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37.半島動乱Ⅱ家康推参!

ご愛読ありがとうございます。


 今回は大海戦です。陸戦ではなく船での戦!

 それも家康自らの出陣です。

 最後のセリフは家康にしか言えません。他の誰かでは言えません。

 捕囚となりかかった者達は取り返し、財産の多くも回収できた。とは言え、対馬は被害甚大で領主も生死の境を彷徨う羽目になった。


 これでは事件の解決とは言えない。



「徹底的に責任者を処罰して、しかるべき賠償を取り、再発防止策を徹底せねばならぬ。


 甘い顔などしていては相手に舐められるのみ。


 国家の独立を保障するのは自らの武力に他ならぬ。その武威を確保するためにこそ、国家繁栄をなさせねばならぬ。


 安寧とは安逸にあらず。即ち血と鉄によってのみ為し得る。


 これ即ち宰相の務め也。


 臣不勝受恩感激 今當遠離臨表涕泣不知所言」



 陛下隣席の上で、主だった大名を集めた徳川家康が敢然として言い放ったのである。


 いにしえの水師表まで引用して、自ら出撃すると!


 徹底的に貢鮮の責任者を処罰するのだと!


 近年は律義者と言われるが、若き頃は東海道一の弓取りと評された男である。


 既にその顔は武人のそれである。


 “パシッ”

 “パシッ”


 上杉謙信と武田信玄は、無言のまま手にした扇子で自らの膝を叩いた。


 “善哉”2人は無言でそう応えたのである。



「大安宅 伊丸、呂丸、波丸の使用を許可する」


 陛下はただ一言だけ伝えた。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 大安宅 伊丸、呂丸、波丸


 全長80mにも達する王家虎の子の浮かべる城と言うべき巨大船である。

 壮麗なる4層の天守に銅張の装甲。

 帆船にして、魔石利用推進システム搭載。

 戦闘員1,500人収容の最強船。


 鉄ではなく銅を使うのは、錆びに強いからである。この時代に鉄を張ってしまうと、短期間のうちに海水で腐食してしまうのだ。


 魔法師を乗せるなら魔石を使った遠距離打撃力を発揮して、戦艦としての破壊力を発揮する。

 飛行魔法を使う術者を乗せるなら、空母としての機能すら発揮できる。

 そうした使い方をする船である。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 作戦方針としてはこうだ。


 仁川から上陸して漢城を一気に陥落させる。

 貢鮮王都の漢城から数十キロ圏内にある仁川。

 ここに強襲上陸して、一気に王都に仕掛ける。


 漢城は500m程の山々に囲まれているが、この程度なら突破することは困難ではない。

 実際に18年前には簡単に陥落しているのである。


 なお、こちらの意図を悟られぬように、釜山に対して陽動作戦も同時に行うものとする。


 一気に王都に仕掛けるために兵力は3艘の大安宅のみを使用。

 従って総兵力は4,500人のみ。


 但し、富士で練度を上げてある魔法師を総動員する。当然、各大名家の魔法師も徴用する。

 現時点で強化済の魔法師は1,200人である。九鬼と毛利の魔法兵は彼らの元に残すとして、家康は大名家の強化済み魔法兵を招集して、戦闘可能な状態だった1,000の魔法兵を連れ出した。

