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異世界ライフが思っていたのとちょっと違う  作者: とんけ
第二章:奴隷と送る!?異世界ライフ
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12. 真昼間の決闘:その1

 昨夜の特訓は深夜まで続いた。激しいしごきのような特訓で体はボロボロになったものの、マリーの回復魔法で体は絶好調な状態で終わった。しかし、回復魔法では疲労感や眠気などは消えないようで、その日は不安な気持ちに支配されることなくぐっすりと眠りにつくことができた。


 そして、決闘当日である。


 ぱちりと目が覚める。いつもは目が覚めてもぎりぎりまで目を開けずにベッドのぬくもりを感じるのだが、今日は寝起きと同時に目を開いた。


 あ、やばい。不安で死にそうだ......


 眠る前は気持ちよく寝れたのに、朝起きると突然やってくる不安。起きる直前の夢もなんだかぼこぼこにされている夢だったような気がする。寝起きから動機が半端ない。このままベッドで寝ていたい。起きたくない。僕はいつものように必死で目を閉じるも、最早眠りの世界に戻ることはできない。


「しょうがない。なるようになるか」


 僕は意を決して起きることにするのだった。


 起きて準備を始めれば不安な気持ちはどんどんと薄れていく。短時間ではあるけれど、やれることは全部やったと思う。それに、僕にはちょっとした作戦もある。準備運動をしてから革製の鎧をつける。あっという間に決闘の準備は終了した。


「さぁ、行きますか!」


 僕は意を決して、部屋を出た。


 リビングに行くと、そこには既にテレサとマリ―、そしてミーシャの姿があった。僕がやってくると、ミーシャはにっこりと笑う。


「準備はばっちりですね!」

「うん、ばっちりだよ。ミーシャの期待にこたえられるように、今日は絶対に勝って見せるよ」


 僕はミーシャの言葉にそう応えた。それはミーシャに向かって言うというよりは、自分自身を鼓舞する意味合いが多分に込められた言葉であった。


「私がみっちりしごいてあげたんだから絶対勝ちなさいよ」

「大丈夫ですよ。きっと勝てます」


 マリ―とテレサがそんな僕の心情を察したのかはわからないが、勇気づけることばをくれた。僕の不安はそんな三人の心遣いのおかげで、さらに薄れていくのを感じた。


 本当に良い人達に巡り合えたものだ。


「じゃあ、行きますか!」


 こうして、僕達は冒険者Aとの決闘のため、冒険者ギルドへ向けて出発したのだった。




 冒険者ギルドに入ると、いつもはにぎわっている酒場や掲示板の前に人っこ一人いなかった。早朝でもこんなに人がいないのは見たことがない。そんな中、唯一ぺルぺルだけが、一人でそわそわとしていた。


「ぺルぺルさん?」 


 僕が声をかけると、ぺルぺルがぱっとこちらをむいて小走りでやってきた。受け付け以外でこんなに近づいたのが初めてで、僕は一瞬びくりとしてしまう。美人が急に近づいてきたら男なら一おっふは堅いでしょう?そんな僕の様子に気づいたのかテレサが背中を小突いてきた。


「タイチさん、本当に大丈夫ですか?闘技場は既に異様な盛り上がりですよ!?」

「だ、大丈夫です、よ」


 心配そうにそう呟くぺルぺルに僕はにっこりと笑って応えたかったが、異様な盛り上がりという言葉に緊張感がぐっと増し、なんともなさけない返答になってしまう。


 しかし、異様な盛り上がりってなんだよ。僕、人前苦手なんだけど。もっと匿名性の高いところで、キーボードをかたかたするような戦いがしたい。まぁ、仮にそんな戦いがあったとしても多分ぼろぼろになるんだろうけどさ。


「本当に大丈夫なんですか?なんだか震えてませんか?」

「武者震いってやつですよ」


 僕の返答が頼りなかったのか、ぺルぺルはさらに心配そうにそう呟いた。


「ぺルぺル、心配しなくても大丈夫よ。昨日私達がみっちり鍛えてあげたから」

「ご主人様は勝ちますから、大丈夫ですよ!」


 テレサとミーシャが僕の代わりにそう言うと、ぺルぺルは少し安心した表情になる。ぺルぺルはさらにマリーの方へと顔を向けて話し始める。


「もしも大変なことが起こったらすぐに助けてあげてくださいね」

「はい。私の回復魔法ですぐに助けますから」

「お願いしますね」


 マリーの言葉を受けて、ようやくぺルぺルは安堵の表情を浮かべた。


 こんなにも心配してもらえるとは思っておらず、僕はちょっぴり嬉しくなる。いや、かなり嬉しかった。やっぱりこつこつと関係を積み上げていけば仲良くなれるものなんですね。毎日二回は顔を合わせてたから、意識されちゃったりするのかもしれないな。モテル男はつらいぜ。


「数少ない読者に怪我でもされたら大変ですからね」


 ぺルぺルはぽつりとつぶやいた。


 ......世の中そんなに甘くない。もしも顔を合わせるだけで好きになってもらえるならば、世の中の受付嬢は一体何人の人と恋に落ちなければいけないのか。一瞬邪な考えを持ってしまっただけに、ショックは大きい。


「さて、それでは本当に行くんですね?」


 ぺルぺルがこちらに向きなおり、真面目な顔でそう尋ねる。


 僕はそんなぺルぺルの表情をしっかりと見つめ返し、噛まないようにゆっくりと、しかしはっきりとした口調で応える。


「はい。行きます!」

「わかりました。それでは行きましょう。対戦相手のシスコさんはもうすでに待っています」

「わかりました」


 僕はぺルぺルの後にしたがって歩き始める。


 受付の横にある道をまっすぐと進む。これから行く場所は、以前テレサが魔法の訓練教室を開いていると言っていたギルド内にある闘技場だ。僕はまだ足を踏み入れたことがなく、どういった場所かはわからない。向かう先が未知であると、それだけで不安な気持ちになってしまう。訓練もしたし、策も考えた。でも本当にうまくいくのだろうか。


 不安な気持ちがどんどん膨らんでいく。歩く足も重くなっていく。そんな時、ふっと僕の背中に手が当てられた。


「大丈夫ですよ。ご主人様ならきっと勝てますから」


 ミーシャがそう言って、にっこりと笑いかける。

 

 僕は気持ちがすっと軽くなるのを感じた。まだ少ししか一緒に過ごしていないけど、ミーシャは既に僕の大事な仲間だ。僕はミーシャに感謝した。


「もしもご主人様が死ぬようなかことがあったら私も死にますから」


 僕は苦笑する。どうやらまだまだ過激な思想は抜けていないようだ。これからゆっくりと考え方を柔軟にしていけるようにしないとな。でも、今日はこう言っておこう。

 

 僕は過激なことを言うミーシャに向かってにっこりと笑った。


「じゃあ、絶対負けられないな!」

「はい!」


 ミーシャも僕に満面の笑顔を向けた。


 こうして僕は冒険者Aが待つ闘技場の中へと足を踏み入れたのだった。

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