表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/57

44.博多迎撃戦

 ご愛読ありがとうございます。


 さて、いよいよ博多に侵攻して来た敵の主力部隊。

 それを迎え撃つ大魔法師軍団。

 鬼の宝玉と共にレキュア無双の大活躍回です。


 浦賀水道でポルトガル軍が敗走していた頃。


 侵攻部隊の主力28隻は博多上陸作戦を敢行せんとしていた。


 彼らはディエゴと大環との交渉結果を知らないままで、準備が整った段階で問答無用の上陸作戦を開始していた。


 魔法による通信も江戸湾にいるディエゴと博多湾にいるインド総督のアフォンソ・デ・アルブケルケと通信するには、余りにも遠すぎたのである。


 対して、大環側では国内の中継地点を経由して、江戸湾を強襲して来た艦隊が敗走したことは博多守備部隊にも知らされている。


 アルフォンソは宿願であった大環攻略に対して、28隻のガレオン船に無理やり3万3千人ほどの上陸部隊を乗せて進撃してきた。


 この魔法が使える世界であっても、魔法袋は高価で貴重だ。

 普通の軍隊であればほとんど使えない。


 しかし、今回の作戦は別だった。

 アルフォンソは惜しげもなく予算を投入して、魔法師を大量に招集して魔法袋を作戦につぎ込ませている。


 彼らは敵地までの食糧や水には全く苦労せずにここまでやってきている。

 食い物と水に全く困らずに余裕で快適な船旅を満喫してきたポルトガル侵攻部隊は、従って極めて意気軒高でやる気満々で士気は高かった。


 ポルトガル人にして見れば、アフリカ、南アメリカ、インド、華帝国と連戦連勝で土地を侵略し、富を簒奪し、そこに人がいれば自分達の都合のいい下僕にしてきた。


 だのに、大環だけは自分達を完全に下に見ている。


 偉大なる教王の司令に従わず。

 偉大なる敬虔王の要求を無視して。


 全く意味が無い神を有り難がって崇めて、自分達の天にまします父の教えを受け入れない。


 挙句にオランダやオロシアとは友好関係を結びたがる癖に、ポルトガルを無視している。

 極東方面の責任者であるアルフォンソとしては、現在の大環王国は腸が煮えくり返るほどに憎いのである。


 しかし、それも今日で終わる。


 自らが率いてきた精鋭3万3千を以って、この辺境の地を蹂躙して正しい神の教えで満たしてやろう。

 それに噂に聞く黄金の国という、その鉱山を自らの掌中に収めてやる。


 邪竜使いという魔王の存在は気にはなるが、それとて王女が召喚した勇者が味方にはいるのだ。


 生憎と勇者6人は仲たがいして、3人の少女は北方に去った。しかし、そのうちに困って合流して来るに違いない。


 こちらには少年組が残っているのだ。大戦を前に逃げ出すような少女よりも余程頼りになりそうだ。


 アルフォンソのやる気は兵士達にも十分に伝わっていて、戦意旺盛で誠に頼もしい状態だ。


 このまま一気に上陸して、敵を蹴散らして、まずは九州を手に入れてやろうではないか。

 ディエゴが敗走するとは思いもしないままに、アルフォンソは上陸を発令した。


 手筈としては、まず搭載している大砲で敵の守備拠点を叩く。


 敵の抵抗拠点を叩いたら、船を寄せて兵員を上陸させる。


 鉄砲と槍、弓。

 そして搭載している大砲は車輪を着けて牽引して進撃を支える。


 これで今までは上手く行っていたのだ。

 大環でも大砲を使うが、威力ならポルトガルの方が上だ。

 兵員と鉄砲の数では劣るとしても、大砲に石や釘を詰めて発射してしまえば数の優位など簡単に覆せる。


 鉄砲なら100m程の距離で威力は減じる。

 しかし、ポルトガルの大砲なら1km圏内で威力を発揮できる。

 少々の数のハンデがあろうとも、それを恐れる必要などありはしない。


 それに今回は本国から精鋭の魔法師も200人を動員している。

 正直、これだけの戦力でも十分過ぎる位のものだ。



「そうれ、行けっ者ども!

