表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/57

9.古都の怪異

 ご愛読ありがとうございます。

 今回、前半はホッコリ回です。

 もっとも、後半は向こうから勝手にトラブルがやって来るという回でもあります。

 主人公、イザ戦場へ。



 子供が生まれたら野次馬がやって来るだろうから、敷地内の客殿も拡張中。

 元々は勅使と氏子総代の休憩所だけれど、今後はそれ以外の野次馬を離れの屋敷に入れないでこの客殿で応接しようという腹です。

 従来の客殿に加えて、お伴をつれた大名の宿泊くらいできる規模のものを5棟新築。

 どうせカネはあるんだ、豪勢な奴で行こう。


 能舞台もデカイの造って英雄劇を上演しようと言い出した爺ちゃんは黙らせて、普通に巫女舞にしておきなさいと説教。能舞台は造ったよ。立派な奴。英雄劇は絶対ダメです。


 そして、十六夜の産後の養生に向けて温泉も強引に掘り出しています。

 王都内だと相当深く掘らないとダメだけれど、そこは強力な魔法があれば簡単なこと。

 湯治用の専用建屋も建築しました。

 ただし、硫黄の匂いを嗅ぎつけられてしまって、家族専用にしようとしていたのがあっさり露見してしまい。お蔭で湯治が出来る神社というプランに修正することに。

 出雲私宅用、貴族来客用、一般参拝客用と湯場の建屋を分けるという面倒なことに。


 御能を見て、温泉入って、豪華客殿で大宴会を挙行する貴族の皆さんが想像できてしまう。


 ヤバイ、これだと余計に人が集まってしまうから、今度は警備要員やら使用人も大増員が必要に。

 警備要員は氏子総代の家から各10人ほど従軍経験者を融通して貰う。

 素人さんや練度不足の兵士では困るのです。

 使用人に関しては氏子衆から選抜して。

 最終的には警備要員で150人。それ以外の使用人でも80人程度まで増員して。

 これは神社のお仕事と私的な出雲家の仕事を両方兼ねての総計です。

 湯治場が操業始めると、参拝客の整理が大変そうです。

 貴族と平民が敷地内で混じるとなると、事故が怖いです。

 参道から拝殿まで別ルートに分けてあるけれど、警備要員しっかりしておかないと。

 そうなると、彼らの住居も必要だから長屋も造って。


 出産に向けては産婆も複数雇い入れていて、普段は家政婦兼務をしてもらう。

 十六夜の身近の世話には黒奈と里奈姉妹。

 警備隊の指揮官には、上杉家の家臣団から優秀な奴をもらっています。


 で、イザとなれば権限を乱用して40人の対策室の要員を増援に使える。

 日常的にレキュアとシェイラは離れで寝泊まりするから夜間でも警備戦力としては不足なし。


 温泉開業に伴って、門前町の氏子衆の宿坊や飯屋には、カネを貸し付けて設備の改修もさせています。参拝客を受け入れきれないと、混乱の元ですからね。


 ついでに、近辺の道路に花壇を整理させるために町の世話役にカネを出した。


 そうしたら、何故か対抗意識でも持ったのか、上野の寛長寺の偉い坊さんがやって来て寺の周辺も整備してくれだと。


 寛長寺だと王家の菩提寺だから、俺なんか頼らずともお布施には困らないだろうと思う。


 話を聞いてみると、厳格な仏教寺院だから宗旨的に歌舞音曲などは禁止。

 巫女舞など論外になる。

 そして、酒飲んで騒がれるのも王家の霊廟としては問題。

 静かで厳格な寺院というのが、本来なら王家の菩提寺として相応しい。


