大富豪
「…………」
「…………」
「父さん、母さん?どうしたの?」
もうそろそろ11歳になるユーリがきょとんとした顔で私達を見てくる。でも、言葉は紡げなかった。
何故なら___今、ユーリのお金が保管されている通帳を見てしまったから。ユーリは『ハニー×バニィ』というハンドメイド作家をしている。それはもう人気で、一種のブランドと化しているソレは、多大なる収益を齎した。
これを持ってきた大おじいちゃんが言う。
「ユーリも11歳になるから知らせておこうと思って王国から来たんだ。……凄いだろう?」
「す、凄すぎて何も言えないよ………どうしましょう、アド」
「俺も驚いてる………俺、本当にユーリの父親なの?俺の給料の比じゃないんだけど…………」
「ユーリの作り出す物は全て精緻で良質だ。金額は相当になる。流石はセオドアの孫だなとしか言いようがない」
それを言われたら何も言えない。
軽い気持ちでハンドメイドに必要なものを渡しただけなのに………。
「あー…………ユーリ」
「………!な、なあに?」
アドラオテル様はユーリを呼んだ。先程から自分の話だとちらちらと此方を見ていたユーリはアドラオテル様の傍に来てちょこん、と座った。
「ユーリ、………あのな、ユーリはお金持ちになったんだ。それで、何か欲しいものはあるか?」
「えっと、うーん…………作るのに必要なものが買えたら、あとは残しておきたいなぁ」
「本当にそれでいいのか?ユーリならなんでも買えるぞ?」
「あのね、……俺、父さんと母さんとルークと家族みんな居てくれれば、欲しいものないんだ!
だから、使わないっ!」
「ッ………」
ユーリの言葉に涙が出た。
あんなに小さかった赤ん坊が大きく、まっすぐ育ってくれたのが嬉しい。アドラオテル様も同じ気持ちなのか、優しい顔持ちでユーリを撫でた。
「………そっか。じゃあ、大事に取っておくからな。それとも自分で持つか?」
「ううんっ、今まで通りでいい!」
「わかった。……クラウド、いいか?」
「勿論だ。小さな子供には大きすぎる大金だからな。大事に保管しておく。
……すごくいい雰囲気だが、ひとつ言っていいか?」
「なに?大おじいちゃん」
「お前達、それぞれ相当な収入があるが、確定申告は大丈夫か?この額だとちゃんと納めないと捕まるぞ」
「………」
「………」
いい雰囲気がぶち壊れた瞬間だった。
私達家族は相当悩んだ結果、大おじいちゃんに教えて貰って、無事納めることができたのは別の話。
* * *
おまけ - 無名家族
お買い物にて。
「ルークっ!ヒーローゲーム!あるよっ!欲しくない!?」
「えっ、要らない」
「じゃあヒーローカードは!?持ってないでしょっ!」
「んー、今日はいらないかな」
「………ひっぐ………ルーク、何が欲しいの……?」
「………はぁ、じゃあ、ヒーローチョコが欲しい」
「………!うんっ、箱で買うね!」
「………アイツ貢癖がついてないか?チェル」
「所得税の話を聞いていたからだと思います………」
そんなことを言い合いながら、自分達もなんとかお金を使おうとちょっといいシャンプーやらボディーソープやらお肉を買った2人だった。




