皇子は気合いをいれる
俺は、レイチェルちゃんの過去を知った。レイチェルちゃんがなんで異常なまでに人を怖がるのかわかった。人を傷つけられない優しい子だからこそ、近づいてはならないと自分で戒めていた。
でも、俺はそれを聞いて、違う、と思った。罪は消えない。過去は消えない。でも。
だから幸せになってはならないなんて、間違っている。アミィールも、殺戮を行っていた。落ち着いた今は、たまにその者たちの死を悼んで城に作った祈りの場で、祈りを捧げていることだってある。
最初の1歩を踏み出せば、あとはどうとでもできる。俺はそう思ったから、レイチェルちゃんの背中を押した。
後悔はしてない。後悔はしてないんだけど……………………。
「このとーーーーーーーーりっ!」
「………」
「………」
「…………」
ひまわり畑の白いテラス、アドラオテルは頭に大きなリボンをつけて、フリフリの服を着て俺とアルティア様、サシャ様に手を合わせておねがいのポーズをしてる。
理由?それは____………
「ばあちゃんはイケてる服を!父ちゃんはアクセサリーを!サシャはその他諸々を!俺に伝授してくれ!」
………こういうことである。
レイチェルちゃんは無事アドラオテルを夏祭りに誘うことが出来た。でも、それで浮かれぽんちになったアドラオテルは「絶対失敗したくないから!」と女装までして俺たちにお願いしているのだ。
アルティア様が大きく溜息をついた。
「あんたら親子は女装すればなんでもお願いごとを聞いてくれると思ってるの?」
「う"………」
「うわー、違和感ー、アドラオテルくんはもろ男だから違和感しかないー」
「そんなのどうでもいいんだッ!レイチェルの為なら裸にもなる!」
「待て待て待て待て待て!アド!脱ぐな!」
ビリィイ!とドレスを引き裂いて半裸になるアドラオテルを必死に止める。………本当に極端なんだよな………。
「私はいいわよ。暇だし。服くらい出してあげるわ。サシャ、セオくん、いいでしょ?」
「もちろんです」
「私もおっけー。ポーダムは私のホームだからチェルより知ってるわよ~。隠れスポット、とかね?」
「本当か!?絶対だぞ!あと3日しかないんだからな!」
「それでアルティア様に服を頼んだのか………確かに、3日で納得するものは作れないもんなぁ。アクセサリーはできるから安心して」
「服はどんなのがいいの?やっぱり浴衣?」
「ううん、浴衣じゃないのよ。残念ながら。シックなら浴衣なんだけどね~、ポーダムは洋服なのよ。
それより、隠れスポットに行くにはちょっと覚えなきゃいけない事があるからアドラオテルくん借りていい?」
「俺を貸す!煮るなり焼くなりしろっ!」
「待ちなさい!アド、執務があるだろう!?」
「ハッ!終わらせたに決まってんじゃん!10日分きっかりな!」
アドラオテルはそう言ってドヤ顔する。………いつも何もしたがらないのに、こういう時だけ力を発揮するの、本当に天才肌だよなあ…………。
そんなことを思う俺を放って、アドラオテルはサシャ様とその場から消えた。残された俺とアルティア様は話す。
「青春ね~」
「ですね」
「やっぱりああいう所、セオくんそっくりだよね」
「?アドはアミィに似たのです」
「無自覚って罪だわ~」
「???」
アルティア様は楽しそうに笑って、ワインを飲んだ。俺はやっぱりわからなくて首を傾げていた。




