39.勇者ダンジョンに遊ぶ
ご愛読ありがとうございます。
今回は勇者一行がダンジョンで大冒険のお話です。
勇者一行がダンジョンで激闘を繰り広げます。
女子チームに襲い掛かる黒い悪魔!
負傷する大三郎、恐怖に棒立ちになってしまう波留。
ピンチに次ぐ、ピンチ。新米勇者達は無事に切り抜けられるのか!
第一幕;黒い悪魔との遭遇
「いやー、コッチに来るなー」
「ダメー」
後方警戒に当たっていた筈の、“りお”と樹里の2人組が悲鳴を上げて走って来る。
この二人は勇者Lv12。
樹里の魔法は、地;Lv10、水;Lv17、風;Lv12、火;Lv10、空;Lv9。
“りお”の方は、剣術、槍術、格闘、飛行魔法、神剣/神槍召喚の全部がLv12。
ダンジョンの第1層に入って、数百m進んで早々に悲鳴を上げて逃げ回る事も無い筈である。
この水準で第1層を歩けないようだと、そもそもダンジョンに入れる奴はいないだろう。
「どうしたの?何が出たの?」
「大三郎と波留で何とかして~」
「女の子にはムリ~」
後衛の2人が揃って走ったままで中衛にいた神楽耶と優人を追い抜いて行ってしまう。
大三郎は異常を感じて、まず走り出していた。
一拍遅れて波留も動き出す。
「何さ、一体?」
後衛の少女2人がいた方向を見ると、何か蠢くものがいる。
それも数十というレベルの集団らしい。
カサカサ、カサカサ。
どこかで聞き覚えがあるような、嫌な足音が聞こえて来る。
「あんな魔物なんてリストになかったじゃないか!」
「ううっ、魔法で始末して欲しいぞ・・・。近づくのは遠慮したい!」
「優人、お願い燃やして!私もアレはダメ~」
神楽耶もついに逃げ出してしまう。
見た目としては殆ど最悪とでも言うべきか。
全長1mはあるような巨大ゴキブリであった。
それも数十の集団であった。
「ええ~、ボクなの?嫌だなあアレばかりは。
えい、ファイア・ウォール」
優人達とG軍団の中間地点に、厚み1mほどの火の壁が燃え上がる。
G軍団はそのまま壁に突撃する形になった。
突撃した軍団は、そのまま燃えだして行く。
しかし、少数ながら火の壁を突破して来る個体もいる。
「ううっ、やだなあ。もう、ウインド・カッター!」
優人は責任感が強いというよりも、女の子達に押し付けるのを躊躇ったのだろう。地道に始末することにしたようだ。
焦げて、切り刻まれて。
しかし、Gは消滅することも。魔石を残すことも無かった。
ダンジョンの魔物リストになかったのは、魔物ではなく巨大な昆虫そのものだったからだ。
襲われて倒しても、何らの利益にならないタダの虫。
ダンジョン初の冒険は、しかし、経験値を稼ぐことなく。レベルアップにつながることも無く。乙女達の恐怖の悲鳴だけを残して終えたのである。
第二幕:ゴブリン遭遇
「ああ、もう嫌。何なのよ、あの大きさは!数センチの小さい奴でも嫌だっていうのに」
「まあまあ、もう大丈夫だからさ」
「ああ、優人ありがとう。もう、見た瞬間に気が狂いそうになったわ。
卒倒しそうだった」
「ゼイゼイする・・・。ああ、涙が出そう」
「息が上がっている最中で悪いんだけれどさ。
またまた、女の敵みたいのが来たよ。
やっぱりダンジョンだねえ。次から次に来るような仕様になっているみたい。
飽きさせない仕様のゲームなんだろうね。テンポが速い展開って言う奴かな」
ダンジョンの奥の方からは、ウロウロと1m程の青緑の群れが沸いて出て来ている。
先程の少女達の悲鳴を聞きつけてやって来たのだろう。
「ああ、あれがゴブリンだね。ああいうのを見るとファンタジー世界なんだなって思うよね」
「なんだか、さっきの奴よりも安心できるよな」
「そう、そう。
なんか冒険の最初はコイツじゃないと始まらないみたいな?
最初っからいきなりワイバーンとか、ゴーレムとかが出てくると、そりゃあ違うって気分だよなあ」
優人、大三郎、波留の順だが、波留君はどうやら作者に言いたいことがあるらしい。
波留君は、職員室に来るように!説教だ!