 大環を蹂躙せよ。この地を我らポルトガルの偉大なる敬虔王に献上しようではないか。

 教王様もそれをお望みだ。

 勇敢なる勇士諸君、皆の武勇を示す時だ!」


 大量のガレオン船を横づけできるような岸壁など多くは無い。

 だから水深を竿で探りつつ、座礁しない程度の位置からボートを出して、兵員を浜辺に上陸させるしかない。


 少数でチマチマと上陸するものなら、大軍に囲まれてしまう。やるのなら大勢を短期間に卸さないと駄目だ。


 当然ながら一度に全ての兵をボートに乗せて上陸させられる訳でもない。

 何度もボートは往復する必要がある。


 その間は艦砲射撃で敵を近寄らせなければいい。


 その筈だったのだが、干満の差が大きい場所なのか?


 水が引いたような跡が残っている湿った砂浜が3km近くも続いている。


 船から降りた兵士達が、鉄砲を担いで歩くのにひどく難渋する羽目になっている。足が水を吸った砂に沈んでしまう・・・。


 それに砂浜と言っても、所々は岩場だから足場が悪い。


 それが大砲を降ろそうとするなら、大騒ぎだった。


 水気を吸っている砂に大砲の細い車輪は簡単に沈み込んでしまう。


 岩場を乗り越えようとするのは、非常な労働力を必要としてしまう。


 大勢で必死になって引いて、押して。こればかりは自分達の命が懸っているのだから、懸命にならざるを得ない。


 幸いと言うべきか。


 こうした潮が引いたらしき場所は3km以上あったから、大環側の大砲は届かない。


 魔法の攻撃もこの距離では、届かないか、届いてもさしたる威力など無い筈だ。


 征服しに来たのだから苦労するのは当然というべきだ。


 簡単にできるのなら、とっくにやっている。


 アルフォンソはイライラしながらも、兵士達を督促しつつ敵を警戒していた。


 大環側では陸地のかなり遠い場所で、防衛陣地を構築している。


 海上での戦闘は不利と見て、ポルトガル勢を上陸させた後から大軍で囲もうという腹に違いないとアルフォンソは睨んでいる。


 大軍との遭遇戦ともなれば、大砲は欠かせない。


 だから、アルフォンソは早々に切り札を切った。


 魔法師を投入して、大砲の揚陸を支援させることにしたのだ。


 地面の砂が水を吸って緩んでいるのなら、魔法で固めてしまえばいい。


 あるいは大砲を宙に浮かせてしまっても構わない。


 とにかく大砲を陸にあげさせろ!と、魔法師達に命令を下したのである。







 大環側では、それをじっと見つめていた。


 出来るだけ多くの敵兵士を船から降ろしたい。


 さあ、早く降ろせ、ドンドンと降ろせ。


 九州方面軍の司令官に任命された井伊直政は、早く来いと焦れていた。


 博多方面には、黒田、有馬、鍋島以下兵力10万の筈だったのだが、28隻の主力部隊は一カ所にまとまって侵攻してきているのは早々に把握されていた。


 こうなると、博多以外への襲撃の可能性は低い。

 だったら、俺達にも戦をやらせろと、細川や島津が博多に移動してきたのである。


 結局の所、10万を予定していた兵力は、九州方面だけではなく中国方面からの援軍まで加わって12万以上の規模に膨れ上がっている。


 各大名家では富士の演習場でしごかれた精鋭の魔法師集団がいる。


 今回の合戦に向けて魔法師は相当部分が動員されているが、隠居状態だったような魔法師連中が最後のお勤めだと大挙して志願兵に押しかけていた。


 予定では1,200~1,500人程度の魔法師を投入する予定であった所が、いつの間にか2,000以上の魔法師が集まっていた。


 250才を超えるような老人であるとか、研究職の若手といった面子が志願していたのである。


 老人達としては、華々しく戦って死んでいきたいという望み。

 畳の上で安楽に死んでいくなどクソくらえ!

 全盛期に戦場を駆けた血の滾る思いが忘れられないのだ。

 若き日の恐れなど知らなかった、あの日々が。

 戦場を駆け巡り、名声と地位と富を求めたあの黄金にも等しい日々。

 戦乱の時代は過ぎ去り、牙を抜かれた獣のように朽ちて死ぬのを待つばかり。-そう思っていた所に、ポルトガルの祖国大環への侵略という暴挙だった。

 このような仕儀など、何故見過ごして置けようか。

 老人達は死に場所を求めて、三々五々全国から集まって来たのであった。



 若手の研究職の連中は、一度くらいは実戦を経験しておきたかったのだ。

 国内での戦乱の時代は終わった。

 恐らくはこの状態は続く。

 それ自体は悪いことではない。しかし、魔法師が実戦を知らずに研究室の中だけで物事を考えていていいのか?

