表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
318/420

君を想う #01

 








 ____お母さんが、死んだ。

 お経を聞きながら、ぼんやりとそう思う。涙は出ない。お父さんも私も、今日は目を隠してない。


 3ヶ月しか生きられないと言われたけど、1年生きてくれて嬉しかったと思うべきか、1年しか生きてくれなかったって怒るべきかもわからなくて、……何もわからなくて…………寂しい顔をしているお父さんにも何も言えなくて。


 ……ユーリくんに、会いたいな、って思った。



 * * *



 「……………」


 ユーリはちくちく、誰もいない教室でハンドメイドをしていた。でも、いつもしないミスをするし、手も止まるしで、集中出来ずに居た。


 ちらり、と花瓶を見るけど、花瓶には花が挿さっていない。……寂しい花瓶。


 ツムギちゃんのお母さんが死んじゃって、お葬式をしないといけないからお休みだと先生が言っていた。でも、この時間に来てしまう。もう2年もこの時間に来てたから、癖になっていた。


 __ツムギちゃん、大丈夫かな?

 大丈夫なわけがない。ユーリは思い直す。自分の母親が死んだら、と思うと涙が出てくる。この気持ちを今、ツムギちゃんが感じていると考えると落ち着かない。


 …………手を動かそう。


 ユーリは再び手を動かした。そして、友達が来るまで何十回もミスをして手を傷だらけにしたのだった。



 * * *



 「………ごちそうさまでした」


 「………」

 「………」

 「………」


 ユーリはことり、とフォークを置いて立ち上がった。食器を下げながら大きな溜め息をついている。………最近、ユーリの様子が変だ。

  いつも明るくて、天真爛漫なユーリの口数が減り、大好きなハンドメイドもやらず、バイトにも出ない。


 ………ここらで1度、話を聞くべきかもしれないな。


 「わり、ご飯後で食べる。チェルはルークと一緒にいてあげて」

 「はい。……ユーリをお願いします」



 俺はそれだけ言ってリビングを出た。




 * * *



 ユーリが8歳になった時、イチカに頼んで部屋をひとつ貰った。別荘と言うだけあって部屋は腐るほどあり、ユーリの自立の為に部屋を与えたのだ。


 ユーリは甘えっ子だけど、変な所真面目で、部屋を貰ったらすぐに部屋で眠るようになった。……とは言っても、眠るだけで生活はリビングで送ることが多いんだが。


 それはともかく、俺はその部屋に着いてからノックをする。中からどうぞ、という声がして、俺は扉を開けた。


 部屋はシンプル……というか必要最低限のものしか置いていない。かろうじて今作っている縫い物の材料があるだけだ。ユーリはそれを机に投げ出して、ベッドの上で体育座りをしていた。




 「なあ、ユーリ」

 「何?」

 「……なんか、あったのか?」

 「…………」

 「えっ!?」


 尋ねると、ユーリがポロポロと大粒の涙を流した。突然の事で慌てていると、ぽつりぽつりと言葉が零れた。



 ツムギちゃんのお母さんが死んじゃったこと、ツムギちゃんが学校に来ないこと、母さんが死んだらって考えたら苦しいこと、ツムギちゃんもこの気持ちだと思うと泣いちゃうこと、……ユーリは泣きながらも全部話してくれた。



 * * *




 「…………そっか」



 俺が全部話すと、近くに来てくれた父さんは天井を見上げた。誰にも言えなくて、でも、誰かに聞いて欲しかった言葉を全部言えて、少しだけ心が軽くなった。……少しだけだけど。



 「ユーリ、ユーリはどうしたい?」

 「俺、……どうしたい?」

 「俺が聞いてるんだけどなぁ……。ユーリは、ツムギちゃんにどうしてあげたい?」

 「………傍に居てあげたい。お母さんが死んじゃって悲しいツムギちゃんに、会いたい………」

 「ん、それでいいんだよ」


 お父さんはそう言って俺を抱き締めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