 部隊の1/4近くが魔法師の部隊と言うのは異例中の異例だ。そして、数的な劣勢は貴志の存在で覆せる。


 伊丸には本多忠勝と家康が座乗。呂丸は井伊直政、波丸は榊原康政が指揮を執る。


 九鬼、毛利水軍は全力を以って釜山附近を荒らし回ること。


 家康不在時の宰相代理は嫡男秀忠が行う。上杉、武田両家がこれの補佐を行うこと。


 参戦希望の大名が多かったが、家康の一喝で納まった。

 下手に逆らえば改易されるだけなのだから。






 この頃の貢鮮側の状況として。


 珠淵王は大混乱していた。勝手に血の気が多い連中が先走って大環に攻め入って、逆襲されて釜山ごと消滅してしまった。


 実際の所、この無能なる王は全く襲撃の件を知らされていなかったのである。

 部下達が暴走した挙句に自爆したのだ。


 マズイことには、ありったけの鉄砲と大筒をつぎ込んで全部消えてしまったこと。

 この時点で既にまともな戦力など、国内のどこにもなかったのである。


 部下達が暴走した遠因は華帝国にある。


 華帝国の康徳帝を傀儡にした西太后が遊興三昧で浪費を続けた。そこに外国勢力が押し寄せて来て、国内が蚕食されていく。


 西太后は周囲にイエスマンしか置かなかったから、いいように外国のやり放題だったのだ。

 いよいよ、華帝国の資金が苦しくなっていて、最近では貢鮮との朝貢貿易まで控える状況だった。

 元々から貢鮮側が貢物を送ると、その3倍近い返礼を華帝国から受けていた。

 それが貢鮮王家にとっての利益の源泉だったのだが、華帝国側の財源不足でそれが止まる。


 そうなると貢鮮側では他に財源を求めざるを得ない。

 それは臣下達からの上納金強化である。

 臣下達はより下位の子分たちから捲き上げるしかない。それを強要された子分たちは、その子分たちからという悪循環である。


 かくして、ニッチモサッチモ行かなくなった連中が自棄になったのである。

 貢鮮国内にカネがないから、カネを持っていそうな奴から奪えばいいと。


 虎の子である鉄砲や大筒にしても、この先は弾や硝薬すら調達できなくなるかもしれない。だったら、使えるうちに使ってしまえという話だ。


 バカな婆さんの乱心で華帝国が傾いたら、貢鮮が大揺れして、何故か大環が迷惑を蒙ったという経緯である。


 華帝国を傾けた原因の一つにはポルトガルの影響もあるのだけれど。




 かくして、最強艦隊に最強魔法師集団を搭載してやる気満々の家康軍は、どうにもやる気は無い、能力も無いという最低の王を相手に喧嘩を売りに出かけて行ったのである。


 航海の途上で家康は、釜山附近で陽動に出た九鬼水軍と毛利水軍から一切の抵抗が無いという連絡を受けている。


 しかし、家康率いる艦隊は都合良くはいかなかった。


 仁川を目前にして、約90隻近い敵艦隊に遭遇したのである。


 倭国の大安宅船がズングリした船体なのに対して、敵はスマートで3本マストの船が大半である。大きさは15m~30m程度であろう。


 一番大きな船には龍が描かれた黄色い旗。

 華帝国の水軍旗である。


 貢鮮は形の上で華帝国の属国である。

 釜山が消滅したと聞いた貢鮮駐在の大使が、慌てて母国に援軍を求めた結果である。

 珠淵王が早手回しに手配した援軍ではない。


 家康としては想定していた敵である。

 思ったよりも早く、多かったという印象ではあるけれど。


 敵側の艦隊を率いるのは丁汝昌。水軍に限らず、陸戦での指揮能力も高い男である。

 彼らの不幸は釜山消滅がドラゴンによるものだとは、聞かされていない事だ。

 そもそも、釜山に立ち寄った商人達により街が壊滅していると報告されただけで、戦闘を見た者など全部死んでいる。


 だから、華艦隊は大きいけれど数は少ない大環艦隊に、それ程恐れを感じていなかった。

 華艦隊には魔法師が50人程乗り込んでいた。

 そして、大環では余り重視されないが、華帝国では重視しているフランキ砲と呼ばれる大砲を装備しているのだ。

 敵船が大きいといっても、大砲を徹底的に打ち込めば木造船など破壊できる筈だと考えていたのだ。


 常識的に考えるのなら、華艦隊首脳部を責められない。

 それが当たり前の時代なのだ。


 だから、華艦隊は敵を発見したら躊躇なく突撃に移った。

 数と火力なら上な筈なのだ。


