20. 魔剣使いとの死闘:その3
「じゃ、さくっと終わらしちゃいましょう。よっと!」
テレサが持っていた杖を軽く振る。すると、杖の先から信じられない熱量を持った火の玉が出現し、男に向かって高速で接近した。
「――――!?」
男も突然の魔法に反応ができなかったのか、魔法は見事に男に直撃した。
ドオオオオオオオオオン!!!!
まるで地獄の業火のように、ものすごい爆音を響かせながら辺り一面に広がった。
やっぱりテレサの魔法はとんでもない。ここまでの炎を作り出すなんてどんだけ魔力があったらできるのだろうか。僕の先ほどの粉塵爆発以上の現象を、テレサは自分の魔力のみで作り上げたのだった。
しかし......
「ま、こんなもんかしらね。全く楽勝ね」
「テレサ!油断しちゃだめだ。まだ多分倒せてないと思う」
「はぁ?この魔法を受けて生きてたら最早人間じゃないわよ」
テレサの言葉に反応したかのように、爆煙の中から男が飛び出してくる。
「正解だよ!私はただの人間じゃない!?」
「え!?」
男は高速でテレサの元へと接近する。
「テレサ!危ない!」
マリーが剣を抜き放ち、接近する男とぶつかりあう。
ガキーーーーーン!!!
まるで人間がぶつかり合ったとは思えないほどのもの凄い音と、衝撃が発生する。
「ほう。私の一撃を止めるとは......」
「く......なにこの人。強すぎる!!」
衝撃を見事に止めたマリ―だったが、次第に男がマリーを押し返していく。
「このままじゃまずい!」
マリーは一瞬で男から距離をとり、そして、すぐさま駆けだした。
右から一撃、左から一撃、その速度は視界に捉えるのも困難な神速の一撃だったが、男はその速度になんなく対応する。そして、その猛攻の隙を狙って、男はマリ―に蹴りを放った。
「きゃっ!!」
マリ―が男の一撃を受けて、ゴロゴロと草原を転がった。
「マリ―さん!!!」
僕はマリ―の元まで駆け出した。
「大丈夫ですか?」
僕はマリ―を抱き起こす。
「ええ、なんとか大丈夫です。しかし、あの男は一体何者なんですか?私達が今まで戦ってきたどんな魔物よりも強いです。こんな強敵は初めてです」
マリ―は冷や汗をかきながら立ち上がった。
「ちょっとどういうことよ。こんなやつ始めてよ。私の攻撃を受けてもびくともしないうえに、マリーの速度にも対応してくるなんて。どうなってるのよ!?」
テレサも困惑の声を上げる。
まさか二人をもってしても倒せないなんて。最初の魔剣と遭遇した時に思ったことは間違いじゃなかったのか。これはまずいかもしれない。
「ふふふ、いいですね。面白いですよ。本当に今日は良い日だった。待って損はなかった。やはり私の考えに間違いはなかったんだ」
男が手を広げて笑い始める。
衣服は全て燃え落ち、体も真っ黒になっている。しかし、その手に持つ剣だけは全く汚れておらず、青く仄かに光り輝いていた。
「ちょっとこいつどうなってるのよ。気持ち悪いんだけど」
「ミーシャ!もう一度助けを呼んできてくれ!」
「わ、わかりました!」
ミーシャは街の方へ振りかえり、走りだした。
しかし、男がもの凄い速度で移動し、ミーシャの前に立ちふさがった。
「――――!!そんな」
「今度は逃がしませんよ。もうお終いです」
男はにやりと笑いながらゆっくりとミーシャとの距離を詰めていく。
「馬鹿にしてるんじゃないわよ!私の魔法はまだまだあんなものじゃないんだから!」
テレサが杖を天に掲げる。
すると、ものすごい勢いで雷の雨が降りそそぐ。
バッチィィィイイイイイイ!!!
その全ての雷が男に直撃する。
「これでどうかしら!」
男は雷の雨を浴びながら、しかし、その歩みを止めなかった。
「ウソでしょ!?」
雷を浴びなら男がにやりと笑う。
そして、瞬時にテレサの元まで移動した。
「――――!?」
そして、そのまま拳で殴る。
「ぐふっ!!」
テレサは嗚咽を上げて地面に倒れ込んだ。
「ははははははははは。確かにアナタの魔法はもの凄い威力ですよ。ですが、残念ながら私には通用しませんね」
男は炎を浴び、雷を受け、その全身は最早真っ黒い消し墨のような姿になっているにも関わらず、まるで何事もなかったかのように笑いながらそう言った。
「く.....どうやったら倒せるっていうのよ。化け物め!」
「そうさ。私こそ真の化け物さ」
男がテレサを蹴飛ばす。
「きゃっ!!!」
テレサはごろごろと草原を転がり落ちた。
どうしたらいいんだ。
僕はあまりの理不尽さにただただ立ちつくしかなった。体にいくらダメージを与えても、倒せそうにない。どうやったら倒せるんだ?
あの時はどうやったら倒せてた?
僕は必死に最初の魔剣との遭遇した時のことを思い出す。あの時は確か......
「剣だ!!!こいつの剣を壊せば多分倒せるはず!みんなで剣を狙うんだ!」
「――――!?アナタ。やはり一度魔剣と遭遇していますね。しかし、わかったところでどうにかできるものではないですよ。既にアナタ達はボロボロじゃないですか」
確かにその通りだった。
しかし、どうしようもないわけではない。
僕はそっとマリーの耳元に話しかける。
「マリ―さん、僕がなんとか時間を稼ぎますから、テレサと自分自身を治療してください」
「わ、わかりました。でも、あんな化け物相手に時間を稼げるんですか?」
「大丈夫です。きっと、なんとか時間を稼いで見せますから」
「わかりました」
「じゃあ、僕が走りだしたら始めてくださいね」
そう言って、僕は、走り始めた。
「うおおおおおおおお!!!!」
既に魔法で体を強化していたため、体はバキバキだ。でも僕がなんとかしないといけない。その思いだけで、僕は男にタックルをかます。
男は避けずに僕のタックルを受けた。
タックルは直撃したにもかかわらず、しかし、男を一歩も動かすことができなかった。
「そんな体でどうするつもりなんですか?全然力がこもっていませんよ」
どんだけ力を込めても男の体はぴくりとも動かない。男の体だってテレサの魔法でボロボロだというのに、一体どこにこんな力があるというのだろう。
男はゆっくりと右腕を上げた。その手には剣を持っている。
「これで終わりにしましょう」
そう言って、男は振り上げた剣を僕に突き刺した。
魔剣が僕の体を突き抜けていく感触を感じた。
「「「タイチ(さん)!!!!」」」
テレサとマリ―とミーシャが僕の名前を叫ぶのが聞こえる。
ああ、まさかこんな所で終わってしまうなんて。あっけない異世界生活だったぁ。でも、心配してくれる人ができたのは嬉しいかもしれないな。
そんな風に思いながら目を閉じた。
貫かれた胸がものすごく熱くなっていくのを感じた。
「―――!?なんだ?これは?」
どんどんと薄れゆく意識の中、男が困惑の声をあげているのが聞こえてきた。
きっとテレサとマリ―が反撃したのだろう。二人を巻き添えにしなくてよかった。
死ぬのが僕一人でよか......た......
こうして僕の意識は真っ黒い海の中へと沈んでいったのであった。
まだ終わりません。
次回は遂に女神登場です!




