見てしまった光景 #02
「どうしたのですか、お二人共」
ピンクと白に統一された部屋___セラフィール様の部屋らしい___に着くと、セラフィール様が優しく聞いてくださった。セラフィール様に相談したくて、でも何からいえばいいかわからない私が吃っていると、フィアラセル様が代わりに言葉にしてくださった。
「レイチェルがお兄様に会いたいって言ってた。だから、連れてこうと思って。………でも、いなかった。
お兄様はどこ?」
「ええっと、………アドはひまわり畑のテラスにいます………」
「…………ああ」
「?」
セラフィール様の言葉に、フィアラセル様は顔を顰めた。1人わからない私は問うた。
「あの、アドラオテル様はひまわり畑のテラスで何をなさっているのですか?」
「…………えっと………」
「………レイチェル、ごめん。お兄様と会うのは夕食まで待ってくれない?」
「それは、全然いいですけど………何故?」
「いいから。………絶対、ひまわり畑に行っちゃダメだよ?」
「ええ。行かないでくださいまし……」
「???」
私は何もわからないまま、首を傾げた。
* * *
「…………ッ」
やっと解放された私は、真っ直ぐひまわり畑に向かっていた。
だめ、と言われた時、強い拒絶を感じた。それが寂しかったのだ。……私が知らないことを、2人は知っている。当たり前のことだけど………それでも、仲間はずれは嫌だった。
気の迷いに近いのかもしれない。怒られてもいいから会いたかった。だから____………?
ひまわり畑に着いた。白い綺麗なテラスには、豪奢なドレスを着た女性が3人ほど居た。アドラオテル様はその3人を掻き分けて、こっちに向かって歩き出す。私は思わず近くの木に隠れた。
そんなアドラオテル様に女性は大声を上げた。
「アドラオテル様ッ!わたくしと婚約してください!」
「アドラオテル様!わたくしの手を!ヘンダリー公爵家との絆は深めておくべきですわ!」
「違います!シースクウェア王国王族のわたくしと!わたくしと結婚すればシースクウェアは貴方様の……!」
……………話の内容は、概ねこんな感じ。
リアル告白現場にまさか来てしまうとは自分でも思わなかった。だからセラフィール様もフィアラセル様も行くなと言ったのか……!
………私とアドラオテル様の婚約は、公にしていない。きっかけがきっかけってのもあるし、私は平民だ。そんな現実離れした婚約を大々的になんて出来ない。少し考えればわかることなのに、………私は何も知らなかったんだ。
暗くなる心。アドラオテル様は女性達から距離を取って、私に背を向け言い放った。
「ごめん。俺には好きな人、いるから。誰とも婚約しない」
「_____」
アドラオテル様は、いつもより強い口調でそう言った。水をぶっかけられた衝撃が走る。そんな私を他所に、女性たちは詰め寄る。
「な、………そんな話は聞いておりません!」
「ヴァリアース大国のビスカリア王女殿下ですか!?それともセイレーン皇国のエリザベス皇女殿下ですか!?」
「違うけど…………」
「あの御二方じゃないんですか………なら、他はもういないのではないですか?」
「…………いない?」
「ええ。アドラオテル様程の御方と釣り合いの取れる女性なんていません。わたくし達は選ばれた王族、皇族ですわ」
「王族は王族と結婚すべき、それは第一皇太子であれば当然です」
「他の女を囲むのには反対致しません。わたくしは妾で構いませんわ」
女性たちは口々にそう言う。まるで時代を逆行している気持ちに陥れられた。どこまで行っても私は異世界人で、この世界の常識をちゃんと知ることなんて出来なかった。でも、普通に考えればやっぱりわかる事で。
アドラオテル様は___口を開いた。
「…………あのさ、俺が誰を好きでも、ほかの人には関係ないから。
この件を不問にするのは今回までだ」




