10.古都の騒乱
ご愛読ありがとうございます。
今回は主人公が主人公として振舞うバトル回です。
もっとも、12才の子供では大軍勢を動かすのは無理だという限界を露呈する物語でもあります。最強だからといっても、数千の軍勢を自由自在に動かすのは無理です。
あくまで最終局面で最高戦力だということを証明して貰います。
代官屋敷に戻って、早めに豪華絢爛な食事をご馳走になりました。
お代官様って、予算あるんだねえ。
古都の優雅なメシは彩鮮やかで、味付けはサッパリで上品なもの。
いくらでも食べられそうだ。
あれ、どうせ死ぬだろうから最後位は良い思いさせようとかいう配慮ってことはないでしょうね?
死んでなんてあげないよ。
メシ食って、仮眠して、夜が更けるのを待つ。
お月様を眺めながらのんびり待つ。
シェイラに膝枕して貰ってスリスリしながら、ひたすら待つ。
早く来いよな!とお月様に文句を言ったら罰が当たった。
ホントに来た!
古都の南の方角で、ピカリと光って、ゴロゴロっと。
「俺は現地へ向かう、ここで気配を探っておいてね」
「はい、お頭様。お気をつけて」
「お頭様、ご存分に」
「委細承知」
さっと埴輪軍団を召喚して、落雷したあたりに急行です。
最初から埴輪をばら撒いておこうとしたら、警備隊から巨大な埴輪が夜中にウロついていると市中が大混乱するから止めてくれと言われて諦めたんだよね。
まあ、3mのデッカイのが町中をウロウロしていたら、そりゃ怖いに違いない。
百鬼夜行だと大騒ぎ間違いないよね。
現地らしき場所に到着したら、ウチの隊員が既に4人程到着していました。
ただし、隊員の2名ほど雷撃の直撃を食らって重傷。他の2名が治療に当たっている最中。
何が起きた?
現地に到着していた警備兵に話を聞いたところでは、落雷があったのは詰所から5分ほどの場所。
2名の隊員が空を飛んで先に急行したそうだ。
走って来た警備隊が到着した時には、既にウチの2名は倒れていた。
程なくして、別の詰所からウチの隊員2名が飛来してきて、負傷者の救護を始めたところだったと。
肝心の雷獣については、警備兵は見ていないそうだ。
落雷を見て咄嗟に飛び出したウチの隊員を倒して、すぐさま逃げ出したということなのだろうか?
その晩はそのまま隊員たちに警戒を続けさせたけれと、再度の襲撃は無いまま終了。
重傷者は治癒魔法で急速に回復していて、翌日には復帰できるでしょう。
朝方には隊員に仮眠を取らせた。
で、レキュアとシェイラは何か掴めたか?
半分正解で、古都の北西方面から何やら胡乱な気配がしたと。
佐助が探索に飛び出したけれど、すぐに気配が消えてしまって諦めたそうだ。
明るくなってから、調査した方良いか。
召喚術を使う奴の仕業には間違いないようだ。
恐らく隊員2名をあっと言う間に倒して、2名の援軍と俺の応援を察知して逃げたんでしょう。あるいは術者が佐助の気配を感じたか。
十分に強力な召喚獣で、使役している奴は実にカンが鋭くて逃げ足が速い。
夜が明けてから、瞬間移動して代官を同席の上で柳生様と報告兼ねて作戦会議。
雷獣は召喚獣であろうこと。
そして、2名の隊員を瞬時に倒す程度には強い。
召喚術者は、昨晩は北西方面から操っていたこと。
最終的には召喚術者を倒さないと意味はない。
手段としては、
大規模な山狩りでもしてみるか。
地道に怪しい奴の情報を集めて正体を探るか。
やれることは全部やろうということで、代官所の手勢で北西方面の山狩り。
同時に、柳生様配下の公儀隠密衆を投入して怪しい奴の探索も実行する。
対策室は40名全員体制で臨む、2名1組ではなく、4名1組編成で夜間警戒にあたる。
考えられることはこの程度ですかね。
そんな打ち合わせをしている時に、佐助が“ご注進!”と瞬間移動で登場。
昨晩の魔力の残滓を探っていた所、大江山付近で複数のワイバーンやティラノの魔石を使った大規模な術式を行った跡らしい現場を発見。人が生活していたらしい形跡もある。
周囲には人家はないものの、少し離れたところに神社があったので事情を聞いたところ、半月前位から修験道者が3~4人くらいウロついているとのこと。不気味な連中なので宮司は声もかけていないので正体は不明だと。
この報告を受けて、柳生様は古都隣接各藩からも藩兵を動員しての大規模な山狩り実施を決定。