 フランキ砲の射程は概ね800m程度。だから、それなりに接近してからの攻撃となる。


 対して魔法の場合は術者にもよるが、目視できる範囲程度なら届くことは届く。

 もっとも、数十キロも離れては威力のある魔法など無理だ。

 貴志達は通常の訓練では、500~1,000m程度の範囲で集中砲火を浴びせる。


 これは対人戦闘では無く、20m前後の魔物退治用に使う事を前提にした運用だ。

 巨大な敵だから、威力のある攻撃を浴びせたい。その為にある程度引き付けてから射撃する。


 これが対人戦闘であるなら、もっと離れて威力を弱めて広範囲に威力を散らすこともできる。

 例えば、ゴブリンやオークの大群相手なら2,000~2,500m程度の距離でも十分に有効な攻撃は可能なのである。富士のような広大な場所なら、そうした訓練もやれる。ワイバーンやティラノ相手にする際には、一応そうした練習も挟んでいる。


 貴志達にできる攻撃なら敵の魔法師でもやれる可能性があった。

 そして、実際に華帝国側の魔法師達はそうした攻撃をやって来た。


 華帝国にもお抱え魔法師は存在する。けれど、魔法というのはどうしても属人的な部分が多い。師匠と弟子の間では手の内を知っていても、他人には簡単には手の内など晒さない。

 だから、お抱え魔法師同士で協力しあって何かをするという事を嫌う。こればかりは主君が命じても簡単には手の内は晒さない。


 自然、50人の魔法師がいたとしても師匠と弟子、さらにその弟子という関係のある者同士で連携しても、他の流派の者とは連携しない。

 精々、5~6人程度の小隊編成で攻撃するのが関の山。

 全員で組織だった戦闘ということはしない。できなかったのだ。


 彼我の距離3,000m程の距離から先手を取ったのは華艦隊だった。


「射撃用意」


「射撃開始!」


 華帝国の魔法師達による雷撃魔法から開戦の火蓋は切られた。



「お頭、敵攻撃開始しました、距離は3,000」


「魔法防壁要員はそのままで防壁を維持。どうせそんなに大きい攻撃でもない。

 こちらは距離2,000まで待て。この距離じゃ大したことはできない」


「出雲、できれば敵の大将を捕えたい。何とかならんか?」


「ええっと、こちらの前面の敵を蹴散らして、敵の真ん中の船に乗り込みますか?」


「それでよい」


「児雷也、この船の部隊は正面の敵を蹴散らせ。呂丸の才蔵は進路上右半分。波丸の佐助の船は進路の左半分を担当しろ。


 おい、防壁を担当していない混成軍部隊!小隊長の指示に従って、いつもの調子で魔法を叩き込んで敵船を叩け。魔物よりも楽だろう?


 ああ、真ん中のデカイ船は沈めるなよ。こちらから乗り込むからな。

 他の船は全部始末しちまえ。


 俺の小隊は敵船に殴り込むぞ、用意しとけよ。


 オイ、距離はどうだ?」


「距離2,500。敵さんはコチラを包囲したい模様」


 敵艦隊は丸い艦隊を形成していたのだが、左右に開いて大環艦隊を包囲する構えだ。

 包囲してのフランキ砲攻撃を狙うのだろう。


「横に広がって、正面の敵が薄くなるのは助かるな。敵の大将をひっ捕まえたら、残りはドラゴンで焼いちまおう。

 遠慮するな、距離2,000から全力攻撃だ。魔石をケチるなよ、ガンガン行けよ」


「「「合点」」」


「ところで敵の攻撃はサッパリ威力が無いな。なにやってんだろ?」


 散発的な敵の魔法攻撃は今の所、魔法防壁で完全に防げている。

 やはり、距離が遠いのだろう。威力は弱い。


「距離2,300・・・・2,200・・・・2,100・・・」


「各隊攻撃用意!」


「距離2,000です」


「攻撃開始!」


「伊丸隊、目標は正面先頭。3,2,1。テッー」


「呂丸隊、目標は右に展開しつつある青い旗の奴。3,2,1。やれい」


「波丸隊、左に展開している前から3番目のデカい奴をやるぞ。3,2,1。撃て」


 1,000人の魔法師にうちで、各船の防御担当が30人で合計90人。

 残り約900人。各方面300人からの魔法攻撃である。


 30人で万余のモンスターを迎撃した時とは訳が違う。


 攻撃開始の合図と共にピカリと無数にも感じる閃光が海上を駆け巡った。


 それは一瞬の光でしかないのだが、この戦場で見ていた者にはひどく長い時間に感じたのかもしれない。


 光は一瞬であったけれど、その轟音たるや!


