05 奴隷
「赤の他人を信用なんて出来ない。パーティメンバーなんて誰が来ようが願い下げだ」
と、シクロは言ってパーティを組むことを拒絶した。
すると、デイモスの方から妥協案が提示される。
「それなら奴隷を買うといい。それも、隷属魔法で縛られた奴隷を、ね」
奴隷には、犯罪奴隷や借金奴隷など、様々な経緯で奴隷となったものが居る。
それらの中でもごく一部にのみ、隷属魔法という特殊な魔法で主人への絶対服従を強制される奴隷が存在する。
凶悪犯罪者や貴族に送られる献上品としての高級奴隷など、様々な理由で主人への絶対服従を必要とする一握りの奴隷が、隷属魔法を使うことで行動を縛られることになる。
つまり――デイモスが言うのは、その隷属魔法で服従する奴隷であれば信用出来るだろう、ということだった。
シクロも確かに、とこれには納得した。
結果――シクロはデイモスから奴隷商人への紹介状を貰うこととなった。
そして翌日、さっそくシクロは紹介された奴隷商人の店へと訪れていた。
「ようこそいらっしゃいました」
ヘコヘコする奴隷商人に、シクロはまずデイモスの紹介状を渡してから言う。
「ダンジョン攻略のメンバーとして奴隷を買いたい。隷属魔法で行動を縛れるヤツ限定でな」
「隷属魔法が可能な奴隷で、ダンジョン探索ですか……その条件ですと、人数は少なくなってしまいますな」
「いい。とりあえず全員見せてくれ」
「かしこまりました」
そのまま、奴隷商人の案内に従い、シクロは店の奥へと向かった。
その後、奴隷商人は順番に条件に合致する奴隷を紹介してきたが、誰一人としてシクロの納得行く奴隷は居なかった。
というのも、まず弱すぎる。
中には元Bランク冒険者、とかいう男も居たが、それでもシクロから見れば足元にも及ばない。
となると、ディープホール深層に向かうには育成の手間がかかることになる。
それを考えると、誰一人として良い条件の奴隷とは言えなかったのだ。
「いかがでしょうか?」
「……悪いが、条件を変える。ダンジョン探索に向かうのは変えないが、育成はこっちでやる。強さは問わないから、できるだけ従順で、扱いやすい奴隷を頼む」
「そうですか……」
シクロに言われ、奴隷商人も悩む様子を見せる。
「そもそも、冒険者以外で隷属魔法が条件となりますと、隷属魔法の拒否権が無い犯罪奴隷か、隷属魔法の受け入れを認めている、愛玩用の奴隷しかおりません。犯罪奴隷は従順とは言えませんし、愛玩用の奴隷はダンジョン探索までは受け入れないでしょう」
「そうか……」
「ただ……あまりオススメは出来ませんが、一人だけ」
躊躇うように奴隷商人は言う。
「身分奴隷というものが一人だけおりまして」
「身分奴隷?」
「生まれつき、あるいは後天的に奴隷としての身分しか持たない者です。奴隷同士の子どもであったり、そういう『職業スキル』を持ってしまったが故に奴隷落ちした者が該当しますな」
職業スキル、と聞いて、シクロは反応する。
「……そいつを連れてきてくれ」
「構いませんので?」
「いいから、早くしろ」
急かすようなシクロの言葉に、奴隷商人は慌てて奴隷を連れてくる。
そうして――シクロが待っていたところに連れてこられた奴隷は、一人の少女であった。
「これが、先ほど紹介しました身分奴隷の少女です。職業スキルが『邪教徒』であったが為に、国の法律で身分奴隷となった少女です」
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