佐助には現場まで隠密衆の探索犬を連れていくように下命。そのまま隠密忍び衆を即時投入。
事態は一気に動いて行く。
山狩りの動員準備中に隠密配下の忍び衆が探索した所によれば、賊は丹波方面の山中で逃亡中。
2名と1名に分かれて別行動をしている可能性大。
なお、1名で行動している奴は、追手の忍びを5名ほど殺害しており相当な使い手。
また、忍び衆の追手が掛ってからは、古都市中での雷獣騒動は沈静化。
召喚術者が逃亡者である可能性が高まった。
この報告で、麓付近を兵士で固めて対策室と忍び衆で山中に突入して捕縛という作戦方針へ。
まず最初に、主要な街道や山道は代官により厳重な監視下に置いておく必要があったので、対策室の隊員を分散させて街道筋の封鎖を支援した。
関所の強行突破をさせない為には、相応の警戒が必要だった。
そして、周辺諸藩と代官の動員には時間が掛ってしまって、本格的な包囲網の構築には10日間必要だった。
この間には忍び衆による不審者追尾を継続。
瞬間移動するような術者がいなかったのは幸いしている。
忍び衆は決して無理に攻撃するなと厳命されており、ひたすら追尾に専念した。
街道筋に加えて主要な山道を押さえられていまって、連中は獣道を伝ってひたすら逃亡手段を探していたようだ。
途中からは食糧不足で行動力も低下しているらしいという忍からの報告も。
山鳥や兎を捕ったりして何とか食いつないでいるらしいけれど、追尾を警戒しながらだと煙を上げられない。ゆっくり火を使って調理することができないから、生食なのではないだろうか。調味料なんて使い切ったら補給できない筈だし、味付けもなにもないだろう。
じわりじわりと締め付けるというのも戦場の習いなのか。
お代官様と警備兵の皆さんは、こうした展開を嬉々として楽しんでいるように見える。
イライラして待っているのは、俺だけみたいだ。
本格的な戦陣となると森での殲滅戦だけだし、まだまだ戦場慣れしていないのかもしれない。
待機している時は必ずレキュアかシェイラが横についていてくれる。
空き時間の時などは、俺は子供だなと思ってしまう。
大人の女性である二人がいてくれると、いつの間にか俺は甘えている。
二人が俺を落ち着けようとして甘えさせているという事なんだろうけれど、正直有り難いと思う。森の殲滅戦の時には十六夜に逢いたくて、寂しくて仕方が無かった。
部下を持つ身分になってしまった以上、勝手に俺が暴走しては周りの人間にどれだけ迷惑がかかるかわからない。ましてや、俺自身が最大戦力という戦場なのだし。
全体の戦略が決まったら、自分の部隊の役割に徹する。
それが前線部隊の指揮官の務め。
俺の思うようにいかずにイライラしたり、むしゃくしゃしたら、自分達を頼りなさいという大人の女性は本当に支えになっている。
精霊か女神かと思えるような人間離れした美しさ。
俺を支えようと細かい心配りを見せてくれる優しさ。
それでいて戦闘局面には無類の強さもある。
感謝しないといけない人達だと心底思えた。
部下としてではなく女性としての愛情が湧いて、彼女達を順番にお手付きにしてしまいました。
異界の天女を思わせる美しい髪と顔立ち。
大人の成熟した丸みを帯びた肉体は、北方系の出自だけあって非常に豊満。
どうにも溺れてしまう女性達です。
ずっと二人を大切にしたいと思う。
側室扱いなんていらないとは言うけれど、ケジメに帰ったら祝言はしっかりしょうか。
包囲兵4千人の動員に10日間。
女にうつつを抜かしやがってと思われていたのか。
ドンと落ち着いて構えていると思われていたのか。
周囲の目はわからないけれど、我慢の時間はようやく終了してくれた。
山麓付近の封鎖は完全に終了。
敵の潜伏地点は相当絞り込まれていて、埴輪部隊でも上空から位置が確認できています。
後は対策室部隊で包囲して、捕らえるだけ。
出来れば殺さずに捕えろとは、柳生様からの御下知です。
面倒な召喚獣を使って包囲網を突破されそうなら、仕留めても止む無しということではあるけれど。
敵は二手にわかれていて、2人組と単独行動の者。
単独行動の奴は相当に手練れということらしいので、俺の小隊で担当。
2人組の方は児雷也、才蔵、佐助各小隊にお任せとします。
隠密部隊が後方でフォローにあたります。
俺の小隊と言っても、500体の埴輪部隊付きだから大部隊。
払暁から作戦開始の法螺が鳴り響いて、いざ出陣です。
