11 模擬戦
予告した程、フルボッコにはしません。
厳正なくじ引きの結果、ピコと模擬戦を行う順番は、
一番手 サンライト軍曹
二番手 ウィンドラス曹長
三番手 グラスフィールド伍長
四番手 チェンバー小尉
という順になった。
『両者準備完了。』
もうすぐ一戦目が始まる。
ピコは基地防衛隊の予備機を借り受けた。
『模擬戦、始め。』
ゴウッ
開始の合図と同時に動き出す。
(懐かしい重さにゃ。)
通常仕様の機体に乗っていたのは試用特務時代の一月半である。
あれからシステムは何回かアップデートされ、更に使いやすくなっている。
しかし普段、高機動機を乗り回していたピコには、どうしても鈍重に感じてしまう。
『ピピッ』
レーダーに反応。
この会敵の早さは、相手機がレイド仕様機という事を示している。
量産レイド仕様機は、速度に特化していたランナー機と異なり、若干の速度を犠牲にミサイルを搭載している。(それでもポッドとしては破格の速度だ)
こちらが相手の反応をキャッチしたという事は、つまり相手側もピコ機の反応をキャッチしたという事だ。
『ピーッ!』
警告音に回避機動を取る。
シュパァッ
鈍い反応が幸をそうし、ミサイルの軌道の修正が利かず、回避に成功する。
となると次に来るのは本体だ。
ゴオォッ
おそらく通常であれば、大半がミサイルで撃墜判定をされる。
ミサイルを回避しても、本体による急襲でほぼ詰みである。
指導は十分活かされているようだ。
トトトッ!
だが、相手が悪かった。
不規則に左右に振れる相手機コックピット部に、パルスガンから放たれた非破壊レーザーが命中する。
『サンライト機撃墜、フロス中佐の勝利です。
両機、帰投して下さい。』
普段からディックの特務仕様機を見慣れていたピコには、量産レイド仕様の機体速度は、通常仕様機で十分対応が可能なのであった。
…………………。
…………。
…。
休憩をとり、続く二戦目。
ウィンドラス曹長の機体はスナイパー仕様。
こちらも特化部分がありつつ、汎用的な機能を備えた機体となっていた。
ピコ的には狙撃というより、長距離といった印象を受け、多少時間はかかったものの距離を詰め、ミサイルでの撃墜となった。
…………………。
…………。
…。
更に三戦目。
グラスフィールド伍長の機体はまさかのハイマニューバ仕様。
これまでで一番苦戦し、撃墜判定は受けなかったものの、初の被弾を受けた。
ミサイルを全て使い切ったが、その処理の隙をついてのパルスガンでの撃墜となった。
…………………。
…………。
…。
そして最後の四戦目。
チェンバー小尉の機体はアサルト仕様。
ヘビーアサルト仕様のミサイル類をマシンガン系に換装し、小型ロケットポッドの数を減らして機動力を確保した仕様だ。
『模擬戦、始め。』
アサルト仕様は装備の特性上積極的には動かず、迎え撃つ戦法が基本となる。
ならば、こちらから仕掛けるべきだろうか。
ゴウッ
とりあえず、一直線に相手に向かうコースを避けて前進する。
…………………。
…………。
『ピーッ!』
会敵予想エリアに着くと、すぐに接近警告が鳴る。
シュババッ
……ドドン
小型ロケット弾が数発、機体の上方を通過して行き、遥か後方で爆発する。
チェンバー機には既に捕捉されていたのだろう。
こちらの探知外から撃墜しようとしたようだ。
しかしレーダーには、方向と距離は分かっても、高さまでは表示されない。
ドギヘルスのロケット弾の斉射が有効なのは、弾数に密度があり、標的も複数である為だ。
またこの攻撃によりチェンバー機は、自らの大体の位置をこちらに知られる事となった。
ゴォッ!
機体の最速で、ロケット弾が飛んで来た方向に一直線で突撃する。
『ピピッ』
こちらもレーダーに捉えた。
流石にその場にいたわけではなく、向かって右側に移動していたものの、軌道修正が可能な範囲である。
(悪くはないけど甘いにゃ。)
突撃してくるピコの横合いから狙うべく、その位置にいるのだろうが、それでは移動していないのと大差は無い。
『ピーッ!』
ミサイルのロックオン完了。
警告が出たのか、動くチェンバー機であるがもう遅い。
シュバッ!
ミサイル発射。
チェンバー機は回避を諦め、迎撃を行う。
ボッ
ミサイルが撃墜される。
しかし想定の範囲であり、構わず接近を行う。
そしてチェンバー機は足を止めたままである。
トトトトトッ!
パルスガンからレーザーが吐き出される。
レーザーはチェンバー機に命中。
そして、交差の瞬間が訪れる。
ヴォッ!
止めの至近バルカン。
『チェンバー機撃墜、フロス中佐の勝利です。
両機、帰投して下さい。』
こうして教導担当4名との模擬戦は、(当然と言えど)ピコの全勝で終了した。
…………………………。
…………………。
…………。
その晩ピコの部屋にて、ミーコが問う。
「そう言えば、チェンバー小尉との模擬戦で何でバル
カンまで撃ったにゃ?」
模擬戦後の確認では、パルスガンが命中した時点で撃墜判定となっていた。
「残心みたいなものにゃ。」
パルスガンが命中したとて、必ず撃墜判定となる事は無い。
実戦であれば模擬戦で撃墜判定の被弾でも、動く敵は動くのだ。
「珍しいにゃ。」
マルコシアス隊のポッド班は、模擬戦の撃墜判定を間違える事はほとんど無い。
むしろ判定が確定する前に、判断する程である。
実際ピコもチェンバー戦で、バルカンを撃つ前に判断し、止めようと思えば止められたのだ。
「そういう事もあるにゃ。」
そう誤魔化したものの、チェンバー小尉の態度には、ピコとて少しイラついていた。
あからさまな死体蹴りでないものの、ついそれに近い事をしてしまったのだ。
「大丈夫にゃ。
私たちも少しスッキリしたのにゃ。」
隊のメンバーも思うところがあったようだ。
「ほら、明日から本格的な指導にゃ。
早く休むにゃ。」
そう言うミーコの胸に抱えられ、ピコは即座に、深い睡眠へと落ちていった。
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