 900人の雷撃魔法とは、凶悪なまでの轟音魔法でもあった。耳をつんざくばかりの大音響が遮る物の何一つない海上を響き渡る。


 900の雷鳴が轟いた次の瞬間のことである。


 それに呼応するが如き、多数の大音響がこだました。


 雷撃を受けた敵の船には大砲に使う火薬が大量に載せてあった。

 その火薬に発火して一気に爆発してしまったのである。


 マッチ一本火事の元。


 900人の雷撃は、一瞬で目前の敵船30隻以上を爆散させてしまったのだ。


 1人で50mほどの範囲を焼き払えるとして、今回は900人がかりだった。


 複数の人間が3点に集中させたとしても、横1km圏内、奥行き500m程の範囲内にいた船が一気に爆発して消え失せたのである。


 火薬が一気に暴発したことで、海面も大いに荒れた。

 敵の大きな船が爆発して、一瞬海面が押し下げられる。そして、元に戻ろうとする。これで大きな波があちらこちらで不規則に起きてしまった。


 距離2,000といえども、その影響は大環艦隊にも襲い掛かって来た。お世辞にも波切が良いとは言えないズングリむっくりな船体。ましてや、4層の櫓にいた者は大いに揺さぶられることになってしまった。


 艦隊の先頭集団が一瞬で消された華艦隊は呆然自失。


 攻撃した大環側では、船から振り落とされそうになって大騒ぎになる者続出。


 ともに、この段階で半ば戦意を失っていた者が大半であるだろう。



 しかし、常軌を逸した訓練を積んできた富士演習場上がりの者は平常運転であった。


「ありゃ、敵の中心船を壊さんように注意しろ。左右に散らすようにな」


「第2射、目標は中心から離れている紅白の帆の奴。3,2,1、ていっ!」


「よし、続けろ。右側のだんだら模様の奴を狙う。3,2,1。撃てや」


「目標、3本線の帆の奴。3,2,1。撃て」


 ・・・閃光と轟音と大揺れを残しつつ。


 既に華艦隊は戦力の6割を消失した。無残な大敗戦である。

 丁汝昌はすっかり怯えて、回頭を命じて逃げに転じた。


 彼は配下に敵の足止めを命じて逃げるつもりだったのだが、その配下も怯えてしまって散り散りになって逃げ出して行く。

 艦隊としての組織だった行動ではなく、完全に蜘蛛の子を散らすようなバラバラな行動だ。


「好機じゃ。出雲、ドラゴンを使え。黄色い軍旗の船を除いて全て沈めてしまえ!全船とも軍旗の船を追え、逃すなっ」


 本多が貴志に命じる。


「急々如律令、行けドラゴン!」


 散り散りに逃げる洋上の船に対して、空を飛翔するドラゴンはたやすく追いついて尻尾の一撃を与えて沈めてしまう。

 この程度の敵などドラゴンブレスなど不要だと言いたげでもある。


 怯えて悲鳴を上げる敵の軍勢。


 軽々と上方を飛び去るドラゴン。


