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12 異質

 模擬戦から1ヶ月、教導は大きな問題は無く行われていた。

 チェンバー小尉も文句は言うものの、今の所は反抗する事なく指導を受けていた。

 そして今日、修理が完了したピコの機体が届けられた。


「開発部も思い切った事をするものです。」


 バリー大尉が「打つ手無し」といったように言う。

 

「わたしは何も言って無いにゃ。」


 ピコの指示だと誤解される前に言っておく。


「これは一個人の指示でどうにかなるモノじゃ無い

 だろ…。」


 ガイウスの言う事はもっともである。

 現在のマルコシアス隊の上官組(?)が揃ってこうなっている原因は、届けられたピコの機体だ。

 何とこの機体コアフレームどころか、外装装甲はもちろんの事、配線までもがメタモメタル製である。

 その使用量の合計は、戦闘機2機分に相当する。


「確かに、毎度変形で全損するよりは様々な面で良い

 事は分かりますが…。」


 バリー大尉の言う通り、ピコが機体を意図的に変形させられるようになった為、軍用合金製の装甲や、通常の配線だと使い切りになってしまうのだ。

 

「これを許可した連中は何を考えているのかね…。」


 ガイウスはマルコシアス隊を良く思わない者達がまた騒ぐであろう事を予想し、それを誘発するような事を行った関係各者に呆れている。


「…来てしまった以上、活用させていただきましょ

 う。」


 バリー大尉の言う通りだ。

 今更「元に戻せ」とは言えず、悪いという所も無い。

 

(堂々としていれば良いのにゃ。)


 文句を言う者は何をしても文句を言うのだ。

 許可が出ている以上、使用に不正は無い。


「中佐は休み無しに動く事になりそうだな。」


 ガイウスがわざとふざけたように言う。

 上層部としては、この機体を使用して、それに見合った成果を期待しているのだろう。

 マルコシアス隊としても、隊長が戦闘の度に長期間の行動不能となるのは問題なので、渡りに舟と言える。


「数日はこの機体の動作確認も平行して行うにゃ。」


 …………………………。


 …………………。


 …………。


ガシャン


 第三宙域前線本部基地の発着レーンに四つ足の機体がランディングする。


カシャカシャカシャン


 その機体はランディング後、数秒で薄青と白のポッド形態へと戻る。


パシュウゥ


 コックピットハッチが開きパイロットが降りてくる。

 そしてそのパイロットは、普通の機体から降りたような態度で自らの隊の隊員と、ハンガーの隅でショートブリーフィングを始める。

 ここ数日から見られる光景だが、隊員以外の者達は注視せざるを得ないのだった。



~ピコ視点~


 本日の訓練を終えてのブリーフィングの最中、気になっている事を口にする。


「毎回訓練後の見物者が多くないかにゃ?」


 場所が場所である為人目があるのは構わないが、視線がいささか多く感じていた。


「それでも初日よりは大分ましになっていますが。」


 確かに初日は軽く騒ぎになる程であった。

 あれこれ質問してくる者達への、バリー大尉の「詳細は機密です」との一喝には大変助けられた。


「それにしても「特別な機体」感がハンパないっす!」


 機体形状が多少異なっている特務仕様機であったが、機体色は量産機同様の白と、パッと見では目立たないものである。

 しかしピコの機体は変形の都合上、硬化被膜が取れてしまう為影響の無い部分は白で、変形する部分は薄青色の、対象な迷彩模様のようになっていた。


「実際そうだから何とも言えません。」


 トーマスはそう言うが、ピコとてやりたくてやったわけではないのは分かって貰いたい。


(『魔力を練れるようになれば出来なくも無い

 にゃ。』)


 “私”がとんでも発言をする。

 曰く、“私”が表に出た時ほどの能力は発揮出来ないが、習熟すれば今の“わたし”程度にはなるとの事。


(「いつの間にか熟練にゃ?」)


 “わたし”の意思で機体を変形させられるようになってからさほど時間は経っていない。


(『んな訳あると思うにゃ?』)


 とてもでは無いが、まだまだ未熟だと言われる。


(『堕ちたとはいえ神に類する力を宿しているの

 にゃ。』)

 

 現時点でピコは一個大隊を軽くあしらう戦力を有している。

 これが、未熟故に僅かな力しか発揮できていないと言う。

 つまりそれだけ神類の力は強大なのだ。


(『天虎の巫女が器を手に入れれば、今の“わたし”

 じゃどう足掻いても勝てないにゃ。』)


 ああ…ミーコは無自覚に身体強化を使う程だ。

 意識して使えば、そりゃ強いだろう。


(だからといって、わたしがミーコを守るのは止めな

 いけどにゃ。)


 ん?


(「ちょっと待つにゃ。

 つまりポッド班は、魔力を使えるようになれば、わ

 たしと同じような事が出来るにゃ!?」)


 これは重大案件でなかろうか?

 メタモメタル製の機体に共通するならば、ケートス隊を始めとするエース戦闘機部隊の戦力も大幅アップである。


(『ポッド程大きな変化は見込め無いけど…。

 まあ、それなりにはにゃ。』)


 いくら変質・変形すると言っても物質である。

 小さい質量で体積を大きくすれば、当然脆くなるのだ。


(「兎に角、バリー大尉らと相談の上で報告。

 ポッド班は次の大規模作戦まで魔力を練る練習もす

 るにゃ。」)

 

 無意味に暴力を振り撒くつもりなど無いが、力はあるに越した事は無い。

 せめて現マルコシアス隊のメンバーは全員生きて、この戦争を終えたいものだ。


(『……気を付けるにゃ。

 力を付けても自分は一人にゃ。

 限界を見誤ると身を滅ぼすにゃ。』)


 “私”の嫌に実感の籠った言葉が、やけに頭に残った。

話題の変遷がやべぇ

(さらりと爆弾を寄越す悪魔ピコ)



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