死の宣告 #01
___お母さんが、不治の病になった。
それは突然だった。具合が悪いと言っていたお母さんが入院して、検査をして、……治らないって分かって。
私は酷く落ち込んだ。学校が夏休みなのをいい事に、ずっとお母さんの傍にいた。お母さんは病気だとわかると、ほんの少しだけ性格が変わった。
前はツンケンしていたけど、今は朗らかになった、というか……アニメとかに出てくる近所のおばちゃんみたいになった。でも、知ってるんだ。夜、お父さんに抱きついて泣いてるの。
私、なにかしたくて、お母さんに聞いてみた。「なにかしたいことはない?」って。最初はないって言ってたけど、お父さんとタッグを組んで聞きまくったら、『行きたい場所がある』と答えてくれた。
今日はそこに行こうと思う。
* * *
「道はこっちであってるの?レナ」
「ええ、こっちなの。言ったでしょう?下界にあるんだって」
「わー、緑がいっぱいだねっ!」
お父さんの車に乗って、私は下界に来た。コルーンに住んでるから名前くらいは知っていたけど、来たのは初めて。なんでも、お母さんがお父さんと結婚する前はよく行っていたカフェらしい。
「結婚してからも行けばよかったのに」
「ツムギが生まれてから大変だったからね~」
「うっ、ごめんなさい……」
「何謝ってるのよ、ツムギが産まれてくれてもっと幸せだったからいいの。
あ、ほらあそこ!」
お母さんの声につられて前を向くと、そこには大きな家があった。お城みたいな大きな家。その隣に街でよく見るようなカフェを見つけた。
「あそこ?」
「そう。新世界っていうお店でね、コーヒーが抜群に美味いのよ」
「へえ~、甘い飲み物はある?」
「あるわよ。わざわざアカデミア・クラックから仕入れているんだって」
「そうなんだ。じゃあ僕も飲めるしツムギも飲めるね」
そんな会話をしながら駐車場に車を停める。魔物がちらほらいるけど、結界が張られていてほっとした。
「ほら、早く入ろう」
「うんっ」
扉を開けるとカランコロン、と軽快な音を立てた。中は綺麗で、お客さんが少なかった。
「いらっしゃいませっ!……あれ、ツムギちゃん?」
「………!」
ドキン、と胸が高鳴った。だってこの声はユーリくんだから。見ると、エプロン姿のユーリくんがお盆を持って立っていた。
「ゆ、ユーリくん!?なんでここにいるの!?」
「んー?俺、おばあちゃんの所でばいとしてるの!」
「ばいとって……まだ10歳なのに?」
「うんっ、……あ、席にご案内しますっ!」
ユーリくんはパタパタと歩いてテーブル席に案内してくれた。そして、手馴れた動作でメニューを置いてにこ、と笑った。
「ごゆっくり!」
「………ここ、ユーリくんのおうちなんだ……」
「ツームーギー?」
「ひうっ!」
ぴた、と冷たいものが頬に当たって震えた。見ると、お母さんが水の入ったコップを片手にニヤニヤ笑っていた。
「ツムギ、あの可愛い男の子と友達なの?彼氏?」
「は!?彼氏なの!?」
「ちっ、違うもん!友達!友達なのっ!」
「あやし~なぁ?これはユーリくんが来たら聞かないとね~」
「そ、そんなこといいからメニュー見ようよっ!」
私は話をそらすためにメニューを開いた。すごくオシャレなメニューで、オトナの店、って感じがした。
「あら、軽食があるじゃない。変わったわねえ」
「?カフェにはあるだろう?軽食くらい」
「ううん、この新世界ではコーヒーとジュースしかなかったのよ。コーヒーが美味しかったから気にしなかったけど、どれも美味しそうね……」
「美味しいですよ~」
「ひゃっ!」




