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偽造婚約のその後





 「あぁぁぁぁぁぁぁ………」





 夜、私は大きすぎるベッドの上で声を上げていた。ちらりと周りを見ても広すぎる部屋。下界の別荘なんかよりも全然広くて落ち着かない。




 ____今日、16歳になった私は、まさかまさかのアドラオテル様の婚約者になってしまった…………。



 まだ夢心地。嬉しくないわけじゃないけど………申し訳なさが募る。だって、なんでも出来ちゃうアドラオテル様の婚約者だよ?形だけとはいえ、それでも怯えてしまう。



 ぼっちで異世界人で根暗な私には到底荷が重すぎる。アドラオテル様にはお似合いの人がごまんといる。それに引替え私は………実力でもなんでもない、惚れた腫れたでもない、血筋だけ一丁前に滅茶苦茶なだけだ。



 私はちらり、と薬指に嵌められた黒い指輪を見る。




 アドラオテル様_____何を考えているのだろう。



 そんなことを思いながら、私は目を閉じた。






 * * *







 「…………………」





 アドラオテルは部屋の窓から黙って月を見上げてる。その薬指には金色の指輪。



 ____婚約者を頑なに持ちたがらなかったアドラオテルが、とうとう婚約者を得た。




 何処かの姫でも、令嬢でもなく、平民___否、異世界人のトラファルド・T・エード・レイチェルを。




 ………どんな、気持ちなのだろう。




 「…………アドラオテル様」




 「…………普通に話せ」



 「…………アドラオテル、何を考えている?あの女を婚約者になど………」



 「あの女じゃない。レイチェルだ。婚約者にしたのは俺じゃない。ばあちゃんだ」



 「………そうだとしても、だ。お前なら拒絶だって出来たはずだ。アルティア様は心の底まで鬼じゃない。嫌だという意思を見せれば、こんなことには………」




 「………………と思った」




 「…………え?」



 アドラオテルは僕の方を見ずに、ボソボソと言う。聞こえなくて聞き返すと、アドラオテルは今度は聞こえるくらいの声量で言った。





 「____婚約者がレイチェルなら、いいと思った」





 「………どういう、意味ですか?」




 「………下がれ」






 アドラオテルはそう言って僕を睨んだ。………これ以上聞くな、と言われている感覚に襲われて、僕は部屋を出た。




 扉の隙間から見えたアドラオテルは、また月を見上げていた。







 * * *








 おまけ - 龍神一家






 「……………アドに、婚約者、か」




 とある寝室、男は愛おしい女を抱きながらぽつり、漏らす。女はその言葉に反応して顔を上げた。




 「…………アド、大丈夫でしょうか………望んだ婚約ではないはずなのに………」



 「………わからないが、アドが本当に嫌ならアルティア様に直談判してるはずだ。もしかしたら………アドにとってレイチェルという子は大事な子なのかもしれないね、アミィ」





 「………そうであることを祈るばかりです、セオ」



 2人は不安を軽減させるために強く抱きしめあった。







 ◇





 おまけ - 滅茶苦茶夫婦





 「ねえロック~、どう思う?」




 とある寝室、クーラーの効いた部屋でゴロゴロする女は未だに本を読んでいる男に声をかけた。




 「………何が」




 「決まってるでしょ、チェルの婚約よ。あんの滅茶苦茶な祖母様!ムカつき~!人の娘を勝手に婚約させるなっつーの!……まあ?ちょっとはイケメンだったけどさ?」



 「どこが。俺は認めてねーよ。大体お前はずっとチェルが結婚すればいいと言ってただろうが」



 「わかってるわよ、チェルが選んだなら間違いないって。でも急すぎてさ~。そう思わない?」



 「知らん。黙って寝ろ、ショーカ」



 「…………ロック、一言言っていい?」



 「………なんだ」



 「本、逆さまだよ」




 「…………」



 女の言葉に男はどさ、と机に医学書を投げ出したのだった。







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