 最近は若く優秀な人材がドンドン世に出て来ている。彼らは実戦を通じて強くなった。

 出雲伯や与楽子爵には、高貴な血など流れてはいない。

 しかし、彼らは底辺から魔物と戦い続けることで、最強の地位を獲得したのだ。

 理屈も大切だ。それは間違いない。

 しかし、物事は理屈だけではない。実戦に裏打ちされた技術ではないとダメだ。

 現実に通用する技術こそが本物なのだ。

 理不尽とも思える強さを持つ若者達を見て、研究職の者達も実戦の場に赴いた。




 富士の演習場で理不尽なまでにしごかれ抜いた魔法師。


 あるは死に場所を求めて来た老人達。


 実戦の空気を知りに来た研究者達。


 彼らは今現在、驚愕していた。


 呆れて言葉が出ない。


 実の所、3kmにも及ぶ干潟を作り出しているのはレキュアだった。


 広大なエリアに対して、彼女は極めて強力無比な神の権能とさえ言えるような力を振るっているのである。


 たった一人で湾内の海水を3km近く後退させ得る凶悪とも言える魔法。


 その正体はリューシャから託された宝玉である。


 青鬼と赤鬼を懲らしめて、彼らが献上して来た水満玉と水引玉。


 今回の奇跡にも似た力は、水引玉による効果である。


 リューシャが江戸湾側に回った事で、博多戦には最初から加わることはあり得なくなった。


 そこで魔法学校の件ですっかり意気投合したレキュアに、宝玉は託されたのである。


 お互いにお互いの力量を知っているからこそ、リューシャはレキュアに宝玉を託した。


 水魔法を使わせたらレキュアに匹敵する存在などいない。


 レキュアに宝玉を託すなら、途轍もない荒業が出来る筈だ―リューシャは宝玉を利用した戦術を提案して、家康に採用されていたのだ。


 水引玉を使って干潟を作り出して、そこに敵をおびき寄せる。


 足場が弱い所に引きつけておいて、今度は一気に水満玉で短時間の内に満潮にしてしまう。


 船から降りて鉄砲や剣や槍を抱えている兵士達は相当な重量を抱えている。


 そうした連中がいきなり満潮の水中に叩き込まれたらどうなるか?


 兵士が溺死するだろう。


 それに火薬が濡れてしまえば使い物にはならない。


 幸運にも生き残った兵士がいても、火薬が無いなら多勢に無勢だ。それは脅威ではなく、手柄を与えてくれる都合のいい相手でしかない。


 敵の魔法師が邪魔をしに出て来ても神楽耶からの情報だと精々が200人程度。こちらは当初1,000人規模の魔法師を投入する計画だった。だから敵の魔法師など怖くもなんともない。