「ええっと、今度はちゃんとフォーメーション通りにやりましょう。
大三郎、波留、フォワードをお願い。今度はちゃんと支援するから!」
卒倒しそうなショックから気を取り直した神楽耶が指示を出す。
「おっしゃあ、勇者名物の神剣の切れ味をみせてやるぜ!」
「よし、行こうか大三郎!」
ノリノリで大変に宜しい。波留君は神楽耶の言う事は素直に聞くらしい。
「私だって行くわよ~。ゴブリンくらい簡単よ」
体育会系の“りお”も突撃して行く。見た目は健康そうな美少女なのだが、割と適応性が高いのか殺すことに躊躇いはないらしい。
さて、勇者の戦士系スキルには神剣/神槍召喚というものがある。
勇者なのだから鉄剣や銅剣で戦わせる訳にはいかない。召喚時点で恩恵として使う武器そのものにも恵まれているのである。
ただし、レベルの制約があって最初からエクスカリバーとはいかない。普通の剣よりも明らかに違うけれど、それでも等級は存在しているのである。
ゴブリンやオークあたりには完全にオーバースペックの剣には違いないのだけれど。
登場してきたゴブリンは20体ほど。
3人の勇者が斬りかかっていくと、簡単に一刀の元に切り裂かれていく。
熱したバターナイフをバターに突き入れる如き。
せいや!
ギャギャ!
おうりゃ!
グギャッ!
そこよ!
ギギッ!
片っ端からぶった切る3人組。
ゴブリンも一応は剣や槍を持っている。
だが、勇者達の神剣はそうした武器類ごと斬ってしまう。
ガッチンッというような音など出ないのである。
金属同士がぶつかり合っているはずなのだが、神剣はゴブリンの武器をサクッと斬ってしまう。
本来、剣で人体を切るなら骨にあたってしまう訳だが、そうした抵抗感など一切感じさせないだけの切れ味なのである。
問答無用でサクッと斬れてしまう。
結局、支援の魔法を使うまでも無くゴブリン集団は殲滅されて逝った。
なお、返り血を浴びた“りお”は、樹里にクリーン魔法を使って綺麗にして貰っている。
この辺りは年頃のお嬢さんなのだろう。
例えノリノリで剣を振るうとしても。
このようにして、彼らは無事に1階層から2階層に降りて行くことにした。
最下層50層まで、先は長いのであった。
第三幕;また、昆虫・・・。
ダンジョン内の地図については、判明している限りの情報が網羅されている物を入手している。
何しろ、王女と引き換えに召喚した勇者様のご一行であるから、待遇は素晴らしく良いのだ。
だから、内部の移動に関しては特別な問題もなくスイスイと進んで行ける。
ここまでの障害と言えば、多少のゴブリン位の物だった。
そう、5階層までは楽勝だった。
では、6階層からは?
ゴブリンに加えて、昆虫系のモンスターが登場してくる。
普通の昆虫とは違って全長8mのメガ・カマキリ、同じく8mサイズながら猛スピードでダッシュするスピード・スパイダー。地蜘蛛みたいで巣を張らないタイプだ。
こうした連中が出て来ると、ファンタジー世界の冒険だ!と調子こいている余裕も消えていく。
目の前に異様にデカイ蟷螂が出て来ると、普通の人間ならビビるのである。
少し前まで普通の高校生だった子供達が異世界に叩き込まれて、今日から勇者と言われても、精神構造がガラリと変わる物ではない。
バカでかいGにビビった少女達である。
8mのカマキリが出て来ようものならトラウマものであろう。
逆に蟷螂くらいだと男の子には余裕かもしれない。
デカイだけで特に魔法攻撃があるのではない。
折角、良い神剣や神槍などを使えるのである。デカイだけなら良い的になるだけだ。
神剣や神槍だと、それ自体に放出系の魔法が付与されている。
そこに飛行魔法があるなら、良い調子で戦えるのである。
剣を振り切って相手を叩き斬る必要などない。遠い相手なら雷や衝撃波を発生させるような斬撃を繰り出せばいいのである。
そして、蟷螂なら堅い装甲があるのでもなし。当たれば一発で斃せる。
「おっと、お出でになったぞ!波留」
「おう、今度は俺の番な。大三郎。
うりゃあっ、衝撃波いっけえ!」
轟!
