雨季と皇子と歌姫と
恐る恐る目を開くと___色違いの目をきらきらさせた、アドラオテル様。アドラオテル様は口を閉じることなく続けた。
「凄い凄い凄い!レイチェル!すげー綺麗だった!雨なんて忘れちゃったよ!
光が、ぶわーって!で、レイチェルが雨の中なのに凄く綺麗なステップ踏んで!あと歌!綺麗だった!
俺、見蕩れたぞ!」
「え、あ、………きもち、わるくないの………?」
思わず、聞いてしまった。自分の声が震えてるって、自分でもわかった。でもアドラオテル様は気にしないと言わんばかりに色違いの目を細めて笑った。
「気持ち悪くなんてない!………綺麗だった」
「_____」
そう言って微笑んだアドラオテル様が………輝いて見えた。顔が熱くなっていく。
そんな私を放って、見ていたサシャ大おばあちゃんがクスクスと笑いながら言う。
「……ほらほら、終わったんだから2人ともお風呂に入りなさい。アドラオテルくん、アンタ皇子なんだから風邪引いたら大変なんじゃないの?」
「いーや!俺はそんなやわな鍛え方してない!それよりレイチェルをお風呂に入れてやれ!
なあサシャ!それよりさっきのいつもやってんのか!?ビデオで録画とかしてないのか!」
「お馬鹿。神聖な儀式を録画できるか!私だってできるものならしてるっつーの!」
「ちぇーっ、使えないおばちゃんだなぁ」
「あーらあらあらあら、そんなこと言っちゃう?おばちゃん本気出しちゃうけどいい?」
「ははっ、俺に勝てるわけないじゃん!………」
大嫌いな梅雨。
やらなければならない役目。
私ができる舞いと歌と祈り。
いつもと変わらない、はずなのに。
恥ずかしい。
褒められたの、初めてで____無性に恥ずかしい。
レイチェルは1人、雨に当たりながら赤い顔を必死に冷ました。
* * *
おまけ - 無茶苦茶大祖父母
「………ねえ、クラウド」
女は濡れた儀式用の着物を火魔法と風魔法で乾かしながら、新聞を読む男に声をかける。男は新聞を見ながら口を開いた。
「なんだ?」
「…………アドラオテルくん、凄くいい子だよ」
「……何かと思えば……その話はするな。とっとと婚約解消してやれ」
「いいから聞いてよ。………今日ね、チェルの儀式、アドラオテルくんが見に来たの。
そしたらね、滅茶苦茶チェルを褒めてたわ」
「……………」
男はぴたり、新聞を読むのをやめて顔を上げた。歌姫は………誉高い、重要な役職であるのにも関わらず、人から非難されることが多い。
けれど。
女は男が言わないようにしていることを先に言った。
「___アドラオテルくんなら、チェルを愛してくれるんじゃないかな」
「……………寝る」
「ん、おやすみ」
ふい、と背けた男の涙目に、女はくすくす笑った。
◇
おまけ - アドラオテル & レイチェル
「あ、あの…………」
「ん?なぁに?」
レイチェルは涙目でニコニコするアドラオテルを見る。アドラオテルはレイチェル同様雨に当たっている………って!
「か、風邪!風邪を引きますから!帰ってください!」
「やーだ。帰ったら見れないじゃん?」
「し、執務とか!あるんじゃないですか!」
「ふふん、終わらせてきた。ヨウちゃんの驚いた顔、レイチェルにも見せたかったよ」
「……………」
レイチェルは何も言えなくなって顔を赤くしたままぎゅ、と杖を握った。
___雨季が好きになったアドラオテルとレイチェルでした。




