皇配に相談! #02
「まだ難しいんだね。じゃあ、無理にしなくていい。……それより、夏祭りの話をしよう。
アドがこのことを知っているなら、無理に行こうとは言わないと思う。あれでいて優しい子だから」
「で、すが………約束をしたのです。去年、アドラオテル様と………私は、約束を守りたいです。アドラオテル様が私に気を使って行きたいところに行けないのは……嫌です………。
それにッ……私は………」
____アドラオテル様と、また花火がみたい。アドラオテル様の隣で、花火がみたい。
ああ、そうか。
私、アドラオテル様の約束に託けて____コルーンの夏祭りに、行きたいんだ。
すとん、とその答えに行き着いた私を見て、セオドア様は優しい笑顔で頷いた。
「…………うん。わかってくれたみたいだね。怖いかもしれない、苦手かもしれない。でも、自分の心を殺すのは………苦しいよ。
見つかるのが怖いなら変装すればいい。人混みが怖いなら人の少ない所に隠れればいい。
アドは__きっとそれでも、レイチェルちゃんと一緒ってだけで、喜ぶよ。
ほら、まだおはぎが残ってる。食べようか」
「………はい、はい!」
私はセオドア様に見守られながらおはぎを口にした。ほろほろと溶けていくあずきと、もちもちの餅米がとても美味しかった。
* * *
「はぁ~、今日も疲れたよ、レイチェル」
「…………お疲れ様です」
夜、夕食を食べ終わった俺達はいつものようにソファで寛いでいた。勿論、レイチェルに膝も借りている。いつも通り………のはずなのに、違和感。
レイチェルの顔がずっと赤いのだ。そんで、思い詰めたような顔をしている。聞いていいものかずっと悩んでいたけど、無理に聞きたくない。…………さて、どうしようか…………「あの」………?
不意に、レイチェルが口を開いた。何度か躊躇しながら、言葉を紡ぐ。
「………去年の夏祭りのこと、覚えてますか?」
「もちろん。忘れないよ。俺が着物を用意して、祭りに行って、レイチェルはりんご飴を買って、花火見て……帰りも話したろ、来年もコルーンで………あ」
そこまで話して、やめた。
コルーン___レイチェルを嫌う奴らが沢山居るところ。俺は大嫌いだ。レイチェルを泣かしたやつ全員。コルーンの夏祭りは気になるけど、レイチェルが傷つくなら行きたくない。今日も執務をやりながら思い出して諦めようとしてたことだ。
顔を顰めていると、レイチェルはぎゅ、と目を瞑って大きく息を吸った。そして。
「い、一緒にコルーンの夏祭りに行きませんか!」
「え、………」
俺は思わず起き上がる。だって、レイチェルはあんなところ行きたくないだろ?あんな酷いところに………。
そんな俺の思考を読んだかのようにレイチェルは目を瞑ったまま続ける。
「私、変装します!コルーンと言ってもポーダムという小さな島なので、人が沢山いても紛れることができます!
なので、私とその、で、デートをしてくださいっ!」
「____ッ」
レイチェルの言葉に、顔が熱くなる。
………初めて、レイチェルが俺をデートに誘った。いつも俺が引っ張らないと行かないレイチェルが、俺とデートしたいと言ったのだ。
…………これはやばい。無理。我慢できない。
「きゃっ………っむ」
俺はレイチェルを抱き寄せて、唇を重ねた。さっき食べたテリーヌの味がする。でも、そんなことよりもしたかったのだ。
「っは、アドラオテル様……?」
「___夏祭り、いつ?」
「え、ええっと、……四日後です。あ、でも執務があるなら……」
「行く。絶対行く。たくさん書類片付ける。
だから____一緒に行こう」
「…………!はいっ!」
レイチェルはぱあ、と花が咲くように笑った。嬉しそうな笑顔に、また我慢できなくなってもう一度キスをした。