 ドラゴンの飛び去った後には、引っくり返った船か、無残にも砕け散った残骸か。


 呻き、助けを求める敵の兵士。


 しかし、その彼らにはいつの間にか集まって来た鮫が容赦なく襲いかかって行く。


 断末魔の叫び声。

 海面を赤く染めて。




 唯一残った敵船の漕ぎ手達はドラゴンを見て既に手を止めている。

 彼らはドラゴンの慈悲に縋るべく、一心に祈りを捧げているのである。

 召喚されているだけの、術者である貴志の命に従うだけのドラゴンに。

 全く価値のない祈りを。



 動きを止めた敵船に3隻の大型船が近寄って行く。


 3隻の船からは魔法師達が飛び立ち、憐れにも怯えきった敵船に乗り移って行く。

 華帝国の言葉を話せる術者を選んで、交渉に出向かせたのである。


 家康は丁汝昌と副官2人を自らの伊丸に連れて来させた。


 ここで交渉を始めたのである。



・対馬への侵攻は貢鮮の一方的な侵略であり、許し難いものである。


・領主は重傷で住民の多くも殺されて、財産は簒奪された。


・拉致された住民は既に奪還しているが、これは貢鮮が返したのではなく大環王国が自ら奪還したものである。


・この一切の責任は貢鮮にある。同時に貢鮮は華の属国なのだから、華の責任も逃れ得ないものである。


・ここで大環王国からは賠償を求めると共に、再発の防止を要求するものである。


・賠償品としては生糸と絹を、今後30年間華帝国から大環王国に提供すること。


・また、再発の防止の為に貢鮮王国は解体しろ。3ヶ国に分立することを求める。


・1国は珠淵王に与える、旧新羅領を領土とする。


・1国は李埈鎔を王として大院君を後見役とする。領地は旧高句麗領とする。


・1国は金玉均を王とする。領地は旧百済領とする。


・1ヶ月以内に了承の返書を届け、華帝国から各王への安堵状が下されない場合、渤海を遡り帝都をドラゴンで焼き払うものと心得よ。


・丁汝昌は証人として大環王国で預かる、故に副官2人を使者として華に送るものとする。


・1ヶ月間は貢鮮王都にて返答を待つ。





 華帝国に許されるのは提供する生糸や絹の量と期間の交渉だけである。


 逆に、生糸と絹くらいなら飲みやすい条件ではある。


 珠淵王は暗愚の王で、実際は正室の閔妃が新華派として政治を簒奪している。

 華帝国としても、ダメな珠淵を左遷するにやぶさかではないだろう。

 大環としては華から遠く、領地を接しない場所に置いておきたい。


 李埈鎔は大院君の孫にあたる。大院君の長男の息子である。ちなみに、珠淵王は大院君の三男になる。大院君本人は打倒西洋を過激に主張する人物である。それ故に、事なかれ主義の珠淵王が気に入らずに李埈鎔を王位につけたがっていたのである。

