天使の涙 #02
「…………うーん」
私はソファに座りながらクッションを抱き締めて横になっていた。考える時、これをすると落ち着くのだ。
セラフィール様は、しばらく泣いたあと笑っていたけれど、辛いよね。好きな人に顔を背けられたり、距離を取られたりしたら。
アドラオテル様が顔を逸らす時は照れてる時だけだ。それ以外は寧ろべったりくっつくし、私が目を逸らすと大きな両手で頬を固定される。
同じ人間がいるわけないから、違うのは当たり前だけど………それでも、不思議。同じ男の人なのに、好きの表現の仕方が違うのは、なんというか、………神秘的にも思えるのかもしれない。
なんて、偉そうなことを考えているけど私だって恋愛初心者どころかコミュニケーション初心者だし………ちゃんとアドバイス出来てたかな?出来てたらいいなぁ………もっとああいう時のために色々勉強しなきゃ。
アドラオテル様ももちろん大事だけど、サクリファイス大帝国の皇族全員が、私にとっては大事な人なんだから。
「…………よし!もっと修行しよう!」
「まだ修行するの?」
「ええ!皆様をお支えするために………って!アドラオテル様!?」
不意に声をかけられて飛び起きる。ワイシャツ姿のアドラオテル様が不思議そうな顔をして立っていた。……ご、ごろごろしているのを見られてしまってた………。
やらかした感で血の気が引いていく私を、アドラオテル様は抱き寄せた。
「レイチェル、何かあった?」
「なっ、なにもありません!異常なしです!」
「ははっ、護衛みたいな話し方するなよ」
アドラオテル様はそう言って眩しい笑顔を見せた。いつも凛々しくてかっこいいのに笑顔は子供っぽい。可愛い。
………そうだ、アドラオテル様は、私を嫌いになったらどんな態度を取るのだろう。後学のために知りたい。けど、聞くのはちょっとダメな気がする。それとなーーーーく、聞ける範囲で聞いてみよう。
「あ、あのアドラオテル様。もし、もしも私の事を嫌いになったらどうします?」
「は?そんなこと一生ないし。絶対ありえないし。寧ろレイチェルのことを嫌いだと言う奴を殺したい。……あ、レイチェルのことを嫌いになったら自害する」
「なっ、そんなのダメです!絶対ダメです!嫌いにならないでください!」
私が必死にそういうと、やっぱりアドラオテル様がわらった。
「本当にレイチェルは面白いな。最初から嫌いになることなんてないって言ってるだろ?」
「で、でも、………冗談でも、死ぬなんて……」
「………俺は、死なないよ。レイチェル遺して死ねるかよ」
「んっ」
アドラオテル様はそう言って私にキスをした。もうすっかり慣れた私は目を閉じてそれを受ける。でも、そのせいでアドラオテル様が悲しい顔をしていることを、私は知らなかった。
* * *
おまけ - レイチェル × セラフィール
「~♪」
セラフィール様は鼻歌を歌いながらスキップをして庭園をグルグルと回っている。奇行にも取れるそれは仕方ないのだ。
さっき聞いた話だけど、セラフィール様は私がアドバイスした通り、ちゃんとアダム様に何故避けるのか聞いたらしい。
で、そのアダム様は半ばキレ気味に『セラが美しすぎるから悪いんだ!心臓に良くない!だから少し距離を考えてくれ!』と言ったらしく。
……………アダム様は私の予想以上に気難しくて、予想以上にセラフィール様を愛していらっしゃるんだろうなぁ………。
そんなことを思いながら、未だにスキップを続けるセラフィール様を見ていた。




