君を想う #02
「悲しい時、誰かがそばに居てくれるだけで安心することもあるんだ。……お母さんのことは悲しいし、割り切れないし、……辛いけど、………だめだな。上手いこと言えないや」
父さんはそう言ってポンポン、と頭を撫でてくれた。そうしたら不思議で、我慢出来なくて、俺はまた泣いた。
___俺に何ができるんだろう。
___なにをしてあげられるだろう。
父さんの胸の中で泣きながら、必死に考えた。
* * *
「明日は防災訓練だ、帽子を準備して………」
「………」
帰りのホームルーム、俺はずっとツムギちゃんの席を見ながらぼーっとしてた。後ろでシオンくんとアメリちゃんが漫才のような話をしている。でも、内容は入ってこない。どうしたら……「最後に、ツムギ・キョウゴクのおうちにプリントを届けてくれる人は居ないか?」
「!」
先生の声が、鮮明に聞こえた。
ツムギちゃんの名前だ。プリントって言ってた。俺は思わず立ち上がる。
「俺っ、俺行きます!」
「ユーリくん?」
「えっ、なんで………」
「やっぱり………」
何か色々聞こえるけど、そんなのどうでもよかった。俺はもう一度、声を上げた。
「俺が!ツムギちゃんのおうちに行きます!」
「あ、ああ……じゃあユーリ・ストライク、よろしく」
「はいっ!」
俺は笑顔を意識して返事をした。
* * *
「………此処が、ツムギちゃんのおうち……」
ツムギちゃんのおうちはシックにあった。父さんが働いているブルーアイズ事務所も近い。ここら辺はよく家族で買い物に行く時通るから迷うことは無かった。
俺は一瞬躊躇して、そのままインターフォンを押した。ピンポーン、という音と共にパタパタという足音が聞こえてきた。
「ゆ、ユーリくん、なんでいるの!?」
「ツムギちゃんっ!」
扉が開くと同時にツムギちゃんが出てきた。布で目を隠してなくて、でも、綺麗な目の下に黒いクマがあった。肌が白いからくっきりで、痛々しかった。
「なんで、……」
「えっと、プリント届けに来たの。これ」
ぺらり、と持っていたプリントを渡すとツムギちゃんは受け取った。ほんの少しだけ沈黙が流れて、俺は慌てて言葉を紡いだ。
「ツムギちゃん、大丈夫?目の下黒いよ?ご飯食べてる?……目も赤いし……っ」
「……ユーリくん……?なんで、泣いてるの……?」
「あ、……っなにこれ……」
ツムギちゃんの顔を見た瞬間涙が零れた。ダメなのに、嬉しい気持ちが確かにあって、戸惑う。最初、宥めていたツムギちゃんも泣き始めた。
「あ、れ………私も、涙が……っ、お母さんが死んじゃったとき、出なかったのに……っ、ユーリくんが泣いたから、かなぁ……ひぐっ、お母さん……もういないんだって……っ」
「……っ、ツムギちゃん!」
「きゃっ」
俺は、ツムギちゃんを抱き締めた。父さんがこうしてくれたら、安心して泣けたから。……俺がしたかったってのもある。
「俺、……俺はいなくならないから、俺、何も出来ないけど……傍にいてあげることはできるから………なんでも聞くし、一緒に泣くから……ッ」
「ッ、……ユーリ、くん……ひぐっ、……ありが…………うわぁぁ、……っ」
俺達は、沢山泣いた。
泣きながら、思った。
………ツムギちゃんの傍に居てあげたい。ツムギちゃんと一緒に居たい、離れたくない、って。
確かにそう思ったんだ。