凄まじい音を響かせ、土埃を撒き散らし・・・。
もし周囲に他の人間がいたら、ちょっとした惨事になるかもしれないオーバーキルである。
それでも、ある日突然魔法が使えるようになったら楽しいのである。
ついつい嬉しくてドーンとかましたくなる。
これも男の子の本能なのだろう。
これがスピード・スパイダーだと面倒だ。
これは地面の窪みに身を伏せていて、突然に猛スピードで飛びかかって来る。
デカイだけにうっかりと突撃を食らうとひとたまりもない。
突撃してきて、ぶつかった瞬間には牙を突き立てているような相手である。
十分に警戒しておいて、先手必勝を期すしかない。
怪しいと思ったら、問答無用で魔法を叩き込む。
火炎でも衝撃波でもいいが、火炎だと周りを照らせるから周囲に潜んでいるような敵も探せて便利だ。そんな事も勉強にはなる。
魔法を使って経験値を稼いでレベルアップをする。それが目的なのだから、精々魔法を使うに限る。
優人もこういう面では男の子である。
地水風火をそれぞれ順番に使って、レベルアップを狙う。
土で槍を作ってみたり、一定面積を凍結させてしまったり。
ウインド・カッターにしても、数を増やしたり、威力重視の一撃を出したり。
火にしても、一定面積の制圧をすべき無数の炎の矢を出したり、ファイア・ウォールをジリジリと前進させて焼き払ってみたりと。
魔法を使うのが面白くなっている。
女子組はというと、虫は嫌だ。
けれども、レベルを上げない事には元の世界に戻れない。
だから、遺憾ながらもレベルアップ作業をしている。
やらない事にはどうにもならないのだ。
嫌とか好きということは、この際少し置いておいて。
「樹里、あそこ蜘蛛がいるわ」
「OK、りお。すぐ焼くから」
「ダメ。ゴブリンが来ているわよ。りお、カバーして」
ギィッ~。
バキッ、グシャッ・・・。
「えっと・・・、蜘蛛がゴブリン食べちゃった・・・」
「ううっ、見たくないもの見ちゃった」
「そうね、暫くお肉食べたくないわね・・・」
「でも、保存食糧って干し肉・・・」
「もう、この世界は嫌っ。早く帰りたい!」
どうにも、虫が絡むと調子が出ないような女子組である。
第四幕;密林の激闘
ダンジョン内部は必ずしも洞窟の中みたいな場所だけではない。
現在、一行が苦戦している場所のように、密林という場所もある。
湿気が高い、生茂る草木をかき分けるのが大変。しかも、蠅や蚊、虻が沢山いる。
とにかく鬱陶しい環境である。
「なんで道を作らないのかな?
どうせここまでちゃんとした地図を用意するなら、細い道でも作ればいいのに」
大三郎は愚痴りながら藪を切り刻みながら進路を確保している。
文句を言いつつも、手を止めないあたりに真面目な性格が出ているのだろう。
「暑い、蒸す、蚊が来る。嫌な場所だよなあ」
波留の方はすっかり手の動きがお留守になりがちだった。
「ちょっと波留。真面目にやんなさいよ、進めないじゃない」
ブツブツ言っている波留には容赦なく“りお”の叱咤が飛ぶ。彼女も汗を流しつつ、藪を薙ぎ払っているのだ。
「波留は、文句言ってないで手を動かすべき。何が出て来るかわからない」
樹里も苦情を言い立てる。
つい先ほど、例の巨大な黒いのに襲撃されたばかりなのである。
この場所にも、アレがいたのだ。
不意打ちを食らった樹里と神楽耶は、お蔭で半べそになっていた。
波留に八つ当たりの文句を言い立てる樹里は気丈なものだ。
神楽耶はすっかりショックを受けてしまって、顔面蒼白で無言のままである。
「ねえ、金子さん。そうそうあんなのが来る訳ないからさ。みんなで警戒していれば大丈夫だから。僕もしっかり見張るから」
優人はなんとか神楽耶を再立ち上げさせようと躍起である。
そうは言っても、トラウマ級のショックだったかもしれない。
なにしろ3m位あるような巨大なカマドウマの死体に、アレの集団が群がっていたのである。
まともに見たら卒倒ものである。
そして、神楽耶と樹里はまともに見てしまったし、挙句に一部のアレが向かって来たのだ。
優人が神楽耶の横にいたお蔭で大参事にはならなかったが、精神面ではすっかりと被害甚大である。
波留に八つ当たりできている樹里が立派ということだろう。
さて、この密林地帯。
彼らが藪を切り払う理由がある。
実の所、中級のハンター達なら多くの場合はここで死ぬケースが多い。
藪の中に獰猛なレッド・タイガーが潜んでいるのだ。
頭の先から尻尾の先まで約10m。
尻尾が長いから重さは大きなヒグマ並というあたりだ。
それが狡猾に藪に潜んで、鋭い牙と爪を隠して待ち受けている。
油断大敵。
飛び掛かられた時には牙が突き立てられているのである。
それだけではない。
やはり10m近くになるような巨大な牙と角を持つホーンド・ボアも生息している。
この巨大猪は肉食に近い雑食性だ。
食べられそうなモノなら遠慮なく食らいつく。
重量を活かして突進してこられると達が悪い相手だ。
こうした厄介な相手は空から先に見つけて、攻撃したい所だ。しかし、鬱蒼としたジャングルだと木々が邪魔になってしまって上からでは見えてくれない。
だから、文句を付けながらも藪を切り開いて進んでいるのである。
ジャングルには虫だって沢山いるのだという事は、すっかりと忘れていたけれど。
依然としてショックから立ち直れない神楽耶に優人が付き添い。
他のメンツはブツブツ言いながらも藪を切り開き。
「何か匂いがする」
「生臭いな」
「いるみたいね」
「どこ?」
一斉に緊張が走る。
賢者は今回の戦闘には役立たない事が確定のようだ。
ピーンとした緊張が走る。
グオッ!
