14 スランプ
ボソッ(爆風…。)
『全機、RTBにゃ。』
新型戦闘用ポッド改め、キマイラに乗り変えて1ヶ月が経過した。
これまでに遭遇した敵機は中隊1、小隊5の合計32機に敵母艦1隻。
この内二個小隊が改造ポッドの部隊であった。
ここ最近、各エリアで敵のポッド部隊との交戦報告が急激に増えている。
しかも度々、仕様の異なる機体も確認されている。
そのほとんどが一回きりの交戦で姿を消している。
おそらく、こちらのようにポッドの兵器化を急いでいるようだ。
『キメラ1、1号輸送船に着艦して下さい。』
ここ最近の任務を振り返っていたら本艦と合流したようだ。
ビルフィッシュⅡの右舷に回り込む。
『キメラ1、着艦姿勢。
速度そのまま。
3、2、1…』
ガコン…
『キメラ1、着艦を確認。
機体をロックします。』
ガチンッ…
『ロック完了。
フロス准尉、降機して下さい。
お疲れ様でした。』
……………。
………。
…。
「キマイラの調子はどうだ?」
ハンガー内で休憩していると親父っさんが尋ねて来る。
機体の調子は万全だ。
しかし、聞かれているのはそういうことではない。
「やっぱり少し機体に引っ張られるにゃ…。」
機体の性能はバトルポッドに比べ格段に良くなっている。
補正システムのおかげで射撃の精度も多少は良くなった。
「お前さんはそうだろうなぁ…。」
頭を掻いてぼやく親父っさん。
実はピコはキマイラに乗り変えてから以前ほどの機動性を発揮できないでいた。
(ガイウス隊員も長距離射撃精度が若干低下した)
「まさか、補助の為のシステムが邪魔になるたぁ、
お前さんらの腕には驚かされる。」
現状、キマイラの仕様は一種類のみ。
先行生産機での実戦データを収集している段階だ。
「各仕様のパーツは頼んでんだろ?
心苦しいが、それまでは機体とシステムの調整で
何とかしてくれ。」
換装部品の納入予定は半年後。
(それでも早い方にゃ。
我が儘ばかり言ってられんにゃ…。)
チラリと駐機された乗機を見やり、割り当てられた部屋へと向かっ
(やべっ、まだ着替えてなかったにゃ!)
うと思いきや、ロッカールームへと向かった。
~ビルフィッシュⅡ 自室~
「今日もお疲れ様にゃ。
相変わらず活躍しているにゃ。」
自室のベッドに突っ伏していると、就寝時の楽な格好をしたミーコが労って来る。
「隊の皆のおかげにゃ。
わたしは最近はそこまででもないにゃ…。」
ガイウス、トーマスは勿論のこと、ミケコ、ディックもキマイラに乗り変えてから撃墜数が上がっている。
反対にピコ自身は補正システムに振り回され、決定打に欠ける戦闘が続いている。
隊長として情けない限りだ。
そんな気持ちが出ていたのだろう。
ミーコがベッドサイドの椅子に座り、話す。
「ピコちゃんは頑張り過ぎにゃ。
前も言わなかったにゃ?
隊長だからって隊員より優れていなくちゃならない
って、決まっている訳じゃ無いにゃ。」
それはそうだ…。
「むしろ、今の状態で無理して怪我をされると迷惑
にゃ。
マルコシアス隊を纏められるのはピコちゃんだけ
なのにゃ。」
そうだろうか?
「そうなのにゃ。
だからピコちゃんは隊の皆に頼ることを心掛ける
にゃ。」
思考を読まれることにはもう慣れた。
それほど自分は分かりやすいらしいことも受け入れた。
やるつもりも無い事を口で言ってもすぐばれる。
頼るつもりではあるが、つい一人でこなそうとしてしまうだろう。
だから返答は、
「善処しますにゃ…。」
「…………。
まぁ…、今はそれでいいにゃ。
その内慣れていくにゃ。」
一応正解の答えだったようだ。
ぽすっ…
ミーコがベッドにのってきた。
「………それで…。
今日はどうするにゃ?」
先ほどまでとは異なる蠱惑的な声で囁く。
この声には付き合い始めのころは惑わされた。
だが、チラリと顔を見ると薄く笑っている。
他が見れば慈愛に溢れて見えるだろう。
しかしこの顔は何度か見た。
「普通に休むにゃ。
………でも甘えさせてにゃ…。」
「…………。」
ごそごそ…
ミーコが無言のまま横になり、ピコの頭を優しく胸に抱える。
「おやすみにゃ…。」
就寝の言葉を伝え、目を閉じる。
「………おやすみにゃ。」
意識を手放す瞬間まで、頭を優しく撫でるミーコの手の温もりがピコを安心感に包んでくれていた。
~ミーコ視点~
腕の内で安心仕切った寝顔を見せるピコちゃんを見て自分も安堵する。
ピコちゃんは時折こんな風に不安定な状態に陥る。
元々好戦的ではないピコちゃんが最近繰り返される戦闘にストレスを感じるのも当たり前のこと。
だからこうして、ピコちゃんがピコちゃんらしくある為にお手伝いをする。
(隊長は戦闘中は性格が変わるんだねぇ…。)
ふと、ミケコの言葉が頭を過る。
この前の任務のあと夕食が向かいになった際に溢した言葉だ。
(ピコちゃんはそんなんじゃ…。)
いや、これでは奴らと同じ。
生まれてから15年間自分を苦しめた考え方だ。
浮かび欠けた考えを振り払い、想う。
(私はピコちゃんの帰る場所に成れたにゃ。
だから、もしピコちゃんが迷っても肯定するにゃ。
私はただ帰り道を示すだけにゃ。)
いつも読んでいただきありがとうございます
作者も作品を読み返して、今執筆している部分が面白く無く感じています…。




