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ゼロにして無限  作者: 月読
エピローグ
4/5

ゼロにして無限 VOL.4

地球VS.異星文明、地球初の異星間戦争勃発!

零式艦上戦闘機に関する調査レポートⅪ


『アンフィニMARKII』搭載マイクロ・ブラックホール・エンジン暴走事故概要

発生日時:2052年10月(推定)

場所:太陽系外縁、恒星間空間

機体:G.A.I.A. 零式艦上戦闘機『アンフィニMARK II』(統合開発コード:カミカゼ)

パイロット:コウ・ヤマト(コードネーム:ジパング)


1. 『概念駆動制御システム』及び『量子慣性制御システム』下における特攻時の状況


 コウ・ヤマトは、先の異星間大戦の最終局面において『アンフィニMARK II』を駆り、『星喰らい』の最大個体である母艦に単機で特攻を仕掛けた。

 機体は太陽光の影、敵母艦の構造体と最も近接する死角の位置に、敵艦隊の攻撃圏外から瞬時に移動したと思われる。

 これは、『概念駆動制御システム』及び『量子慣性制御システム』を統合した「ゼロにして無限」という設計思想を実現した究極の瞬間である。さらに、慣性の働く宇宙空間においては、加速よりも制動の方が遥かに難しいのだが、この点については、従来の量子慣性制御システムに加えて、『アンフィニMARK Ⅱ』より実装された、『反重力ブレーキシステム・ゼロストップ』の恩恵が大きい。


 実戦データに残されている記録を信じるなら、この戦闘時における『アンフィニMARK Ⅱ』の挙動は、あらゆる瞬間で人類の宇宙航空テクノロジー史における最高到達点に至っていたと、そう断定しても間違いないと思われる。

 敵の学習アルゴリズムは、人間の「生存本能」や戦闘時における「戦術的最適解」を前提としていたと思われる。

 ゆえに、この過剰とも思える、自己犠牲的、自己破壊的、そして物理的な活動限界を無視したかのような『アンフィニMARK Ⅱ』の挙動は、完全に予測不能な領域に置かれていたのではないかと推測される。


2. マイクロ・ブラックホール・エンジンの構造と機能


『アンフィニMARK II』に搭載されている複合推進システムの要は、小型化された「マイクロ・ブラックホール・エンジン」である。


・ 構造: 高密度な人工重力フィールドによって極微小のブラックホールを安定的に維持・格納する装置。

・ 機能: 周囲の物質(主に水素プラズマ)をホーキング放射によってエネルギーに変換し、量子慣性制御と組み合わせて、高効率・高出力の推進力を得る。通常は厳密な量子制御系によってブラックホールの質量・位置・周囲の重力フィールドが、ミリ秒単位で管理され、極めて高い安全性と効率が保たれていた。


3. 自滅の意思と制御系の解放


 コウ・ヤマトの脳内には、生還を絶対条件とする『プロジェクト・ゼロ』の運用思想とは完全に相反する「自己犠牲」の極致とも言える意思が存在していた。 

 不治の病という自己の終焉を受け入れていたヤマトの思考は、もはや敵のAIが学習した「現代人」の枠組みを、逸脱あるいは超越していたと思われる。

 ヤマトは概念駆動制御システムを介して、思考による以下の操作を同時に実行した。


・制御系回路のOFF : 「マイクロ・ブラックホール・エンジン」の量子制御系回路を、強制的に遮断。

・ 格納フィールドの全開放(暴走): ブラックホールを安定維持していた人工重力フィールドの制御リミッターを解除、エネルギー供給を停止。

 この操作は、システムの設計思想から見て「バグ」あるいは「実行不可能なコマンド」であり、通常のAI制御では絶対に起きない、人間の「決断(特攻精神)」によってのみ可能となるアクションであった。


4. 事象の地平面の拡大と『星喰らい』の消滅


 制御を失ったマイクロ・ブラックホールは、人工重力フィールドの崩壊によって、その場に「解放」された。


・ 質量拡大: 極めて高効率なエンジンであったため、暴走直前までブラックホール自体は極微小質量に保たれていた。解放直後は、近接する敵母艦に関連する大量の物質(機体ナノマシン、母艦内の大気、構造材、星喰らいの素粒子情報体等)を際限なく吸収し始めた。

・ 超高速成長: 敵母艦は質量が膨大であり、ブラックホールはフィードバック・ループの形でその質量を貪り食い、事象の地平面を指数関数的に拡大させた。

・重力崩壊: わずかコンマ数秒で、マイクロ・ブラックホールは敵艦隊全体を飲み込むに足る質量へと成長。敵母艦の局所空間の歪曲率は無限大に近づき、敵艦隊が停泊する全域が、その強大なる潮汐力によって素粒子レベルにまで引き裂かれ、事象の地平面の内部へと押し込められた。

 ヤマトの機体『アンフィニMARK II』(及びヤマト自身)は、当然ながら真っ先に吸収の対象となったと思われる。敵に「学習」する、或いは「解析」する、その一瞬の猶予すら与えずに、ブラックホールの質量の一部として、その役割を終えたと思われる。

 この局所的・人工的な「宇宙の終焉」は、敵艦隊の存在の痕跡(光、素粒子、情報等)すら残さず消し去り、G.A.I.A.のレーダー網から「全て」の反応を消失させた。

 以上、コウ・ヤマトの自己犠牲を伴う多大なる功績によって、『星喰らい』は全滅。『アンフィニ』シリーズの有用性(※)を十二分に立証できたものと考える。


※来年度予算案を別ファイルにて添付



 

        アンフィニ開発責任者

         如月研究所 研究所長 如月孝臣

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました!

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