右の藪から飛び出してきたのは、うす暗い赤色と黒のだんだら模様。
一見派手に見えるが藪の中では相当有効な迷彩になっている。
温度を察知するか、匂いを察知するかしないと見つけ難いものらしい。
気配を消すのはお得意の様子だ。
しかし、一度姿を見せてくれるなら勇者の一行の力の前では、それほどの脅威ではない。
「せいや!」
大三郎、快心の一撃が入る。
レッド・タイガーは見事に左右真っ二つに割かれた。
「大三郎の馬鹿!魔石まで真っ二つにしてどうするのよ!」
「毛皮も傷つけない方が良い」
“りお”と樹里から早速の突っ込みだ。
「あっ、ごめん。ついつい」
「やーい、大三郎。怒られてやんの」
波留もついでに乗っておくことにしたらしい。
「じゃあ、どうすればいいんだよ!」
「ナニ逆切れしてんの?アンタ馬鹿?馬鹿なの?死んだら治る?治したいの?」
「ううっ。そこまで言わなくても・・・」
「風で巻き上げておいてから地面に叩きつけて全身骨折とか。凍らせてしまうとか。
いくらでもやりようがあるでしょうが!
魔石を真っ二つなんて、どこの馬鹿よ」
「ううっ、わかったよ・・・」
「大三郎、反省!」
「ごめん」
力があると、それが評価されるとは限らない。
力はそれに相応しい使い方をしないと、役に立たない。ある意味いい勉強だっただろう。
散々に怒られて。
大三郎が思いついたのは、こんな戦闘方法だった。
レッド・タイガーが襲って来ると、左手を使って剣の鞘で下から突き上げる。
相手が仰け反った瞬間に神剣で喉を切り裂く。
どうせ毛皮を剥ぐのなら喉元に傷があっても構わないという居直り戦術だ。
「それ、なんかカッコイイじゃんか。俺もやろうっと」
二刀流めいた剣術を気に入ったのか、波留もこれを採用するようだ。
“りお”は別の戦法を採った。
切り刻まない程度に威力と落した衝撃波、というよりも風の塊を相手に叩きつけておいて気絶させてから仕留めるのである。
二刀流だと相手が襲って来るのを待ってのカウンター攻撃が必要で、これにはリスクも伴う。
その点、相手を見つけ次第先手必勝を狙う方が確実でいい。
剣道をやっていた大三郎は剣技に拘り、そうではない“りお”は安全を取ったようだ。
しかし、この戦法。
何度も繰り返すうちに大三郎は疲れて集中力を欠くようになり。
“りお”は魔力の枯渇に至るのだが、それがどういう結果になるのかを未だ誰も知らない。
レッド・タイガーへは毛皮に気を使わないといけないとしても、ホーンド・ボアについては毛皮が珍重されない。
こちらに重視されるのは、角と牙なのである。象牙などよりも数段上の素材として扱われているのである。
だから、ホーンド・ボア相手の戦闘の場合は、ザックリと首を落とすということになった。
猪突猛進してくる相手。
1人が囮になって注意を引き付けておく。
囮に向かって進んだら見つけもの。横から他のメンツが叩き斬ればいい。
血抜きを兼ねて、首を落とすのは悪くない戦術だ。
囮になるのは出て来たボアの直近にいた者の役割になった。
イザとなれば空を飛んで逃げればいいのだ、さしたる危険はない。
だから、むしろホーンド・ボア相手の戦闘は面白がって行くようになった。
何度、同じ手を使ってもホーンド・ボアはひたすら猪突猛進なのである。
目についたものに、まっしぐらに襲いかかるだけ。
だから、5回、6回と繰り返すうちに油断も生じてしまった。
飛び出してきたのは2mほどの小柄な個体だった。小柄と言っても、あくまでもこのダンジョン基準ではだが。
“りお”に向かって飛び出してきたから、横にいた大三郎は遠慮なく首を落とした。
そうしたら別の10m近い個体が飛び出して来て“りお”に突進して来たのだ。
これには慌てて宙に逃れる“りお”だったが、すぐ上には樹木が覆っているからそれ程の高度は取れない。
なんと大猪はジャンプして、“りお”に迫って来たのである。
これには大慌て。
彼女は咄嗟に問答無用で斬って捨てるしかなかった。
角と牙を犠牲にして。
だが、混乱はこれで済んだ訳でもなかった。
更に小柄な個体が2匹ほど飛び出して、大三郎に迫って来たのだ。
大三郎の支援に波留が走った。
だが、更に10mほどの個体が大三郎に向かって飛び出して来たのである!