 しかし、それだと周辺の皆さんが困るそうだ。

 町が静かで閑古鳥では商売にならぬと。

 寺としては王家にそんな相談はできない。

 町が閑古鳥で商売に困っているなんて、政権の経済運営批判と思われかねない。

 そこで上手くやっている俺に泣きついたと。


 愛しい妻の出産準備をしていたら、何故か話しがドンドン大事になって行く。

 ああ、便利なポケットを持っている未来の猫ロボットさん助けて。


 要は寺そのもので騒ぐようなことは駄目。

 だけれど、周辺は賑わっていないと駄目だと。

 ううっ、面倒くさい。


 で、近所に花壇というのは宗旨的にも悪くないアイデアなんだそうです。

 むしろ、花を霊廟に捧げるのは良い供養になると。


 そういうことか、寺院を仏壇だと見立てて、周辺を花で飾り立てるのは望ましいと。

 なんか、華やかでいいかも。

 いかんな前田様の影響かな、何かウズウズしてしまうじゃないか。


 話は簡単で寺の周りで花見して、どんちゃん騒ぎ出来るようにすればいい。

 そういう事なら大騒ぎの大好きな風流人に心当たりはある。

 暇人にデッカイ花見の宴会場でも考えてもらえば良いじゃないか。

 俺はカネ出してオシマイ。

 そうしよう。

 それがいい。

 と、ご都合主義万歳の結論で、その場は後日再会をお約束しました。


 翌日の教練で傾奇者様に話を持ち掛けたら、さらに翌日の夕方呼び出されて指定の場所に行ったら何とビックリ、細川幽斎様、三条西実枝様、九条稙通様と言った偉い方と直江兼次様と傾奇者が待っていました。

 ううっ文官系の偉い人は会ったことが無いです。


「王都を千年後にも語り継がれる花の都にするか。

 竜殺し殿も風流であったとはな。

 面白い話故に我々も力を貸そう。

 なに、心配はいらんお主は勧進帳の筆頭に一金10億と記入しておけば、他の大名共が競ってカネを出す。

 具体的な事柄は前田と直江にやらせておけば良い」


「細川の大殿様がそう仰ってくださるなら安心です。肩の荷が下ります」

 ああ、助かった。話が早くていいや。10億くらいなら簡単な話です。


 魔法で花の咲く時期を早めたり、長引かせたりできるのだそうです。

 梅というのは寒い時期にでも咲く奴もあるから、楽しむのは春だけではない。

 各種取り混ぜて植えておくなら、季節に応じて様々な楽しみ方ができるのだそうです。

 おおっ、流石人生を楽しむ達人は色々ご存知です。

 辺りを梅街道や梅庭園にでもするんでしょうかね。

 桜もいいけど、梅も優雅でいいや。

 鶯来てくれるかな。ホーホケキョと。


 勧進帳はあっという間に貴族間を飛び交ったそうで、50億チョイという大金が集まったそうな。


 寛長寺の偉いさんがお礼に来ました。

「あれだけの皆様のご尽力を賜れば、寺町も賑わいましょう。此度は誠にありがたく存じます」

 俺って結構偉い人に褒められているかな。

 うん、自分を褒めてあげよう。


 義父ちゃんも同席していたんだけれど、お礼に貰った漢詩の屏風を見て青い顔。

「このような寺宝をよろしいのですか」と。


「相応しい場所に」と坊さんは笑っていた。


 その翌日には、前田教官と直江様が別宮の宝物殿に収められたそれを、時間を忘れてじっと見つめていたとか。


 弘法大師が最澄上人に宛てた漢詩だそうで、紛れもなく国宝級の逸品だそうだ。

 それって、凄すぎないか?


