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偽造婚約、成立








 頭が、真っ白になった。

 だって、アドラオテル様が、あのイケメンなアドラオテル様が___ぼっちの、異世界人の私に、婚約を結んで、なんて言ったから。



 アドラオテル様の方を見ると、アドラオテル様が真剣な目で私を見ていた。




 「………俺を無理に好きになれ、という訳じゃない。フリでいい。大人達を欺こう」



 「そ、れは…………でも、…………」



 「時間が経てば解消することもできる。大丈夫、今はばあちゃん達が興奮しているだけで、母ちゃんが婚約発表なんてしない。



 俺は、レイチェルを大事にする………なんて、こんな状況で信頼しろ、なんて言えないけど」




 「…………」



 ちく、と胸が傷んだ。

 偽造婚約、っていうものだよね?アドラオテル様は素敵な人。私なんて釣り合わない。…………けど。



『おはよう、レイチェル』



『おつかれ、レイチェル』



『レイチェル』




 ………たくさん、私のために色々してくれている。お礼、まだ出来てない。少しでも………少しでも、アドラオテル様が私にしてくれたことを返せるなら。




 「………わかりました。アドラオテル様。


 婚約、します!」




 「ああ。………俺も同意する!」




 そう叫んだ瞬間、私達を縛る縄が空中で解けていく。そして、私はアドラオテル様が捕まっていた黒い縄、アドラオテル様は私が捕まっていた光の縄が薬指に巻きついて………指輪に変わった。




 こ、これって…………。




 「…………ん、婚約指輪ができた。



 レイチェル、___よろしくな!」





 アドラオテル様は私に光の指輪を見せて、に、と笑った。



 ____こうして、私達はとてもあっさり婚約を結んだのだった。





 * * *





 「婚約成立~おめでとーう!」



 「おめでとーう!」




 「…………」



 「…………」



 パァンパァン!とクラッカーが鳴る。目の前にはアルティア様とサシャ大おばあちゃんが満面の笑みだ。




 だがしかし。




 私はちらり、前を向く。

 目の前には____豪奢な赤と金色の服を着て、紅銀のストレートヘアに王冠を載せた美女もといアドラオテル様のお母様で皇帝・アミィール・リヴ・レドルド・サクリファイス様、その傍にいる群青色の髪、緑の瞳の皇配、セオドア・リヴ・ライド・サクリファイスが顔を顰めている。



 それだけじゃない。




 私達の後ろには、きっと同じ顔をしているであろう私の一族が控えている。それはもう戦争が如く緊迫感がある。



 先に口を開いたのは____アミィール様だ。




 「…………お母様、これはどういうことでしょうか?」




 「だ、か、ら!サシャの孫と私の孫を婚約させたって言ってるのよ!ねえ、サシャ!」



 「そうよ!アンタらも暗い顔やめなさいよ!お通夜じゃあるまいし」




 「くっそババア………てめえ人の孫になんてことさせてんだあ"ぁ?」





 ドスの効いた低い声。おじいちゃんだ。そりゃこうなるわけで。もう臨戦態勢が出来ているのか爆発音が聞こえる。




 私達の一族は滅茶苦茶だ。性格も、強さも、全てが次元を超えている。だがしかし、サクリファイス大帝国皇族であるアドラオテル様達も弱いわけがない。




 争いなんて、起きて欲しくない。

 その為の婚約だ。




 「あ、あの!どうか喧嘩しないでください!」



 「そうだぞ。………きっかけはどうあれ、俺達は合意の元、婚約を結んだ。ここで争うことはやめてくれ」



 「チェル!アンタサシャさんに何されたかわかってるの!?」



 「アドもです!わたくしに知らせることなくお母様に捕まり………!こんな婚約認められません!」




 一気に場が騒然となる。が、それを静観しているほど元凶は大人しい性格ではないわけで。




 「黙りなさい」



 「黙れ」





 ドスの効いた低い声ふたつが玉座の間に響き渡る。もちろん、アルティア様とサシャ大おばあちゃんだ。




 「………いいじゃない、2人とも、もう16歳よ?婚約の一つや二つしなきゃね~」



 「文句があるなら私達にかかってくれば?爪の先くらいはダメージ与えられるかもよ?」




 「人格破綻者…………!」



 「本当によ……………!」





 うん、言いたいことは分かる。でも勝てないのもわかる。この2人がとにかく強いから………私達に拒否権は無いのだ。




 菩薩顔になる私を他所に、あれやこれやと話が纏まっていく。口論に近い形での話し合いの末、私は花嫁修業ということでサクリファイス皇城で過ごすことになったのだった。







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