?胸元押さえてるけど??
俺の視線に気付いたのか、縛はこっちを見る。
「正樹さん、話を柊木から聞くんじゃないのですか?」
最近タメ語だったり、敬語だったりと不思議なやつだぁ。どう見ても今は聞けないだろ。と縛の背中を突っつく。
「なんですか?」
不思議そうな表情をする縛に俺は諦めた。そうだった。こいつ常識なかったわぁ……思い浮かべるのは、数々の失態……そもそも、そういう奴だったわぁ。
諦める俺に、縛は不満そうにする。そんな縛に、俺はやれやれと肩をすくめる。
「2人共待たせて悪かったなぁ。丁度今日兄ちゃん達以外に客はいなかったから、店閉めて来るわぁ。」
柊木さん達はある程度話し終えたのか、そう俺らに話掛けてくれた。
「あっ、閉める手伝いますよ。」
そう話す俺に、柊木さんはありがとうと言った。
「看板を裏返すだけだから…………」そう言って、店の外に出た。
「こういう時ほど、お客さんがいない事を嬉しいと思ったことないですよ。あっ、先に入ります?飲み物も食べ物も食べ放題でいっぱい残ってるので、パーティールームでお父さん待ってましょ。」
「お父さんー!先に1号室に行くからねぇ〜」
そう結愛ちゃんが大声で言うと、こっちこっちと道を案内する。
パーティールームに着くと、座ってと促される。その後パタパタと扉を出て行く。入れ替わりに入って来た柊木さんは、少し目元が赤い。
「娘さん可愛いですね。」
俺が声を掛けると、柊木さんは照れ笑いをする。
「……自慢の娘ですよ、よくここまで大きくなったと日々神様に感謝です。」
そう話す柊木さんに感動していると、隣りの非常識な男は、またもやポケットから検査キットを出そうとする。とりあえず、ポケットから出る手を押さえ付けておいた。
当の本人は不満そうである。俺が一番不満だわぁ!と内心で悪態を吐くが、柊木さんには悟られないようにする。
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目の前の兄ちゃん達が急に手を繋ぎ始めた。や、やっぱりそういう関係なのかぁ!?と背中から冷や汗が……最近は恋愛も自由だし、なんだっけ?個性?と言うんだっけ?と1人で考えていると
「ちょっとお父さん手伝って!」
扉の外でトレイを持った結愛が、扉を開かずに待っていた。どうやら、両手が塞がっているようだぁ。
「あ、あー。」
そう言って扉を開けると、文句を言いながら入って来た。
「はい、とりあえずお茶とお菓子いっぱい持って来た!お父さんはお弁当も温めたから食べてね。」
机にコップやらお菓子やらたくさん置いて行く結愛に、思わずよく持てたな〜と感心する。
「ありがとう。」と爽やかボーイが話すと、隣りでは黒い兄ちゃんが頷く。
全員座ったのを見て、結愛が話出す。
「全員座った事だし、自己紹介しましょ!」
と提案する。思わず、自分の娘のコミュ力?に感心する。
「あっ、じゃ俺からで!俺佐伯 正樹です。正しいに樹木の樹と書きます。」
「正樹さんの漢字に、正しいが入っているのですか?
私のお父さんも柊木 正志といって、同じ漢字が入ってますよー。一緒ですね〜」
と結愛が代わりに自己紹介してくれた。
爽やかボーイは佐伯というのか、その佐伯が黒い兄ちゃんを肘で突っつくと、黒い兄ちゃんも話す。
「東雲 縛。」
………それだけか?と思っていたら、佐伯に何か文句を言われてる。
そんな姿を見た結愛が、佐伯に話しかける。
佐伯は結愛と話しながら、東雲の手を押さえている。
結愛は机の菓子を佐伯に勧める。
東雲は検査キットを出す。
佐伯は菓子を食べながら、東雲の検査キットをしまう。
東雲まだ検査キットを出す。
結愛が俺に弁当を勧めてから、東雲に菓子を勧める。
………カオスだぁ。