 前田教官が吹聴したのか。


 学校帰りに、お忍びで王女様と公爵姫様が参拝されていました。

 寺院では女人禁制の場合があって、弘法大師の真筆を見る機会は多くはないそうです。

 王家の宝物庫も厳重なので気軽に入れるものでは無いそうな。

 あ、身内にも厳しいのか。

 ウチの別宮の宝物殿は開放的でいいのかとチト不安。

「竜殺しに喧嘩売るような盗賊などいる筈がありませんわ」

 王女様にまた笑われてしまった。


 温泉に入れないかと言われたけれど、建屋が工事中で露天風呂状態。

 男ならそれでも構わないだろうけれど、未婚の姫様には如何かと。

 妻の産後用に考えていたから10ヶ月後に出来てれば十分です。

 まだ、慌てる必要なし。


 落成の折には公式に御披露目しますので、ご招待しますよ。

 客殿で歌会でもする予定です。

 お姫様方には、甘酒とお汁粉の宴会でどうでしょうかね。

「あら、それは」

 とニッコ、ニッコでしたとさ。




 出産準備から思わぬ展開に巻き込まれつつ。


 緊急即応部隊を率いる立場でありながら学校に通うのも変なものだけれど、どうせ学校でやることは軍事教練とあまり変わらない。


 そこで、10人単位で隊員を学校に呼び出して、訓練場でお互いのレベルを確認することをやってみた。


 王宮お抱えの魔法師。

 それもイザと言うときに備えた緊急派遣部隊の精鋭です。どんなスキルなのか知っておかないとお互いに困る。


 手っ取り早くティラノを召喚して隊員全員に1対1で勝負して貰った。

 流石に精鋭の皆さんでした。

 武器を持たせずに、魔石も使わないで自身の魔力による魔法だけという縛りでも皆さん楽勝です。


 武器を持たせて、ティラノ2体相手でも危なげなく勝利する。

 3体だと少しキツイかなという感じ。そろそろ隊員の魔力が持たないみたいだ。


 児雷也、霧隠才蔵、猿飛佐助と言う幹部連中だと、5~6体くらいでもなんとかなる。


 これがレキュアとシェイラだと、それぞれ30体くらいでも、まとめて一気に殲滅させる。

 異能だとされる所以ですね。確かに段違いの能力です。

 精鋭ともいえる魔法師連中の10倍の戦闘力。


 モンスター・ハンターだと、ティラノに1対1で勝負を挑むことはしません。

 A級ハンターでも、必ずチーム編成して挑む。

 カネを稼ぐためにやるから、無謀なことに命を懸けることなど絶対にしないのが高位のハンターです。


 これが今回の対策室だと、イザと言うときには無謀なことでもしないといけない。

 先行しておいて拠点を確保して、友軍が来るまで時間を稼ぐとか。

 味方が撤退するまでの時間稼ぎとか。

 無理を承知でもやらないといけない羽目になることが想定される。


 互いの限界を知っておかないと、任務の遂行上困ることになる。

 無理をやらせて失敗されて戦線に穴が空いて、味方が全滅なんてシャレにならない。

 この位の無理なら何とかなるという線を、冷静に知っておかないといけない。


 逆に、俺の戦力も情報提供しておかないといけない。

 40人の部隊ではあるけれど、俺が参戦するのなら実際には数千人規模の部隊になると。


 2匹目のドラゴンを倒してから魔力が上がって、埴輪軍団の様相が変わっている。

 今なら25m級の大型埴輪を千体規模で召喚できる。

 従来の15m級と3m級を混在させると4千体規模の埴輪軍団が構成できる。

 3m級だけに絞るなら、5千体を超えるレベルになる。


 そこに異能の二人と幹部連中の従魔も加えるなら相当な軍団になる。

 俺が参戦するのなら40人の少数精鋭という考え方だと、前提が間違ってしまう。


 魔法攻撃ができる3m級埴輪と隊員を戦闘させると、隊員3人掛りでなんとか埴輪1体を撃破できる。

 幹部連中だと1人でも埴輪1体を倒せるけれど、埴輪2体相手だと歯が立たない。

 レキュアとシェイラでは、1人で埴輪10体位はイケル。


 でも、埴輪の場合は受けたダメージが痛みとして俺に跳ね返ってくるから、一気に10体やられると俺の痛みの感覚が結構ヤバイ感じになる。

 ティラノなら、いくらやられても反動はなくて痛くない。強力な埴輪ならではの欠点だろう。



 王宮魔法師の精鋭ならティラノ3体相手でも平気。

 幹部になりたければ2倍の6体くらい楽勝でなければならない。

 竜殺しの側室になりたければ、30体くらい一瞬で葬らなければならない。

 筆頭になりたければティラノごときは無限に召喚出来て当たり前と。