敵にも法螺は聞こえているので、当然ながら抵抗してくるはず。
頭上から埴輪部隊に包囲された単独行動の男は修験道の行者姿で、相当に身なりはくたびれ果てている。
逃げられないと悟った行者は、15cmくらいの魔石を持ち出して何者かを召喚せんとはかる。
召喚されてきたのは、頭が3個ある黒い大きな犬。10m位ありそう。
もう一つ魔石を取り出して、召喚したのは頭が2個の黒犬でやはり同じようなサイズ。
雷獣を召喚していたから伝説の鵺みたいなものを想像していたけれど、実際には頭が多い犬のモンスターだった。
3m級埴輪が3首犬に飛びかかる。
同時に5体ほど飛びかかったのが正解だったのか。
正面に回った埴輪3体が矛で頭を牽制している間に、横と後ろから2体の埴輪が矛を突き立てる。
後ろから背骨を切り裂いて、横からは心臓あたりをザクリと刺す。
防御力は高くないようで、案外あっさりと背骨を折られて身動きできなくなる3首犬。
動けなくなったら、3個の首を切り落とされて絶命。
この間に正面にいた埴輪の2体が敵の雷撃食らった挙句に噛みつかれて少なからぬダメージ・・・というよりも瀕死の状態です。
これだと隊員2名が瞬殺食らうのも当然か。彼らが生きてて良かった。
埴輪の受けたダメージが俺に返って来て、肩から心臓あたりに激痛・・・。
この痛みは治癒魔法が効かないから困る。
物理的には俺は怪我をしないのだけれど、痛みの感覚だけが来るのですよ。
ううっ、痛いよう。
残る2首犬にも5体の埴輪が飛びかかり、こちらは正面から二つの首の間に矛を叩き込まれて一撃で絶命。
首の間から心臓が近かったのだろうか、派手に血を吹きだしながら絶命した。
魔犬を討たれた行者は、ウッと唸って倒れてしまう。
俺の術と同様で、召喚獣の受けた傷の痛みが術者に返ってしまうのかもしれない。
首を刎ねられて、心臓を刺されたら、その痛みで気を失ってもおかしくないだろう。
俺だって、正直めちゃくちゃ痛い。
心の臓が止まりそうというか、息が苦しい。目眩がして頭がガンガン。
倒れそうなのを我慢するので精一杯な感じ。
向こうさんの場合、単純に魔力を使い過ぎて、倒れた可能性もあるけれど。
いずれにせよ、これで部下に行者を縛り上げて拘束しておけと命令して。
残りの二人組の方に援軍に行く。
こんなのが相手じゃ、苦戦しちゃうんだろう。
多数の首から複数の魔法なんて、嫌すぎる敵だもの。
二人組もやはり召喚獣を使役していた。
1体は、体の前半が鳥で、後半は猫だろうか?不思議な魔物を召喚している。
もう1体不思議な奴がいて、獅子と山羊の顔がついている2首の魔物で、尻尾にはヘビがくっ付いている。
なんだろうか、今日は不思議なものを見る。
鳥頭と獅子頭は火炎を放つ。
山羊頭は雷撃を放つ。
そして、尻尾のヘビは毒らしきイヤな臭いの液体を撒き散らしている。
相手をしている小隊長達は、遠巻きにして火炎、雷撃、氷槍を放って牽制していた。
児雷也は、心底嫌そうな顔で。
才蔵は、メンドクサイという顔で。
佐助は、何だこれ?と不思議そうな顔で。
俺も、正直面倒だと思う。
まだ、痛みは引いていないし。追加のダメージを受けたら泣きそうな気がする。
とはいえ、古都を騒がしていた妙な化け物の正体は見たこと無い、不思議なモンスターだったということらしい。
どうしようか考えてみたら、術者そのものは弱そうだと気が付いた。
相当に疲れている顔をしている。体つきは武人という印象はない。
うん、インチキしてしまおう。
埴輪の雷撃を術者が掌に乗せている魔石に集中させてみる。
見事魔石に命中して、魔石は砕け散る。
自身の魔力を上回る威力の魔法を行使している時に魔力源がなくなる。
そうなると、自身の体内の魔力が一気に消耗してしまう。
これで術者は意識を失って昏倒。
召喚されていた魔物は魔法が解けて消えて行く。
ああ、やれやれという表情を一様に浮かべる小隊長達。
あんなの相手にしていられないよ。
だから、相手にしませんでした。
今日はこれ以上痛いのは勘弁して欲しい・・・。
それに、こちらの使命は下手人の捕縛ですからね。
下手人さえ捕らえてしまえば、召喚獣なんて関係ないしさ。
良いじゃないか、皆で幸せになろうよ。
折角の古都だもの、おいしい物食べてさ。
お土産買って帰ろうよ。
十六夜のお土産何が良いかな?
