誕生日プレゼントは #02
「じゃあ、ラッピングしようか。この中から好きなの選んでいいよ」
「…………」
そう言ってセオドア様はキッチンの引き出しを開けて見せた。中には沢山の種類の可愛いラッピング袋にリボンがびっしりと入っている。セラフィール様は驚くことなく中を物色してる。これが普通なのだ。
____普通…………とは?
「レイチェル様、どうなさいました?」
「い、いいえ!なんでもありません!」
そんなことを思っているとセラフィール様に声をかけられた。心配そうな顔に慌ててそう言ってから私もラッピングを見る。………どれにしようかな………ピンク、はなんとなく気恥かしいし………あ。
ふと、目に入った青色の涼やかなラッピング袋。可愛い。それに、青色はアドラオテル様の大好きな色。
私はそれを手に取った。
「これにします!………あ、でも、お金が……」
「ふふっ、レイチェルちゃんは気にしいだね。いいんだよ。お菓子作りに誘ったのは私とセラなのだから」
「…………ありがとう、ございます」
そう言って笑うセオドア様はやっぱり優しくて………思わず笑みが零れてしまう。私はそれを隠すようにセラフィール様の隣でラッピングをする。セラフィール様は可愛いピンク色の袋だ。ほんのり頬を赤らめているのを、セオドア様は見逃さなかった。
「セラ、顔が赤いぞ?どうした?それに、セラは誰にプレゼントをするんだ?」
「うぇっ、それは、えっと………」
セラフィール様はもごもごと言い淀む。………きっと、アダム様だ。セラフィール様の想い人。最近よくお茶会でお話を聞く。会ったことはないけど、いつもセラフィール様には助けて貰っている。今日は私がお返しする番だ。
「せ、セラフィール様はたしか……ナナ様に渡すんですよね?ご友人の……」
「!そ、そうなのです!ナナちゃんにお菓子を持っていくと約束をしたのです!ナナちゃんは最近女優業で忙しそうなので!手土産に!」
「???そうなんだ………?まあ、ならいいや。私もアミィの包もう」
そう言ってセオドア様は黄色のラッピング袋を手に取って作業し始めた。セラフィール様は私を見て大きく頭を下げて………私も小さく笑った。
* * *
____勿論、誕生日にお菓子だけ、なんて完全に手抜きのようなことはしない。
「ふぁ…………」
蝋燭の明かりに照らされながら、私は欠伸をする。眠い。………眠いけど、この時間しかできない。
私は目を擦りながら手元を見る。
白い布と、すみれの形を帯びた刺繍。
アドラオテル様のプレゼント。私の少ないお金でも渡せるものは、これしか無かったのだ。………皇族が使うものじゃない、ってわかってる。わかってるけど……渡したい、って思ったから。
初めての誕生日プレゼント…………アドラオテル様は困ってしまうかな?嫌がられてしまうかな?怖いけど…………でも、仮に、万が一、100000000分の1でも、喜んで貰えたら、嬉しいな。
私はアドラオテル様の笑顔を思い浮かべて、口角が上がる。そのためにもまずはこれをしっかり作らなきゃ。
「…………よし、頑張ろ。できるだけ綺麗に!アドラオテル様が持ってても恥ずかしくないような立派なものに!」
私はちくちく、ハンカチに刺繍を続けた。