 学校の生徒の見ている前でやっていましたから、今後はこれが基準になってしまいました。

 腕利きの魔法師だと主張したいのなら、ティラノ3体を瞬殺しろよと。

 それが出来るなら王宮のお抱えになれる資格がある。

 ハンターをやっているような魔法師ではこれは到底無理です。

 俺を除くクラスメイトなら50人総がかりでもティラノ1体に蹂躙されるでしょう。


 こうした客観的な基準が出来て、本多様と柳生様は喜んでいたようです。

 分かり易いと。

 魔法師の実力というのは、魔法を使えない人間には評価しにくい。

 どういった戦況でどのくらいの魔法師戦力を投入すればいいのか、これは案外判断しにくかった。それぞれのスキルの評価軸を持てなかったから。

 その点、ティラノ何体分の戦力というのは、尺度として分かり易いというのですね。



 学校では生きたティラノの実物を見たことがある生徒はいない。

 魔物の森のサブ・ボスクラスのヤバイ相手です。

 森で不意に遭遇したら食われて終わり。

 入念に準備して狩りにいくのは組織化した高位ハンター集団だけ。

 貴族のボンボンでは、まず目にする機会は無い。

 ましてや女の子では。


 今日初めて目にしたティラノは重量感ある巨体で地響きを立てながら、耳を塞ぎたくなるような咆哮を上げて魔法師に襲い掛かる。

 それも結構な速さで、巨大で鋭い牙をむき出しで。


 レキュアやシェイラ相手用にティラノを各30体召喚したら、その群れとしての地響きと咆哮の凄まじさたるや、野次馬していた新入生だと泣き出してしまうくらいのものです。

 高学年の生徒ですら絶句する。武芸科だろうが魔法科だろうが絶対に勝てないと理解してしまう。


 前田利益様でさえ、俺にもやらせろとは言わない。ただ、黙って見ている。

 人間の武芸の限界を超えている存在なのです。


 そうしたモンスターを平然と駆逐する魔法師集団。

 その集団にあってお頭と呼ばれるのが、同じ学校の生徒である俺。


 いままで気軽に側室にしろと言っていたというのが、如何に愚かであったことかとようやくと姫様方は気が付いたようです。


 住んでいる世界が違う。

 舞台で見た演劇の世界と、リアルな魔物の住まう世界は全く違うものだと。



 お頭就任以降、魔法の授業時間は部下の魔法師1人に講師としてクラスメイトの指導をさせて。


 他に10名ほど連れて来て、部隊のフォーメーションについて検討する時間にしてしまいました。


 40人の部隊を、俺、児雷也、才蔵、佐助を小隊長とする各10名の小隊に編成。

 この小隊単位で戦闘する場合の訓練です。


 モンスターが何らかの理由で大量に暴走し始めた場合の対処。

 ワイバーンが要人を攫って逃げた場合の対処。

 重要拠点に強襲を掛けられた場合の防衛。

 基本的には対策室なんだから対策を考えないといけません、これがお仕事。


 連日、ワイバーンやティラノを大量召喚して、セッセと狩りの練習。

 あるいは、ワイバーンに要人を攫われた場合に無傷で奪還する訓練とか。

 これは一瞬で殺すのが一番みたいだけれど、人質を負傷させないようにするにはコツが必要です。

 後は土魔法を使って短時間で掘りと防壁、簡単なシェルターを構築する訓練とか。


 たまに、町奉行や火盗改めのお役人さん達が様子を見に来ています。

 有事の際には共同作戦もするので、どんな様子なのか視察しているのでしょうかね。

 本物のモンスターを目の当たりにして、慣れておくということもあるのかな。




 魔法ではなく、純粋に武芸の時間は相変わらず前田教官の登場です。

 教官殿は早速に児雷也、才蔵、佐助を相手に模擬仕合。

 魔法無しだと小隊長連中では教官殿相手には3回に1回くらいしか勝てない。

 というのか、俺だと教官殿相手には全敗だから、小隊長連中は魔法無しでも一流の武芸者というべきか。

 流石は王宮お抱えの精鋭部隊というところでしょう。


 でも、俺は相変わらずノックダウンなのです。

 うーん、魔法無しだとただのガキ武者。


 介抱役の膝枕担当はレキュアとシェイラに替わりました。

「黒奈は出雲の若奥様のお世話係。私達はお頭専属秘書官。

 だから、お頭のお世話は私達のお役目。これはご公儀の命令でもある」


 うん、正論だから文句付けられないよな。

 それに、異様に強力な二人に面と向かって喧嘩売るのは無理だ。

 大人の女性の膝枕は、もう最高であります。はい。


 着々と出産準備は進んで、部隊の訓練も順調に進んで。

 日々、順風満帆と言える状況かな。


