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56 何者

「な、何故俺がヴァルキュリャが見えるか、ですか?」

 

 ゲイロルルは黙って俺を見ている。

 そんなの俺も知らねぇよ。

 答えは多分、ゴンドゥルと契約したからなんじゃね?

 でも、それは言っちゃいけないやつなんだよな?

 だから……

 

 

「じ、実は私も分からないのです……」

 

 

 か、観察されてる。

 取り調べってこんな感じなのかなぁっっ。

 一寸先には全部ばれそうだ。

 俺の目が泳いで、部屋の片隅に置かれた荷物袋に止まった。

 

 

「ただ……不思議な青い塊を手に入れてから、見えるようになった気がします。もしかすると、あの青い塊の影響(せい)かもしれません」

 

『見ても?』

 

「はい。今、出します」

 

 

 俺はゆっくり荷物袋に歩み寄り、青い塊を取り出した。

 魔剣と盾をアセウス、青い塊を俺が持っていたのが良かったか。

 ずいっと、ゲイロルルの方へ差し出す。

 不思議な塊なんだよなぁ。

 真っ暗闇の中だからか、手に持つとうっすらと発光しているように見える。

 うわっ、ゲイロルルが近寄ってきた。



『触れても?』


「はい、もちろん」



 ゲイロルルの右手がそっと乗せられると、青い塊の発光が収まったように見えた。

 いやいや、気のせいじゃん。

 この真っ暗闇で俺が見えてるのは、ゲイロルルの放つ光が照らしてるから。

 暗闇に慣れた目がうっすら感じてるだけだ。

 他に光なんて……。


 近くに来てゲイロルルの顔がはっきりと見えた。

 ガンバトルとはあんまり似てなかった! いぇすっ!!

 彫像のような美形という点は同じなんだけどさ。

 各パーツは大きいけれど、強く主張せず調和する、すっきりとした顔立ち。

 完璧かよ。

 銀色に輝く髪と色白の肌。

 美しさが厳かで月の女神様みたいだと思った。

 みとれていたみたいで、青い塊から手を放したゲイロルルと目が合って、あわあわする俺。


 

「は、ハイリザードマンを倒したらドロップしたのです。不思議な力を持っていて……何だか分かりますか?」


『見たことはないな』

 

 

 うっすら瞳が緑がかって光ったように見えた。

 不思議だよなぁ、黒は時おり緑を帯びて見える。

 そんな余計なことを思っているうちに、ゲイロルルは元居た場所へ戻っていた。

 青い塊の謎も分かれば一石二鳥と閃いたんだけど。

 そう上手くはいかないかぁ。

 ゲイロルルが再び黙り続けたから、俺は二つ目の答えを考え始めた。

 何故、俺がアセウスに隠れて一人で動いているか。

 なんでこの流れでそれを聞くんだよぉ……。



「えぇーと、二つ目のなんですけど、どうやら、ヴァルキュリャが見えるのは俺だけみたいなんです。だから、ヴァルキュリャ達に会って話を聞くのは俺一人で、あ、私一人でしようと思って……アセウスには隠しています」


『お前一人が知ってなんになる』


「も、もちろん、必要なことは方法を変えてアセウスに伝えますっ。知らせるつもりですっ。でもっ、知らなくていいことだってありますよね?」



 ゲイロルルは黙っている。

 なんだろ、この話、前もしたよな。

 誰にだっけ? ソグン? シグル?

 


「アセウス一人で背負うには、重い運命(こと)だって思いませんか? 俺は……私は少しでもそれを減らしたいんです。一緒にいるんだし、一緒に調べてるから、お、おこがましいかもしれないけど、肩代わり出来ることだってあるんじゃないかって。何の因果か、私にだけヴァルキュリャが見えるのなら、出来ることをしたいんです」



 この話をするといつも変な気分になる。

 焦るような、いたたまれないような、変な気分。

 ゲイロルルは少しも動かない。

 えぇと、三つ目、俺の中に何か混ざってるって?

 


「ただ、それだけのお節介な友人です。混ざってるってのも良く分かりません。両親は普通に普通の人間でしたし。普通の人間と違い複数混ざっているって、どういうことなのか、もう少し説明してもらわないとまるで分かりません」



 心当たり? めちゃめちゃあるだろ。

 考えを巡らせてみれば、有り過ぎてどれを言ってるのか迷うくらいだ。

 俺の中、イーヴル・コアは右手首に取り込んだし、

 ゴンドゥルだって力を使える契約を交わしてる。

 力の影響ってことなら、ソグンの腕鎖(ブレスレット)もしてるし、

 そこにシグルの髪の石も付いてる。

 魔剣とも血の契約をしてるし、

 なにより俺の中には前世の俺がいる。

 我ながらすげぇなとビビったが、どれもゲイロルルに話せたネタではなかった。

 どうしてもダメそうなら魔剣のことを話すか?

 それか、イーヴル・コアのことをソグンの(くだり)は隠して話すか……。



『説明は難しい。……私は知覚する、周囲にあるものを。そして判別していく、神、ヴァルキュリャ、人間、魔物……あれ(・・)とお前はどれとも違う、(にご)り混ざっている。異形(ばけもの)だ』

 

「あ、あれ(・・)って何スか」


『……《罪の責務》、寝ていただろう?』


「『あれ(・・)』、なんて……っ! 《罪の責務》《罪の責務》ってっ、そんな風に呼ばないでくださいっっ。そりゃ、そうなのかもしれないけどっ、一人の人間つかまえて、酷くないですか? 《罪の責務》はとっくに死んだんです。あいつは何も悪いことしてないし、むしろいい奴過ぎるくらいだしっ。アセウスってっっ……意味は同じだけど、あいつにはちゃんと、名前があるんだっっ」


『……《罪の責務(アセウス)》か』


「アセウスも同じって言うなら魔剣のせいじゃないですか? エイケン家に代々伝わる魔剣があるんです、アセウスを守る。オージンが赤子を守らせた剣です。当然アセウスのことは守護してますし、……俺も、血の契約をして加護を受けてます。オージンの魔剣、ご存知ですよね?!」


『……知っている』


「俺ごときがずーずーしいことだとは分かってますっ、けど、アセウスを守るためには……俺が足手まといにならないためには必要だったんです。俺と、私とアセウスとで思い当たることといったらそれくらいです。半神のあなた達が、あいつを化け物なんて……言わないでください……」



 あまり周囲には求めない。

 望まないことは見ない、聞かない、知らないでやり過ごす。

 そのつもりだった。

 求めると叶わなかった時に傷つくから。

 俺の処世術だ。

 だけど、気がついたら口に出ていた。

 アセウス(あいつ)をあれ、とか化け物、とか、聞き捨てならなくて。

 ほんと俺、どーしちゃったんだろ。


  

『……真実を知りたい、か』

 


 一瞬、ゲイロルルの光が薄れて、周囲が闇に包まれた。

 そんな気がした。

 そぉだ、俺は答えたぞ! 次はそっちのターンだよな?!

 

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