要するに夫婦のつがいと3匹の子供だったのだろう。
3匹の突進を一手に受ける羽目になった大三郎。
波留は何とか大型個体に追いついて一太刀浴びせた。
だが、慌てたので前足の一本を切り飛ばしただけだった。
苦悶の雄叫びを上げながらも大三郎への突進を止めない大型個体。
大三郎はと言うと、2匹の小型個体に注意が向いている。
彼は近い方の個体を叩き斬って、そのまま飛行術で空中に逃げる。
残った小型個体は目標を見失ってくれた。
だが、足を一本失った大型個体は、しっかりと大三郎に向かってジャンプしてきた。
何とかこのジャンプをギリギリ交わす大三郎。
足を失っていて着地バランスを崩した大型個体。
だがすぐに気を取り直して、再度ジャンプを敢行する大猪。
・・・ひたすらな闘志を見せている。
大猪の闘志に当てられたのか、呆気に取られて動きを止めてしまった波留。
空中で突撃を辛うじて弾いた大三郎。バランスを崩してしまった彼は、地面に叩きつけられる羽目になった。
大三郎に弾かれた大型個体は、更に追撃を狙おうとして。
しかし、気を取り直した“りお”が、この大型個体に攻撃を加えた。
大型個体の胴体に深々とした傷が穿たれた。
悲鳴を上げた大猪は、数歩進んでからバタリと倒れた。
残された小型個体は動きを止めた波留に突進する。
慌てた優人と樹里がウインド・カッターで突撃を阻止しようとするが、波留に当たりそうな位置関係で余り威力のある攻撃はできなかった。
結局、後ろ足を叩き斬れたことで何とか突進が止まった隙をついて、“りお”が小型個体に止めを刺した。
大三郎は地面に叩きつけられてタンコブを作った程度で済んだが、一歩間違うと波留は危なかった。
競技経験が長い大三郎と“りお”は、大一番の本番での緊張感に慣れている。
ある意味では神経が図太くなっているのである。
だから、相手や周囲の状況の変化に対応することができている。
そうした経験の無い、ごく普通の学生であった波留には本気で命のやり取りという緊張感に、神経がついて行けなかったのだろう。
「ああ痛いなあ。タンコブできたぞ」
「大丈夫かい、すぐ治すよ」
マイペースというか、おっとりとしている優人が大三郎の治療にあたる。
「サンキュ、優人。
オイ、波留。どうした棒立ちだったぞ。
それじゃやられる。
俺達は不死身じゃないんだぞ!」
「わ、わりい。
ゲームみたいだと思っていたのが、急にリアルなんだと思い知らされてな。
なんてえのか、足が動かなくなっちまった・・・」
「しっかりしろよ。みんなで元の世界に戻ろうぜ。こんなクソみたいな世界など俺達に用はないさ」
「そうだな。うん、そうだ」
見栄を張って何とか恐怖を振り払おうとする波留であった。
まあ、英雄達と戦うまではこの連中が死ぬ筈ないだろうと、読んで頂いている方にはご理解いただけている訳で、前フリで少々煽ってもどうということは無いのでしょう。
でも、次回は本格的にヤバイです。
1人を除いて戦闘不能な重傷に陥る一行。そこに登場するラスボスは悪魔メフィスト!
本物の悪魔と新米勇者がガチの対決。
衝撃の結末に!-いやこれは本当にダークな決着です・・・。