 実際に九十九里浜で事前に実験をしてみた所、とんでもない範囲で相当強力な力を発揮できると確認できていた。


 それが実戦投入された結果が現在の状況である。


 レキュアがたった一人で強力な魔法を使っているように見えてしまうのは、仕方がなかった。彼女が手にしているのは、一見すると普通の魔石にも見えるような物だから。


 宝玉だと知らない魔法師達から見れば、レキュアが異常な力を使っているとしか見えないのである。


 想像を絶するような魔法を使うという評判のある彼女だから、それが彼女の魔法によるものだと誰もが信じてしまっている。

 それが驚愕の実態であり、だれもが衝撃で口をポカンと開けてしまう原因なのである。









 ポルトガル側では魔法師の大量投入によって、大砲をまとめて船から降ろして地面の堅い場所まで移動させるつもりのようだった。


 200人者魔法師が全て投入されて、重量軽減や地面の強化。あるいは最初から瞬間移動で地面の堅い場所まで大砲を持って行く者。


 得手不得手によりやり方は様々。


 しかし、優先順位は紛れも無く大砲と砲弾だった。重量があるから普通の兵士では簡単には運べない。

 こうした問題の解決なら異能の持ち主にやらせるのが一番だ。


 投入された魔法師達は5~6人程度で一組になっている。師匠と弟子なのか、組単位の中では使う系統の魔法は同じ物を使っている。


 作業効率が向上したポルトガルの大砲揚陸作業。

 これは副次的な効果も生み出している。荷役作業から解放された兵士達にとっては行軍がぐっと速くなった。

 重い荷物を魔法師が運んでくれるのだから、自分と得物だけを抱えて進めばいい。

 面倒な足場の悪い所になどいつまでもいたくはないのが人情というものだ。


 ポルトガル側では大砲を1,400門持ち込んでいる。

 いかに魔法師といえども、これを全て揚陸させるのは容易なことではない。


 ポルトガルの参謀は最初の段階で船の上から上陸支援の射撃をするつもりでいたから、精々上陸作戦当初では300~500門程度を揚陸させて上陸した兵士の支援兵器にする予定だった。


 それが大環は射程距離の遥か向こうに陣を引いている。

 だったら、今のうちに出来るだけの大砲を揚陸させるいいチャンスだと考えを変えた。

 魔法師を大量動員して、一気に大砲を揚陸させることにしたのだ。


 既に船からは700門近い大砲が揚陸された。

 200門は瞬間移動により堅い地面の場所へ。

 残り500門は魔法の支援を受けて、ぬかるんだ砂浜をものともせずに進撃している。


 その周囲にはポルトガル兵が8千人ほどだろうか。足を取られつつも進撃している。

 もっとも、隊列を組むことはできないようで、バラバラになっての行進だ。

 これだけ見ていると練度は低いように見えてしまう。








「さて、そろそろ頃合いもよかろうて」


 井伊直政は人が悪そうな凶悪な笑みを浮かべていた。


 得物を罠に誘い込んだ熟練の狩人。


 いや、彼の場合は紛れもない百戦錬磨の大武勇だ。井伊の赤揃えと言えば泣く子も黙る徳川の精鋭なのだから。


「レキュアよ、そろりと始めようではないか。


 他の魔法師共は、全員総出で防御壁を展開しろ!いいか魔力などケチるなよ。魔石などいくらでも使ってよい。全力でやれ、巻き込まれるぞ」



「はい、井伊様。それでは始めます。


 海行かば水漬く屍。


 水満玉よ、今ぞ汝の枷を解き放て!」



「よーし、全魔法師ども!目一杯の力でやれ!」


「合点」


「委細承知」


「やらいでか!」


「朝敵没すべし」


「いまぞ怨敵滅すべし」


 “おお~っ”


 “おお~っ”


 “おお~っ”



