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異世界ライフが思っていたのとちょっと違う  作者: とんけ
第二章:奴隷と送る!?異世界ライフ
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18. 魔剣使いとの死闘:その1

 ミーシャとシルクハットの男が立ち止まる。


 しかし、立ち止まっただけでどちらも振りむこうとしない。僕は二人を振り向かせるためにさらに叫び続ける。


「ミーシャちゃん!こんな別れは嫌だよ!もう少し話しあいたいよ!事情をちゃんと話してくれたらもっと違う結末になるはずだよ!」


 シルクハットの男がポンと、ミーシャの肩に手を当てた。内容までは聞き取れないが、ミーシャと何やらぼそぼそと会話をしている。すると、ミーシャは荷物を置いて、振り返った。


 その表情はやはり悲痛の表情を浮かべている。


「これ以上付きまとうなら私があなたを殺しますよ」


 ミーシャが泣きそうな顔でそう呟く。


「そんな......ミーシャちゃんだって本当はこんなことしてくないでしょう?こんな逃げるように出て行ったらみんなも悲しむよ」

「うるさい」


 ミーシャちゃんが僕に向かって駆け出した。走りながら両腕を広げる。そして、腕の先からは鋭い爪が飛び出していた。


 そんな爪を僕に近づくなり思いっきり振りぬいた。


 僕はミーシャの一撃をかろうじて避ける。その際、洋服がミーシャの爪で引き裂かれた。


「ミーシャちゃん!やめてよ!戦いたいんじゃない。話しあいたいんだよ」

「うるさい!うるさい!うるさい!」


 容赦なく振り続ける腕を僕はなんとか避け続ける。


 本当に殺す気なら、僕がこんなに攻撃をよけられるとは思わない。やっぱりミーシャちゃんは離れたくないと思っているはずだ!僕はなんとかしてミーシャちゃんを助け出すと改めて決意する。


「少ししか一緒にいられてないけど、僕はもうミーシャちゃんのことを仲間だと思ってる。みんなだってそうだよ!」

「......そんなこと言わないでよ!」


 ミーシャちゃんの腕が止まる。そして、ぽろぽろと涙を流す。


「ミーシャちゃん......」

「私はみんなを裏切ってたんだよ。それなのにそんなこと言わないでよ。私は悪い奴なんだよ。今回のことは初めてじゃないんだ。だから、そんな優しい言葉をかけないでよ」


 そして号泣して、膝をついて泣き始めた。

 

 僕はそんなミーシャに近づいてそっと抱き寄せた。何を言うわけでもなく、ただただギュッと抱きしめた。言葉を発しなくても気持ちが伝わるようにぎゅっと抱きしめた。


 ミーシャも次第に涙がおさまってきた。


「大丈夫だからさ。街には騎士の人もいるし、事情を説明すればきっとなんとかなるよ」

「タイチさん......」


 なんとか落ち着いてくれた。


 後はシルクハットの男をなんとかできれば、この問題はハッピーエンドで幕を閉じることができる。そう思い、前に立っているだろうシルクハットの男の方へと顔を向けた。


 すると、そこにはもの凄い怒りの形相を浮かべた男が立っていた。


 人間が表情で表現できる感情の限界を超えた怒りをなんとか表現しようとした結果生まれたような、まるで同じ人間とは思えないほどのもの凄い恐ろしい形相であった。


「な......」


 僕はその怒りの形相に唖然とする。


 これがあの時と同じ奴隷商人か?最初に会った時は信頼できる人だと思ったのに。今日もあの時と同じようにびしっとしたスーツとシルクハットを被っており、格好は同じなはずだ。それなのに記憶の人物と同一人物とはとても思えなかった。


「せっかくいい感じで育っていたのに......」


 シルクハットの男がぼそりと話しはじめる。


「欲張るものじゃないね。私はいつも食べごろを逃してしまう。もっと旨くなるんじゃないか。もう少し待った方が美味しく食べれるんじゃないか。そんなことばかり考えて失敗してしまう」


 ゆっくりとこちらに歩き始めてきた。


 男からは異様な雰囲気を感じ始める。異世界に来てから磨かれた僕の危険予知センサーが全力で警戒の音を発し始めている。


「ま、待て!近づくな!」

「ど、どうしたんですか?」


 僕の声で異常に気付いたミーシャが後ろを振り返る。そして、僕と同じように男の異常さに気付き「な...」と口を開けて驚いている。


「もういいや。しょうがない。これ以上我慢はできない。もともと素材としては一流だ。最後の苦悩なんてトッピングにすぎない。もう食べてやる」

「これは一体......」


 ミーシャも全く事情がわからないといったような、戸惑った声を上げる。

 

