ラピュタ体育祭 #04
ツムギはぱ、と瞬間移動をして蹴りを繰り出す。だが、ユーリは平然とそれを受け流してトン、とツムギの背中を押した。それだけで痛くはないが衝撃波の様に飛ぶツムギ。しかしツムギも負けてはおらず、すぐに空にぱ、と移動した。
それを見たユーリは浮遊魔法で浮いてまた衝撃波をしようとする。が、ツムギがそれを許さず受け流して逆にユーリを投げようとする。しかしそれも当たらず。
空中で壮絶するような打撃戦が行われている。2人とも無傷だ。これには会場が揺れるくらい熱狂に包まれた。既に聞こえない2人は一旦距離を取って向かい合う。
「ユーリくん、強いや」
「ツムギちゃんも、当たらないよ」
「……ちょっとだけ、本気を出すね」
「___!」
ツムギはそう言ってぱさり、と目隠しを取った。空色の宝石のような瞳と共に、端正な顔立ちが晒されると、会場全体がしーんとなった。
絶世の美少女。その言葉がふさわしい少女は指を組んで術式を展開させる。
「術式・魚。
術式・獅……」
ツムギの周りに赫と蒼の球が生まれる。
それが混ざりあって紫の玉ができると、指を弾くように前に出した。
「虚式___麒麟」
「…………!」
「危ないっ!防御魔法!結!」
技が放たれると同時に会場にいたアダムが会場全体に結界を張った。物凄い音を立てて結界にぶつかる。世界最高峰と呼ばれた結界は、衝突と同時にパリィン!と割れた。砂煙が舞う中、ツムギはユーリを抱いて空中に浮いていた。顔が赤いユーリは自暴自棄気味に「ま、まいりました!」と叫んだのだった。
結果は、1位がツムギ、2位がユーリ、3位がアメリアだったとさ。
* * *
「ユーリっ!」
「母さん?」
表彰式が終わったあと、レイチェルはユーリを抱き締めた。ユーリはきょとんとしている。
「大丈夫!?怪我してない!?」
「してないよっ!ぼーっとしてたらね、ツムギちゃんがね、抱き締めてくれたんだよーっ!」
「ぼーっと、って………どうして?ユーリ兄ならかわせたでしょ」
「え、と、それは………な、ないしょ!
俺、教室戻るから!」
ユーリはそう言って逃げるように入場門に向かっていった。それを見送ると、後ろから「あのー」と声をかけられた。振り返ると……いつぞやの牛乳のお兄さんが立っていた………って。
俺は何故か、コイツがツムギちゃんの父さんだとピンときた。案の定、男はぺこりと頭を下げた。
「ほんとうにすみませんでしたっ!」
「え、ええっと……?」
「ツムギの父、京極覚です。ツムギがまさかあの術式を使うと思わなくて……本当にごめんなさい!」
「は、はじめまして、ユーリの母のレイチェルです。えっと、その、……」
レイチェルがチラチラと俺を見ている。人見知りが発動しているレイチェルの代わりに俺が言葉を紡いだ。
「あー、いや、気にしないでください。怪我もしてないし、……500円をチャラにしていただければ」
「500円………ああ、あのことですか。それは全然!寧ろ慰謝料払いますよ」
「いやいや、いいですって。その代わり、と言ってはなんですが、ユーリと仲良くしてやってください」
「それはもちろん、こちらのセリフですよ」
そんな会話をしながら、俺達は笑ったのだった。




