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8  相棒(バディ)

タマ・スタインの掘り下げ回です。

~第三宙域第二前線本部基地~


 キャトラス軍本隊はマルコシアス隊等、敵拠点基地破壊部隊の活躍により、大した損耗も無くドギヘルスの第一防衛ラインを越えた。

 これにより、主戦場はドギヘルスの領域内に移行し、第二防衛ラインの突破が目標とされた。

 しかしマルコシアス隊は補給と整備の為、ドギヘルスの領域から引き返し、最寄りの本部基地へと帰還していた。


「ピコ大尉、どこ行くにゃ?」


 基地内を食堂に向かって歩いていると背後から声がかかる。


「食堂にゃ、タマ小佐。」


 声をかけてきた人物に答える。

(時刻はもうすぐ食堂が開く時間だ。)


「それは奇遇だにゃ。

 一緒に行くにゃ。」


 どうやらタマ小佐も夕食をとるつもりで来たらしい。

(この時間帯、基地勤務者以外は大体そうであるが)

 同行するのは決定事項らしい。

 だが、わざわざ断る理由は無い。

 少し待ち、並んで歩く。


「大尉殿は相変わらず敵の中に入るのが好きにゃ?」


 戦闘時の役割の話題を振られる。


「やれるからやるのにゃ。」


 何なら試用特務の頃からやっている。


「今回は危なかったんじゃないかにゃ?」


 試用特務の頃であればその通りだろう。


「小佐殿を信頼していますのでにゃ。」


 ピコの危機をタマ小佐がカバーしたのは今回が初めてでは無い。

 この一月の活動で、タマ小佐の操作するディーバーは早々にピコのキマイラの補助専属のようになり(隊の話し合いでピコ以外の賛成で決まった)、それ以降何回か似たような事があったのだ。


「手元が狂うことが今後あるかもにゃ?」


 「当てにするな」とふざけたように言われる。

(もちろんそんなつもりは微塵も無い。…筈。)

 ピコとてなるべく、そうならないようにしている。

 今回だって、さっさとアームを切って脱出すればいい話であった。


「善処するにゃ。」


 そのつもりが無い事が丸分かりのワードを言い放つ。

 方や自らより階級が上の者に、方や自らの部隊の隊長に軽口を叩き合う。

 事情を知らない者が見たら驚くだろう。

(実際、擦れ違った他隊の者がぎょっとして見ていた)

 だが、こういったやり取りは既にマルコシアス隊内では日常の光景となっている。

(反応は様々だが、呆れる者がほとんどである)

 軽口を叩き合っている内に食堂へと到着する。


「けっこう居るにゃ。」


 ピコの言う通り、食堂が開いてから十数分にもかかわらず、食堂内は賑わっていた。


「あそこが空いているから行くにゃ。」


 タマ小佐が示す方向を見ると、丁度食事を終えた二人組が席を立つところであった。


 …………………。

 …………。

 …。


 カウンターで食事を受け取り席に着く。

(席取り係を交互につとめて席を確保した)

 今日は肉料理のA定食を選んだ。

(B定食は魚料理で、麺類、テイクアウトがある)


「いただきますにゃ。」


 …………。

 …。


ヒソ…ヒソ…


 食事をしていると何やら潜めた会話が耳に入る。


「(おい、あそこ。)」


「(あ?…ああ、スタイン家の…。)」


「(小将の長男が指揮を誤って…。)」


「(そうさ…大勢死んだ。)」


「(よく顔を出せたもんだ。)」


 …彼らから見たらそうなのだろう。

 間違いでは無い。

 しかしタマ小佐が悪く言われるのは間違っている。


ズッ…


 注意しようと立ち上がる為椅子を引く。


「言わせておくにゃ。」


 しかしタマ小佐は何でも無いように言い、ピコを静止する。


カタン…


 静止を聞き入れ椅子を戻す。


「何でにゃ?

 小佐は小将を止めたにゃ。」


 一応タマ小佐の言い分を聞き入れたものの、納得出来ず食ってかかる。


「あいつらに注意したところで他所に行けば同じ

 にゃ。

 大尉が無駄に反感をかうだけにゃ。」


 …この雄はこういうところがある。

 個人の心情より他者の評価を守ろうとする。


「それにそれ所じゃ無い話題が来たようにゃ。」


ザワッ!


 食堂の入り口付近が一気に沸き立ち、そのざわめきは食堂中に伝播する。


「(何だ?この騒ぎは?)」


「(ケートス隊が来たらしい!)」


「(ケートス隊が?最前線にいる筈じゃ…。)」


「(バカ、補給に来たんだ。)」


「(誰の分隊何だ?)」


 少し聞き耳をたてると最前線から帰還したケートス隊の話題で持ちきりになったようだ。


「…で、本当に気にして無いにゃ?」


 蒸し返すようだが確認する。


「ノープロブレム、にゃ。」


 まあ、あの程度でへこたれるような性格で無いのは分かってはいるが…。


「それに近いうちに家を出る予定だしにゃ。」


 そうか。

 それならば関係無く…


「って、マジにゃ?」


 聞き間違いかと思い聞き返す。

 意外と野心的なスタイン家のことだ。

 小佐を引き留めようとするに違い無い。


「大マジにゃ。

 …まあ、家は有力な家の娘と結婚させようと必死だ

 けどにゃ。」


 いわゆる政略結婚というやつだろう。

 良家あるあるだ。


「好きでも無い相手と結婚とか無理にゃ。」


 想像しただけで嫌になる。


「同感にゃ。」


 この雄は家族を作る事自体が嫌そうだ。


「ピコとなら結婚しても楽しそうにゃ。」


「私のパートナーを軟派しないで欲しいにゃ?」


 にこやかに言うミーコ。(今来たようだ。)

 だが目が笑っていない。

 黒いオーラも纏っているように見える。


「軟派じゃ無いにゃ。

 取らないから安心するにゃ。」


 ミーコと小佐は相性が良くないようで、顔を合わせるとこうなる。

(ミーコが一方的に毛嫌いしている感じだが…)


(ミーコからしたらトラウマものだからにゃ…。)


 手が出ないだけ改善の余地はあるだろう。


「ピコちゃん行くにゃ!」


 ミーコに急かされる。


「待つにゃ!

 食事はどうするにゃ!?」


 ピコは食べ終わり食器の返却のみだが、ミーコは今来たばかりだ。


「テイクアウトして部屋で食べるにゃ!」

(部屋→艦の自室)


「俺は少し残るにゃ。

 また食事しようにゃ~。」


 小佐に手を振られ、ミーコに引き摺られて食堂を後にする。


 …………。

 …。


 ミーコさん、「部屋」ってわたしの部屋のことだったんですね。


次回はお待ちかね(?)スノウ視点!


いつも読んでいただきありがとうございます

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