 男はなおもゆっくりとこちらに近づいてくる。


 僕達は抱き合うのをやめ、すっと立ち上がった。


「これ以上近づくな。近づいたら攻撃するぞ!」

「ご主人様、止まってください。落ち着いて話しあいましょう」


 僕達の声で、シルクハットの男はすっと立ち止まる。 


「ああ、もういいんですよ。もうやめましょう。もうご主人様ごっこはおしまいです」

「え......」


 ミーシャは驚いた表情を浮かべている。


「それならここは見逃してくれないか。僕もお前のことを騎士につきだしたりはしないから」


 僕がそう言うと、シルクハットの男はふふふと笑う。


「それで互角の条件だと思っているんですか?わかっていませんね。ドラゴンの前で同じことを言ったとしたらそれが通ると思いますか?ドラゴンは人を餌だとしか思っていませんよ。それなのに見逃すから逃がしてほしいですって?ははは。傑作ですね」

「何がおかしいんだ。こっちは二人だぞ。戦ったらお前だって無事ですまないはずだ」


 僕の言葉にシルクハットの男はさらに笑う。


「せっかくたとえ話までしてあげたのに、全然理解していないんですね。私はね、あなた達と私をドラゴンと人に例えたんですよ。それはつまりは戦力としてもそれだけの差があって、私にとってはアナタ達は餌でしかないと言っているんですよ。そんな私に傷をつけられるとでも思っているんですか?本当に笑わせてくれますね」

  

 そう言うと、男は腰から剣を抜き放った。


「その剣は!?」


 男が抜き放った剣は禍々しい形状をしている。そして、どこか青白く光り輝いているように見えた。


「ん......?その反応は魔剣をみたことがあるんですか?いえ、そんなことはないはずですよね?魔剣を見て無事に生きて帰れる人間なんていないはずですから」


 やはり魔剣か。


 魔剣――――未だにどういった存在なのかはわかないが、どうやら人を凶暴で強靭な存在に変えてしまう力がある不思議な剣だ。形状は禍々しい形をしており、その姿は仄かに光り輝いている。一度スラム街で襲われた時も、まるで人間とは思えないような身体能力を発揮して、魔剣同士の戦いは最早神話のような激しいものであった。ヘルファイアがこの町を旅立って以降は全くその存在に触れることはなかった。話したら死んでしまう刻印が残されているし、誰にも話すことはできないんだけど。


 そんな存在がなぜ......


 魔剣の存在で胸が熱くなるような気がした。


「タイチさん......これは一体」


 ミーシャが心配そうに僕の顔を覗き込んだ。


 慌ててミーシャを追いかけてきたため、僕は剣も盾も持っていない。あるのは腰に付けた護身用の短剣だけだ。このまま二人で戦っても勝てる見こみはゼロに近いだろう。


「これはまずいかもしれない。僕がなんとか時間を稼ぐから、なんとか街まで逃げるんだ。それで冒険者ギルドに駆けこんで助けを求めてほしい」

「そんな。一人でここに残すなんてできませんよ」

「それじゃあ二人とも死ぬことになる。これが最善の方法なんだ。ミーシャなら素早いから早く助けを呼んでくることができる」

「わかりました」

 

 僕の必死な気持ちが通じたのか、ミーシャはこくりとうなずいてくれた。


「私が戻ってくるまで死なないでくださいね」

「うん、頑張るよ。僕があいつに攻撃するから、そしたら走って逃げてくれ」

「わかりました」


 僕達は集中してシルクハットの男と対峙する。


「作戦は立て終わりましたか?私は紳士ですからね。ちゃんと待ってあげますよ。その方が楽しいですからね。ではいきま――――」

「今だ!!!」


 僕の掛け声のもと、ミーシャは街の方へ振りかえって走り始めた。僕はシルクハットの男に向かって砂を撒き散らした。こういう時の必殺スーパ眼つぶしである。


「何をするかと思えば、こんなめつぶし私には全くききませんよ。それとね。私から逃げられるなんて思わない方がいいですよ」


 砂煙のなかから男が落ち着いた声でそう言った。


「わかってるよ。だからもちろんそれだけじゃ終わらないよ。着火!粉塵爆発!!」

「――――!?」


 僕がまきちらした砂ぼこりに火の魔法が着火して、盛大な爆発が巻き起こった。


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