 そうこうしているうちに、十六夜のお腹は何となくふっくらしてきて。

 二人して、早く来い!来い!赤ん坊と言う気分。



 でも、別口からも早く来いと言う声が掛って。


 柳生様に呼び出されました。


「古都に夜な夜な怪異が起きておる。部隊の半数を率いて、これの対策に当たれ」


 古都とは200年ほど前まで王都だった場所です。

 盆地で人口増加に対応しきれないので、現在の王都に遷都。

 遷都以降は、古都と呼ばれている訳です。


 現在は代官に板倉様が在番しているけれど、魔法師は5人くらい。

 本格的な事件が起きると対処仕切れないのだとか。

 そこで、実戦部隊の出番と。

 王都を空ける訳にはいかないから、児雷也と半数の隊員は王都に残せと柳生様。

 俺と佐助の小隊連れて、古都へ出動することにしましょうか。


 古都の代官屋敷までは瞬間移動できる術者がいたので、あっという間に送ってもらいました。


 板倉様に早速お目通り。


「半月ほど前から夜な夜な雷と共に雷獣が現れて、暴れては消える、の繰り返しなのだ。

 雷が落ちると家の数件は、焼け焦げてしまってな。

 雷獣めを追いかけても、逃げ足が速くて追いきれぬ。

 そして、雷をまともに食らうと大怪我だ。

 古都代官配下の魔法師は、もう1人しか満足に動けぬ。

 そこでお主に雷獣を退治して欲しい」


 成程、こりゃ大変だ。

 面倒な化け物が跳梁しているのか。

 魔法師を簡単に潰せるような奴だと、こちらも舐めて掛るとヤバイ。


 敵の出現地点を古都守護隊員に案内して貰っての古都巡り。

 出てくる場所には特に共通性は無いそうです。

 毎日出てくるのではなくて、お休みする日もあるとか。

 出て来る時には、突然ゴロゴロと雷が落ちて来て、気が付くとソコにいる。

 ひと暴れすると、消えていなくなるそうな。

 なんだか召喚獣みたいな登場の仕方ですね。


 ひとまず警備隊員に聞いてみるとしますか。


「その雷獣とやらは、襲撃してきて人を餌として食らうのですか?」


「いえ、今の所はひと暴れしては消えてしまいます」


「最近どこかの山の中で、獣が大量に襲われているような形跡は?」


「特に報告はありません」


「餌を食わないモンスターとなると術者の魔力を食う召喚獣臭いけれど。

 古都にはお抱え以外の召喚術師とかいるのでしょうか?」


「古い陰陽師の家系の者が数名いるのは確認できております。

 ただし、お抱えにするほどの力量は認められておりません」


「ひょっとして、腕試しをしているとか?」


「ゴブリンを召喚できる程度の者共ですが」


「・・・まあ、お抱えは無理ですね。

 他に怪しい術者が古都に流れて来ていることはありませんか?」


「旅の行者などは古寺来訪をするので市中には多いのです。

 しかし、それほど強力な魔力を持つものなら、ある程度わかるはずです。

 胡乱な者がおれば、寺院から通報もありましょうし」


「うーん、ひとまず古都内に配下の者を分散して警戒してみましょうか。

 でも、結構広い場所ですよねえ。どうやって分散させようかな。」


「警備兵の詰所が市内に8ヶ所あります。交通の要所に配置されておりますので、そちらをお使いください」


「それで行きましょう。佐助さん、2人ずつ兵を配置してしまってください。

 俺達は代官所で待機ですかね。


 ・・・ねえ、強力な召喚獣を使役するのなら、術者の魔力は感じられると思うけれどさ。

 雷さんが現れたら俺が援軍に出るとして、レキュアとシェイラは術式が発動している気配を探知してくれないかな?

 概ねの方向が掴めたら、佐助と一緒に術者の追跡してくれないか」


「術者を倒さない限り召喚獣を倒しても意味はないと?」


「なんとなくね。餌を食らわないモンスターなんて、おかしいでしょう」


「確かに普通なら餌にしたいと襲ってきますな」

 佐助さん鋭い。そうでしょ、そうでしょ。


「うん、餌としないのなら、なんで人間が集まっている場所に雷獣が来るのかわからない。

 なんか変でしょう?」


「騒ぎを起こしたい何者かが操っていると、お頭はお疑いなのですね?」


「自信はないけれどね、モンスター自体が暴れて楽しいだけなのかも」


「古都で騒ぎを起こす意味ですな」


「何だろう、一体・・・」


 向こうからやって来るのを待つしかないですねえ・・・。


 さあて、次回は戦争!

 お楽しみに。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