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異世界ライフが思っていたのとちょっと違う  作者: とんけ
第一章:始まる!?僕の異世界ライフ
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9. どれにしようかな

「うーん、ゴミ拾いに屋敷の掃除、それにカカシかー」


 翌朝、僕は冒険者ギルドにやってきていた。

 寝る前は悶々としていても、一晩寝ればすっきりする。今日は頑張って靴代と洋服代を稼ぐのだと、冒険者ギルドの依頼が掲示してある掲示板を眺めていた。


 どうやら左から右にいくにつれて依頼難易度が下がって行くように掲示してあるらしい。

 一番左はドラゴン討伐であった。これだけ紙の色が変色しているので、きっと随分前から依頼を達成できていないのだろう。そして、今僕が見ていたのが一番右側にある依頼であった。

 

 ゴミ拾い、屋敷の掃除、そしてカカシである。同じ青色の判子が押されているので、多分これがFランクの依頼なんだと思う。

 うん、ゴミ拾いと屋敷の掃除はわかるんだ。だけど、カカシってなんだよ。それ人に頼む仕事じゃないだろうと心の中で盛大にツッコンでしまったよ、流石にね。でも一日銅貨五枚だから、靴は買えるんだよね。二日やれば洋服も買える。立ってるだけでそれならわりといい仕事な気もする。他の二つは、ゴミ拾いは指定の袋にゴミをつめて一袋銅貨一枚で買い取り、屋敷の掃除は家主が留守中に掃除をするらしく五日間と期間が指定してあって銀貨五枚だ。確実に稼ぐには屋敷の掃除が一番儲かりそうである。


 あ、ちなみに銅貨が十枚で銀貨一枚の価値らしい。

 鉄銭、銅貨、銀貨、金貨と四種類の硬貨が使われているらしく、どれも十枚でより価値のある硬貨と交換できるようである。


 さて、どれにしようか。


「このカカシなんてお似合いなんじゃない?ぼーっと突っ立ってる位ならできるでしょ?」


 声のする方に顔を向けると、案の定テレサがふんぞり返ってそこにいた。

 近くにマリ―は見当たらない。どうやら今日はテレサ一人のようだ。


「なんだ、テレサ一人か」

「ちょっとそれはどういう意味よ。マリ―がいなきゃ私なんて無価値だとでもいうの?」

「冗談だよ。そっちが先にからかってきたんだろ?」

「フン、全くひとりで挙動不審にしてるから声をかけてあげたのに。でも、偉いわね。登録だけして制度だけ利用して逃げ出すもんだと思っていたわ」

「そんな酷いことしないよ」


 テレサの中の僕の評価が低すぎである。

 僕はそんな失業保険をもらうためだけに面接をするような汚い大人にはならないぞ。まぁ、そもそも失業保険がもらえるほど働いたこともないんだけどさ。一生懸命働いてきた人に失礼か。


「少しは見直してあげるわ」

「ところで、どうして今日は一人なの?」

「私たちだっていつも一緒ってわけじゃないのよ?今日は魔術の訓練教室があるから来たのよ」

「魔術の訓練教室?」

「そう。私はそこの先生なわけ」


 テレサが先生というのも驚きだが、訓練教室というのはとても興味がわく。


「訓練教室とかやってるんだ?」

「そうよ。銅貨五枚で受けれるわよ?ま、無一文のあなたには関係ないわね」

「無料じゃないのか」

「当たり前でしょう。じゃあ、私は行くわね。せいぜいカカシを頑張りなさい」


 そう言って、テレサは奥の部屋へと入っていった。

 訓練教室か。ちゃんと生活できるようになって、お金に余裕ができたら受けてみたいな。

 昨日の夜から魔術の自主練をしていたのだけれど、未だに一人では魔法が使えていなかった。あと少しでできそうなんだけど、なかなか難しい。


「じゃあ、本当にカカシやってみるか。それとついでにゴミ袋ももらっておこうかな」


 僕はカカシの依頼書とゴミ袋の依頼書を持って、受付へと向かった。

 昨日受付してくれた人がいたので同じ人のところに行くことにした。


 僕がやってくると、昨日と同じように受付嬢はぺこりと頭を下げた。


「おはようございます」

「おはようございます。あの、この依頼を受けたいんですけども」


 僕は掲示板からとってきた依頼書を受付に提出する。

 

「かしこまりました。それではこの書類を持って、ニコニコ農場まで行ってください」

 

 受付嬢から依頼書とはまた別の書類を受け取る。


「あ、あの、場所がわからないんですけど」

「ニコニコ農場は冒険者ギルドの横の大きな道を道なりにまっすぐ進んだところにありますよ」

「ありがとうございます」

「カカシの経験はありますか?」

「い、いえ、ないです」

「そうですか。それでしたらこのパンフレットを持っていってください」


 そう言って、受付嬢の人は受付の横にある本立てから一枚のパンフレットを取りだした。

 そしてそれをこちらに手渡してくれた。 


「これ、私が冒険者の方たちのために手作りしてるんですよ。本当は一つ銅貨一枚なんですけど、初めてということでプレゼントしますね」

「ぺルぺルのこれで安心カカシ講座...ですか」

「はい。あ、ぺルぺルっていうのは私の名前です。本当はこれを冒険者ギルドの公式パンフレットと紹介したいんですけど、まだ私が個人的に作ってるんですよ」

「そうなんですか」

「ええ。あとは、一角ウサギの安全な倒し方とか色々ありますよ」


 受付嬢のぺルぺルさんがにこにこしながら説明をしてくれる。昨日の受付けの時はクールな人だと思ったけど、どうもそんなことはないようだ。めちゃくちゃ喜々としながら話してくれている。


「お金に余裕ができるようになったら利用しますね」

「是非。あ、それを読んだ感想も今度聞かせてくださいね」

「わかりました」


 そう言って受付を去ろうとすると、あわててぺルぺルさんが声をかけてきた。


「あ、すみません。まだゴミ袋を渡していませんでした」


 僕もぺルぺルさんのパンフレット熱にやられてすっかり忘れていた。

 こうして僕はぺルぺルさんからゴミ袋を三枚ほどもらって、冒険者ギルドを後にした。 


 冒険者ギルドを出て、早速もらったパンフレットに目を通してみた。

 

『カカシのお仕事というのは、簡単なように見えて実は難しく奥が深い。その道を究めるのにはそうとうの努力が必要になってくるでしょう。千里の道も一歩からこのパンフレットを読んで一生懸命頑張りましょう。そもそもカカシが必要な――――』


 いやいや、カカシを究めたい人なんていないんじゃないかな?

 いかにカカシが世のため人のためになるかが三ページほど語られ、その後に具体的な仕事内容についての詳細が書かれていた。


『――――というわけである。具体的に何をするかというと空からやってくる鳥類を追い払うお仕事である。鳥類はカカシとの長年の戦いにより、立っているだけでは逃げて行かない。武器を持って積極的に追いはらおう』


 ということであった。

 なんだが仕事内容の割に前フリがとても長かったように思う。とはいえ、ところどろこに手書きのイラストも書かれていて、ものすごく一生懸命作りこまれたのが伝わってくる。ぺルぺルさんの真面目さが存分に伝わるパンフレットであった。

 

 でも、あれだな。

 武器を使って追い払おうってすごい不安になってくるんですけど。

 

 とりあえず宿に武器を取りに行こう。


 こうして僕の最初の任務が幕をあけようととしていた。はたして無事に終えることができるのだろうか。

 まぁ、とはいってもカカシだからなにも問題はなく終わるとも思うけどね。 

  

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