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超絶イカれ強欲魔人の勘は外れない?~美女に喰われるまで、終われまテン  作者: T.T


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第1話

 ザガンの”勘”は、一度も外れたことがない。


 雲一つない晴れの日でも、雨と感じれば雨が降ったり。

 女にビンタされると感じれば、体が吹き飛ぶほどの強烈なビンタが。

 パンツが見えると感じれば、パンツが見えたり(男のパンツ)。

 あいつ、今日死にそう~と感じれば、日が暮れる前に死んでいた。

 

 初めのうちは偶然だと思っていた。

 だが、月に一度、多ければ三度以上の頻度で”勘”が囁き、そのことごとくが現実になる。

 十年も続けば、信用する以外になかった。

 幸い、ビンタなどで怪我や骨折はあれど、死に直結することはなかった。

 今朝までは……。


 ―これから、”人生最悪の展開”が待っている。



「俺、今日死ぬんか?」


 戦場のど真ん中で、ザガンはぽつりと呟いた。

 霧の向こうでは剣のぶつかる音と騎士たちの怒号が交錯し、奴隷たちが魔族相手に命を削って戦っている。

 そのすぐ脇で、ザガンは死体の山に腰を下ろし、ゴブリンの腕にかぶりついていた。

 ゴブリンの肉は相変わらず不味い。

 生臭く、泥臭く、噛むほどに口の中が苦くなる。それでも空腹には敵わなかった。顔をしかめながら何度か噛み砕き、無理やり喉へ流し込む。

 ザガンは死体の山に背を預け、赤ん坊のように両手両足をバタバタと振り回す。


「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁー!」


 崩れた死体の山から、骨と肉片が周囲に転がり出た。

 白い骨が一本、コロコロとザガンの足元へ滑り落ちてくる。


「死にたくねぇー!ビンタの方がマシだぁー!」


 人生最悪の展開……考えられるとすれば、自分が死ぬことだろうと、ザガンは思う。

 魔族に喰われるか、味方の流れ矢に当たるか、はたまた事故か。

 戦場にいる限り、死因など地面の石ころほどに転がっている。

 かと言って、この場から逃げ出すこともできない。

 現在参加している遠征軍の目的は、魔王城周辺の下見と、魔族の動向を王都へ持ち帰ること。

 いずれ控える魔王討伐戦……その下準備というやつだ。

 

「もうすぐ帰れるってのによぉ~」


 道々に湧いて出る魔族どもを斬り伏せながらの遠征は、もう何週間も続いていた。

 その間、奴隷に与えられる飯は乾いたパンの切れ端、干し肉と、底の見える水筒一つ。

 この地獄も今日をもって終わるはずだった。帰ったら、脂の滴る豚の肩肉に雑に塩を振って食べ、薄いエールで流し込む。

 それだけが、ささやかな望みだったのだ。

 今朝のたった一筋の勘で粉々になってしまったわけだが……。

 ザガンは頭をブルブルと振り、両手で頬をパチンと張る。乾いた音が霧の中で妙によく響いた。


「クソッ!こうなったら、死ぬ前に絶対にやりたいことを整理するぜ。俺あったまいィー」


 死を受け入れたわけではない。これは保険だ。

 そう自分に言い聞かせ、ザガンは死体の山の上で胡座をかき直す。

 脳内をフル回転させた。


「まずは、おっぱいを揉みしだく!」


 その為には女だ!と言わんばかりに前方を見渡す。 

 しかし、目に入るのは男、魔族オス、男、魔族オス……。

 

「まっ、まぁ……いい。次だ」


 舌打ち一つで切り替える。


「次は――童貞を、卒業する!」


 念じながら、目を皿にして後方を見渡し、懲りずに女を探す……。

 男、魔族オス、男、魔族オス

 その奥にも、男、男、男。

 オスオスオスオスオス。

 ダンッ。

 ザガンの拳が、足元の死体の腹に叩き込まれる。

 腐りかけた肉が湿った音を立てて沈み、青黒い体液が裂け目から滲み出た。


「女がいねぇーーー!!」


 絶叫が戦場に響き渡るが誰一人、振り返りはしない。


「何だこの戦場、男湯ならぬ男場か!?マジで女が、一人もいねぇ!」


 他には、そうだな~そうだな~と頭を捻ってみても、やりたいこと全てに、女が絡んでいる。


「次は……」

「ザ……ガン」


 掠れた声が、すぐ近くで聞こえた。

 振り返った先には、半分になった男が転がっている。

 腰から下が、ない。

 引き千切られたような断面から折れた肋骨が白く突き出し、潰れた臓物が泥と血を撒き散らしながら零れ落ち、地面にじわりと湯気を立てていた。

 ザガンの、パートナーだ。

 名前は覚えていない。たかだか半月ほど組まされていただけの男で、互いに身の上話をするほど親しくもなかった。

 口の端から、軽口の気配がすっと引く。

 それでも、いつもの調子で頬を緩めてみせた。


「人が大事なことを一生懸命考えている時によぉ~。調子狂うぜ」

「……ゴッヂに来い」

 

 彼はザガンの話に聞く耳を持たず、荒い息吐きながら手招く。

 頭を掻き「仕方ねぇな」と言いながら近くへと飛び降りた。


「襲ってくる魔族は俺が殺す、もう少し耐えてろ。医療班が近くに……」

「ザガン……はや、く喰らってくれ!」

「……いいのか? まだ核は無事だぜ?」


 勿体なさそうに、ザガンが言う。

 胸の奥に宿る、宝石じみた核――

 魂核ソウルコア


 これを砕かれない限り、

 【 この世界の生物は”死ねない” 】


 彼のように下半身がぐちゃぐちゃになろうと、首を斬られようと、肉体が灰と化そうと、魂核さえ無傷であれば、意識は闇の中で灯り続ける。

 痛みも、恐怖も、永遠に。


「イダイイダイイダイ! だのむがらばやくじでぐれ!」

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