誕生日プレゼントは #03
誕生日、当日。
「______ん」
朝、目が覚めた。のそりと起き上がって、部屋の片隅を見る。ラッピングが全部剥がされた箱の山。それを見て「今日は誕生日だったか」と改めて認識する。
「ッあ~…………めんどくさ」
大きな伸びをしてからはあ、と脱力する。
春の月の18。この日は皇族一同が揃って神輿に担ぎ出され、一日中お祭りをする。そんなことしなくてもいい、そう思うけどこれもしきたりなのだ。
「ヨウちゃん、居る?」
「は、ここに。お誕生日おめでとうございます、アドラオテル様」
俺が声をかけると、ヨウちゃんが暗がりからそう言って跪く。朝一番に見る顔がこんな堅苦しい幼なじみなんて、味気ないなあ。
「おー。それより、今からレイチェルの部屋に行くから」
「は?何を言っておられるのですか。今日は朝から予定がびっしりです。それに、レイチェル様はまだ寝ていらっしゃるでしょう」
「レイチェルには朝一番に顔を見に行くって言ってある。10分くらい融通しろ」
「滅茶苦茶です、アドラオテル様。大体…………」
ヨウちゃんのお小言を聞き流しながら脱ぎ捨てていたガウンを着る。………誕生日くらい、好きなことさせろよ。
そう心の中で毒づいて、わざと明るい声で言った。
「じゃ、あとはよろしくー」
「あ、アドラオテル!」
俺は転移魔法を唱えた。
* * *
「よっ、と」
「アドラオテル様!」
転移すると、目の前にレイチェルが居た。顔を見ただけでほっ、とする。俺は口を開いた。
「おはよう、レイチェル」
「お、おはようございますアドラオテル様。
そ、それとっ…………」
「?」
レイチェルは顔を赤らめながら後ろに手を回してもじもじしている。よく分からないけど、何か言いたいことがあるようだ。しばらくそうしてから、涙目で俺を見て手を前に出して大声で言った。
「お、お誕生日おめでとうございましゅ!」
「…………え」
思わず、声を漏らしてしまう。
レイチェルに、誕生日は教えてなかった。祝って欲しかったけど、なにかしてくれなくても顔を見せてくれるだけでいいと思ったから。
でも、レイチェルの手には青い袋が2つ、掌に収まるくらい小さな袋が乗っている。レイチェルは声を震わせながら、言葉を紡いだ。
「おっ、恐れながら…………誕生日を、お祝いしたくて…………準備しました。あ!でも!受け取ってくださるだけで胸がいっぱいなんで………!」
「………」
カタカタと震えるレイチェルから、自然と袋を2つ受け取り、中を見る。
ひとつは、チョコブラウニー。父ちゃんやセラフィールが作ったのより不格好。そして、もうひとつの袋には___ハンカチ。紫の花がワンポイントで入ってる。
胸が、熱くなった。
だって………嬉しいから。目尻が熱くなる。けど、男としては泣きたくなくて、ぐ、と我慢して代わりの言葉を紡ぐ。
「____レイチェル、顔を上げて」
「っ、それは………」
「いいから」
「は____っん」
じれったくて、俺は片腕でプレゼントを抱きながらレイチェルの顎を持ち上げて、唇を重ねた。
レイチェルの大きな青い瞳が見開かれていく。頬が一気に赤くなる。
___目くらい、閉じてくれよ。
やっぱり、レイチェルは俺のものだ。
そう思いながら、俺はしばらくレイチェルと唇を交わしていた。