 ポルトガルに迷惑している大環としては、この連中に精々暴れておいて欲しい所だ。


 金玉均は名門の一族で王家を姻戚支配していた連中の御曹司。環・華・貢の三国連合による西洋打倒を主張する人物である。


 ここで家康が考えているのは半島の安定などではない。


 正反対で、半島にはトコトン混乱していて欲しいのだ。


 なまじ統一国家にさせるのが間違いで、分裂状態において精々身内同士で喧嘩させておきたいのである。

 無能な暗愚の王に統一国家を任せるのが間違い。彼を小国に左遷しておいて、ライバル達を前に出して好きにさせてしまう。


・暗愚故にフラフラするだけの王。

・打倒西洋!と叫ぶ強引なだけの元気な爺さん。

・大環に留学経験のある連合派の俊英。


 絶対にコイツラは仲良くなど出来ないのが確定しているのだ。現在でさえ徹底的に足を引っ張り合っているのだから。

 だったら、もっと盛大に喧嘩をさせておけばいい。大環になど干渉する余裕が無ければそれでいい。

 大環としては、半島には関わりたくない。


 華帝国としても、外国に簒奪されて弱っている。半島で混乱が生じても、全面的な介入など無理だろう。

 特に今回艦隊を叩いたから、艦隊の再建には相当の費用と時間が必要だ。

 華帝国がチンタラしている間にポルトガルやオランダ、イギリスに徐々に分割支配されてしまえばいい。華がなまじ巨大だから相手にしにくいのだ。

 いくつかの小国に分裂してしまうのなら、大環にとって個別に叩くのは容易い話だ。


 イルマータ領を実質上の代官状態にしておくのは、大環王国として北方領を含めた異民族を支配した上で統一国家を維持するためだ。それで国力が増すのである。


 対して、大陸や半島には精々分断された国家であって欲しいのだ。外国に面倒事が向く前に、目の前の国内で争い事をさせておきたい。


 敵が弱る事こそ大歓迎。

 その間に大環を強くすればいい。


 外国勢力には精々大陸を分割してもらって構わない。

 どうせ、外国人勢力が極東に派遣できる兵力など多寡が知れている。補給を考えるのならバカみたいに火薬を投入することなど無理なのだ。

 大環王国が統一国家として百万以上の軍勢を動員できるなら何も恐れることは無い。


 大環王国の繁栄。

 望みはそれだけ。


 半島が先々如何に貧しい地域になろうが、それは連中の都合だろう。

 華帝国が分裂しても、それは連中の都合だろう。


 そもそも、何度も支配民族が変わり、風俗や風習など何度も変わっているような場所だ。

 千年以上確実に歴史を遡れる大環王国のような安定している国家とは訳が違う。


 西洋文化?そんな物なら北方の文化で十分間に合っている。

 ポルトガルから胡椒を買わなくても、大環が滅ぶことなど無いのだ。

 精々、絹を外国から入手するくらいしか用などありはしない。

 ましてや、伴天連など余計なお世話。


 この徳川家康の腹の内、国王陛下は良く知っているのである。


 織田や豊臣は外国にかぶれて、伴天連を受け入れた。

 その結果として鉄砲は入手できた。現在でなら廃れているが、かつてはそれなりに珍重されたものだ。

 他にも金平糖やカステラ、テンプラなども入ってきた。

 しかし、それでどうした?


 銀は大量に流失したし、奴隷として多くの大環の民が売られて行ったではないか。

 今や連中は生糸の利権まで手にして、好き放題やろうとしている。


 奴隷貿易を知った秀吉が慌てて、伴天連禁止令を出したけれどすでに遅し。

 なまじ伴天連に布教させた結果、島原のごとき不始末だ。


 南方諸国では伴天連共に国を取られたと言うではないか。琉球王のように交易を断った方が余程正しい。


 ポルトガルがこれ以上の侵略を狙うというのなら、東洋の拠点だというマラッカなる国まで征伐に行かねばならぬ。


 海戦に勝利した家康は、仁川から上陸して王都漢城に入った。


 既に抵抗する兵もなく。

 既に国王は都を捨てて逃げ出した後だった。

 愚王は妻妾たちを連れて北方の平譲に逃げ落ちたという。


 家康が入城した所、住民たちは大いに彼を歓迎したという。


 結局、家康はそのまま華帝国からの返書を現地で受け取った。


 華帝国側では家康の要求を全て呑んだ。


 それだけではない。


 華帝国は重臣である李鴻章を派遣して来た。


 彼は言うのである「外国の侵略を防ぐに共同で事に当たりたい。環華同盟にて共同戦線を張りたいが、宰相閣下のご意向は如何に」


 家康は即座に答えたそうだ。


「外国に侵略されて困っているのは華であって、大環は自力で退けている。

 我々は華を必要としていない。

 貢鮮すら満足に従わすこと叶わぬ華。

 その華との同盟に、一体何を求めろという?

 我々は自らを自らの力で守り抜く」


 李鴻章は、ただ恥じただけだったという。

 さて、次回はなんとか三番目の主役というか勇者の一行が登場します。

 悪しき竜を使役して周辺の国々を焼き払う魔王に困ったから、異界から勇者を召喚してみましたというお約束の奴ですね。

 そりゃ外国に行って街を焼くのだから、やられる方からすれば貴志なんかは魔王です。

 魔王退治は勇者のお仕事です。

 召喚された現代っ子勇者vsいにしえの竜殺しの英雄

 やっと、タイトル通りの展開・・・か?


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