周囲の気持ち #01
「_____はい、緊急会議を始めます」
サシャの言葉に、集められた会議参加者のアミィール、セオドア、クラウドが大きく頷いた。それを見て、サシャは大きく深呼吸をしてから、再び口を開いた。
「……………どうしようね?めっちゃ騒ぎになってるけど」
「………………」
セオドアはその言葉を聞いてはあ、とため息をついた。
……………アドラオテルとレイチェルちゃんの婚約はユートピア全土に広まった。幸か不幸かレイチェルちゃんはその日変装をしていたから「婚約者がいる」ということだけが広まったのだ。
皇族、王族からの婚約申し込みを尽く拒否してきたサクリファイス大帝国の皇子がとうとう婚約者を見つけた。
それは大事件で、祝福ばかりではなく、アイドルのようにアドラオテルを拝んでいた女子達はアドラオテルロスに陥り、血眼になって「誰がアドラオテルの婚約者だ」という犯人探し紛いなことが行われている。
それで、急遽この場を設けたのだけど…………。
そこまで考えたところでアミィールが口を開いた。
「………何故、レイチェル様の御両親はいらっしゃらないのですか?」
「あー、概ね、アルティアと同じ理由」
サシャ様は言いづらそうにそう言った。………今、アルティア様は必死にラフェエル様を説得している。この話を聞いたラフェエル様は激怒した。「身元もよくわからん娘に孫をやれるか!」と城に殴り込んだ程だ。今はアルティア様が必死に「アドラオテルが望んだんだ」ということをこんこんと言い聞かせているのだ。
「うちの男共ったら、"レイチェルを何処の馬の骨かもわからんやつにやれるか!"って騒ぎ立ててねえ~、挙句の果てには世界滅ぼすまで言っちゃってるからさぁ、私達が代理で我慢して」
「あの、……クラウド様は反対じゃないのですか?」
俺はつい、疑問を投げかけた。
クラウド様は以前婚約事件の時にものすごく反対をしていらっしゃった。けど、今は難しい顔はしているけど敵意は感じない。それが不思議だった。クラウド様はティーカップに口をつけながら言う。
「………チェルがアドラオテルを好きじゃなかったら反対をしていただろうな。
でも、チェルは確実にアドラオテルと一緒になってから顔が明るくなった。塞ぎ込んで一人ぼっちだったチェルの口からお前達の子供の話が出るようになった。
チェルを変えたのはアドラオテルだ。そして、お互いを想い合っているのなら反対する理由など俺にはない」
「そういうこと。私達はいい歳だし、基本放任主義だからチェルの結婚は大賛成!
アミィールちゃんはどうなの?」
サシャ様はそう言ってニコニコしながらアミィールに問うた。アミィールは一度俺を見てから、静かに口を開いた。
「………わたくしはあまりレイチェル様と関わっていないのですが、レイチェル様がとてもいい子なのは知っております。
アドがあそこまで心を動かすのは初めてで戸惑いはありますが、悪いことではないとわたくしは思っております。
つまり___わたくしに、異論はありませんわ。ねえ、セオ」
「ああ。………私はよくレイチェルちゃんと話すが、彼女はとても優しいし、真面目だ。アドラオテルは無鉄砲だから、レイチェルちゃんと一緒になって落ち着いて欲しい。
なので、私も賛成です」
「うんうん。そうでしょう?あの子は優しいのよ。ここにいる身内と、女性陣はこの結婚はいいものだと思っているわ。
でもねえ、………どうなの?世間体とかそういうの。私の世界には王様いないからよくわかんないのよね~身分とかしがらみとか」