韜晦している間に、下手人は縛り上げられていて。
3人揃えて古都代官の板倉様に差し出してしまえば、これでこの騒動もオシマイだ。
「野郎ども、勝鬨だ!!」
「えいえい、おー」
埴輪は喋らないからなあ、40人だけだと迫力がイマイチで。
と、思っていたら麓の方からも聞こえてきました。
山にこだまして、結構な音量になっています。
おお、雰囲気出ているじゃないか。
痛みなんてすっ飛んでいきそうな気分になれる。
ここで颯爽と下手人を差し出すといいカンジで幕引きだろう。
ふふん、野郎ども行くぜい!凱旋だ!
“おおーっ!”って、皆さん良いノリですね。
板倉様に3人を引き渡して、魔犬の死体も引き渡してあげて。
一応、古都を騒がしていた魔物らしいものを退治したという証拠を、古都の皆さんに見せないとお代官様としては示しがつかないだろうし。
うん、メデタシ、メデタシ。
さあ、勝利の宴の時間だ。
・・・でもね。
板倉様の顔色がドンドン悪くなるの。
冷や汗かいてるよ、板倉様。
「どうかなさいましたか?」って、思わず聞いちゃいました。
「出雲殿は伴天連をご存知ですかな?」
「俺は開国主様の社の婿っすよ。伴天連なんて知りません。」
「・・・そうでしたな。
いえ、この者共が身に付けているのは“くるす”と言いましてな。
ご禁制の伴天連の証です」
「えっと、こいつらが騒ぎを起こしていたのは、要するに伴天連の反乱ですか?」
「仔細に調べねばなりますまい。良からぬ企みであるのは間違いありますまいが」
うーん、勝った筈だけれど、全然終わった感じがしないじゃないか。
むしろ、嫌な予感ビンビン。
見たことのないような魔物だったものなあ。
あれは伴天連の使う魔物なのか。
鳥頭と猫。獅子と山羊にヘビ。
あんなのがドンドン出てきてしまうのかなあ。
憂鬱だ。
アレ相手だと埴輪に結構なダメージを受けた。お蔭で俺にも深刻なダメージが来てしまった。あんなのが沢山で押し寄せて来ると、斃すことは出来ても相当なダメージを食らうことは間違いない。戦場で卒倒するようだと流石にヤバイなあ・・・。
顔に出ていたかな。
レキュアとシェイラが、横に来て柔らかな胸に俺を抱きしめてくれます。
うん、ありがとう。あったかい。
冷静になれた。本当に助かる、こういう局面では特に。
板倉様が王宮と連絡を取り合って、
下手人は王宮で取り調べるから身柄を至急送致しろ、
古都では騒動が終わったことを示すために、魔犬の死体を引きまわし、出雲を筆頭にして凱旋行進をしろ、というような御下知になったみたい。
まあ、少なくても古都内では戦勝状態にしておけということらしいです。
確かに、状況として古都はひとまず平和に戻った筈です。
庶民には安心しておいてもらいましょう。
板倉様は先触れをだして、昼から凱旋だと古都市中に周知させていきます。
そして、俺が対策室部隊を率いて先頭で騎馬行進。
俺の横にはレキュアとシェイラが控えていて、庶民の目を引きます。
「あれが竜殺しだぞ!」
「まだ子供じゃないか」
「でも、綺麗なねーちゃんを従えているぞ」
「水色の髪と燃えるような髪の女だと」
「・・・乳もデカイな」
「英雄だと側室も勝手自由だな」
「あんなガキにゃ勿体ない女だな」
対策室部隊の後ろには、荷車を6台ほど無理やり繋げた馬車が続きます。
「なんじゃ、あれは」
「なんと大きい黒犬だ」
「首が余計に幾つもついてるぞ」
「あの魔物が市中で騒ぎをおこしたのか」
「とんでもない奴だ」
「アレを竜殺しが倒したのか」
「あんな子供が、アレを殺すのか」
「何と凄まじいものだな」
「竜殺し様、万歳!」
ばんざーい!
ばんざーい!
ばんざーい!