 レキュアの詠唱に合わせて、出雲大将閣下が魔法師に命じる。


 出雲の命令に、気合の入った応えが戻って来る。

 皆揃って気合満々であった。


 レキュアの詠唱が終わるや否や、それは起きた。


 正に神の奇跡とでも言うべきか。


 巨大な海水の塊が博多湾を襲ったのである。


 ごう、ごう、と遠くから鳴り響く轟音。


 腹の底に響くような。


 足の底から全身に伝わるような巨大な振動。


 海の彼方から地震が襲って来るかのような地鳴りが。



「障壁の展開状況を知らせ」


「1、2、4、6、7地点完了です。


 あっ、3と5も終わりました」


「8と9はどうした?」


「今、終わりました。全拠点展開終了です」


「よしっ、そのまま維持させとけ。始まるぞ・・・」



 3kmもの距離を干潟に変えていたのである。それが本来の満潮並みに一気に水が押し寄せて来る。


 20m近いような大津波となってである。


 遠くから響いていた海鳴りは今や凄まじい津波の轟音と化していた。


 それが凄まじい震動となって、大環の陣地にまで伝わって来る。


 陣地で様子を見ていた武将達ですら、立っているのが困難なほどだ。







 堅い地面の場所に陣取っている大環の武将でさえ大激震を感じているのだから、ぬかるんだ砂地にいたポルトガル軍やガレオン船に乗っている侵攻軍には恐怖の瞬間であった。


 遥か沖合から海鳴りは聞こえて来て、次第に地響きを感じて。


 地響きが強くなって来ると、水分を十分に吸った砂が容赦なく兵士たちの足を引きずり込んでいく。


 そして、猛烈な速度で迫って来る轟音。その正体は誰でも簡単に想像できてしまう。


「まずいぞ、大津波が襲って来やがる。このままじゃヤバイ。船に戻れる奴は戻れ、陸に近い者は全力で走れ。武器なんざ捨てていけ!」


「ううっ、足が沈んじまって動けねえ」


「文句を言うな。生きていたけりゃ全力で逃げろ」


「そんなことはわかっている!」


 そうなのだ、分かっていても動けないものは動けないのだからどうにもならぬ。


 しかし、それでは死ぬのを待つだけだということも確かだった。


「嫌だ~、俺はこんな所で死にたくないぞ~」


「この戦が終わったら国で結婚する予定だったんだ!メアリー愛しているぞ」


「ああ、偉大なる神よ。我にご慈悲をお与えください」


「魔法師はどこだ!助けてくれ~。カネならいくらでもやるぞ」


「ダメだ、俺は死ぬのは嫌だ。誰か助けてくれ!」


 アフリカで、インドで、マラッカで、華帝国で。何度も現地の人間は同じようなことを叫んだことだったろう。


 それを無視して、蹂躙してきたのが他ならぬポルトガル軍である。


 今や彼らこそが蹂躙される哀れなる子羊に過ぎない。


 大津波は時間にすれば10分前後で目に見える場所に到達していた。


 依然として、砂地に足を取られていた者。


 船にしがみ付くことが出来た者。


 ごく少数の乾いている砂浜に到達出来た者。


 彼らに与えられた運命はしかし、同じ物だった。


 強烈な津波は全ての飲み込んで行ったのだから。




 巨大な海水の塊は全てを飲み込んでいく。


 そこには一切の意志は無い。ただ、物理的にあるべき場所に海水が戻って行くだけの事。


 それだからポルトガルの魔法師達でも対抗魔法などではどうにもならなかった。


 干潟になっていた3kmの砂浜。


 そこを満たさんと殺到する海水の塊。


 それは勢いが強すぎて、陸地の遥か遠くまで届かんとする勢いだった。


 博多湾全域に渡る大津波。


 海上にいる船は大揺れになり、甲板に重量物が集中していたような船は横転し。


 干潟にいた兵士達を容赦なく全てを飲み込んで。


 辛うじて上陸していた少数の兵士達をも飲み込んでいく。


 その津波は遠い位置に陣取っていた大環軍にも届く勢いだった。


 しかし、大環軍魔法師総出で展開していた障壁は幸いにも、彼らを守り切る事に成功した。


 大環軍の目前であっても、まだ高さ2mを超える規模の海水の塊である。


 まともに飲まれたら抵抗すること叶わずに、ただ流されることになっただろう。


 目の前に迫った海水の塊に対して、大環魔法師達は必死で抵抗したのだった。




 大環側では起こされる事態を理解していたから、準備を出来ていた。


 しかし、全く予想していなかったポルトガル軍は・・・。


 地獄だった。


 浮かんでいるガレオン船すら横転しかかるような大波が押しかけたのである。


 干潟で足をすくわれていた者達に待っていたのは、どうしようもない現実だった。


「ああ、ああ」


「なんでだ」


「嫌だ、嫌だ」


「助けてくれ~」


 船を降りて陸地を目ざしていた約8千の兵士達は容赦のない大津波に飲まれて行ったのである。


 轟音と、地響き。


 そして迫って来た大津波。


 絶望の中で冷たい海水の塊に叩きつけられ、渦巻く海水に揉まれて。


 全員が生命の息吹を失って行った・・・。







 ガレオン船7隻が横転。


 そこに乗船していた漕ぎ手と上陸していなかった兵士約4,000人。


 干潟にいた8千の兵士。


 干潟にあった500門の大砲。


 青鬼と赤鬼から命の代償として差し出された宝玉。それが引き起こした損害の全てである。


 大環側では魔石を大量に消費した他に一切の損害はなし。


 既に揚陸された大砲200門を鹵獲。



 井伊直政は大いに満足した。


「それ、者ども。凱歌を上げい!」


 超常の魔法という存在。


 それが戦場を左右する世界。


 兵士達は自国の魔法師達に感謝しつつ、大いに勝利の凱歌を上げた。

 戦闘はこれでは終わりません。

 ポルトガル側では残存戦力を集めて、再度侵攻を試みます。

 次回はいよいよ大将閣下が大奮闘する回になります。

 博多湾上空で双方の召喚魔物がぶつかり合う大決戦。

 ドラゴンが、グリフォンが、キュマイラが。

 そして、勇者と貴志が全面対決!

 戦闘はこれからが本番です。

 乞うご期待!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