うんうん、ニッコニッコ、スマイルスマイル、庶民の歓呼に応えつつ。
どうせガキには不似合い女達を連れてますよーだ。
ふん、好き勝手言ってろ。
レキュアとシェイラの気持ち良い感触や、あの時の甘い声は俺だけが知っているのさ、お前らにゃ手が届かない女達なのさ、ザマーミロ。
馬上で行進しながら、ガキ大将そのままの事を考えていました。
当然ながらその晩は、どんちゃん騒ぎの祝勝会!
で、こうした祝勝会は三日三晩するものだろうと思いきや。
翌朝、柳生様から“さっさと帰って来い。王都をいつまで空けておく気だ”と言われたです。
あれ?俺って非常勤参与で室長は児雷也じゃなかったのか。
釈然とせん。
お土産も買ってないぞ、買い物の時間なんて全然なかったしさ。
人使い荒くないか。
ぶー。ぶー。
愚痴ってたら板倉様が“此度は大変にお世話になりました、土産なら後日お社にお届けいたしますから”と有り難いお言葉。
お代官様って良い人だ。
俺で良ければ困ったことがあったらいつでも呼んでくださいね!!っと。
瞬間移動で王都に帰還。
柳生様に戦闘報告を口頭でしておいたら、“報告書も早く出せよ”と言われました。
部下に押し付けよう、そうしよう。
例の魔犬の死体も引き渡し。
上位ドラゴンには遥かに及ばないながらも、ワイバーンやティラノなんかとは全く比べものにならない強力な魔物です。
なにしろ、魔法的な攻撃をして来ます。
小隊長連中でも負けることは無いけれど、下手に正面からゴリ押しすると怪我の一つくらいするはず。
褒美に何が欲しいかと聞いてくれたので、これ幸い。
魔犬の代金はいらない、その代わりにレキュアとシェイラを王宮お抱え魔法師の立場ではなくて、俺個人の所有にして欲しいと無茶なお願いをしてみた。
横にいた二人は涙浮かべていた。
これで認められなきゃ、二人は大暴れして王宮も無事じゃないかもね。
久しぶりに家に帰って、十六夜の顔を見て。
思わず懐かしさと愛おしさに抱きしめた。
お腹がかなり大きくなってきている。
大分、ふっくらして来た。
むふふ、いい傾向だ。
でも、こうなると同衾するのは無理かな。
割と若い出産だから、今から無理させないのが良いのかな。
「はい、そろそろ無理をしない方が良いとお産婆さん達も」
寂しいような、嬉しいような。
「今度こそは何が何でも守るからね、十六夜・・・」
キスして、髪をナデナデくらいは良いよね。
さて、そうなると夜伽をどうするという話になるけれど。
レキュアとシェイラをお手付きにしたことは正直に話しました。
十六夜は“約束を守ってくれるのなら・・・”と。
レキュアとシェイラが日替わり交代で夜のお務め役になりました。
黒奈が微妙な顔しているけれど、君を側室にする約束はしてないよな。
ってか、本格的に十六夜の世話を頼むよ、おい。それがキミの本業なんだからさ。
翌朝の瓦版
「王宮よりの公布
・妖魔/魔物対策室を魔物追討組に改組。
・組頭に出雲貴志を任命。
・古都の魔物退治の褒賞として、出雲に王宮女性魔法師2名を下賜。
以上」
むう、何故自分の身の上の出来事を瓦版で知るのだろうか?
理不尽だ、納得いかん。
そりゃ最初から対策室の旗印が竜だったから、俺をイメージしているのは確かだけれどさ。
大人の貫目って話は、どこに行ったのさ。
お約束とばかりに迎えの馬車が来て王城へ連行。
柳生様曰く、
妖魔/魔物対策室と名乗るには、いささか数が少ない。総合対策をするには近隣諸藩の大名まで動員せざるを得ないのが現実だった。
そこで、少数精鋭の部隊は魔物退治の戦闘局面での切り札という扱いに変更する。
部隊長の実績としては、出雲で申し分なしという評価。
魔犬からは90cm程の大型魔石が採取されている。上位ドラゴンに比べると小さいけれど、通常のモンスターとは比べものならないことも事実だった。
この売却額を考えると財務卿の顔色が真っ青。
扱いを持て余している異形の女で済むのなら、サッサとくれてしまえと叫んだとか。
・・・ここまでは、わかる話。
でも、続きがあった。
いよいよ、きな臭くなって来ます。
本格的な戦争の始まりの序曲というあたりでしょうか。
次回の第11話は本格的な戦争の前準備に入る話になります。




