24.モンスター大戦Ⅵ
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とある地方で伴天連術師が陰謀を巡らせ、モンスタートレインを引き起こす。
万余のオーク、オーガ。数百の下級竜、そして森の主ドラゴン。挙句に謎の西洋の悪魔を打倒す事に成功した一行。
だが、事件は現場だけではなく、王宮の会議室でも起きていた!
モンスター大戦、衝撃の結末!
岩城家はお家断絶。
岩城と田崎は市中引き回しの上で獄門晒首。
岩城家一門も連座と見做して死罪。
今後も伴天連の捜索には手を緩めない旨が改めて告知されている。
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レキュアとのドラゴン談義を終え、終わりつつある解体を熱い眼差しで見守っていた王宮の長老魔法師と魔法学校の校長。
そこに1人の少年が近付いて行った。
そして、彼はおもむろに土下座する。
「お願いです、俺は強くなりたいです。自分は一月前にAランク・パーティになって強いつもりでいましたが、全然強くありませんでした。森で仲間を失って・・・守り切れもしませんでした。
お願いします、俺を王都の魔法学校で修業させてください。俺は竜殺し様の元で修業したいです。俺の魔法が王都の学校で通用するか試験してください。お願いします」
「ほう、Aランクまで行ってもまだ学校に来たいのかね?さて、そのランクなら十分稼げるのではないかな」
「でも、ダメなんです。Aランクでも強さが足りません。自分は竜殺し様のように強くなりたい。仲間を見殺しにするような実力ではダメなんです」
「強くなって、ハンターとしてパーティの仲間を守りたいのかね?」
「多分、違うのだと思います。今日、神々のごとき戦いの中で俺は何もできませんでした。あの方々は俺のふるさとを守って戦っていたのに、俺は城門で震えているだけでした。俺も強くなって、皆さんと共に戦えるようになりたいです・・・。お願いします」
「ほう、ハンターを辞めるというのかね?」
ここで、校長に少年の相手を任せていた長老魔法師が口を挟む。
妙な事を言い出すAランクだというハンターに興味が沸いたようだ。
老人が駄々をこねる子供に言って聞かせるように。
「それはカネにはならんぞ、苦しく、厳しいだけの人生じゃよ。僅かばかりの己の誇りだけの為に、いつでも命を失うことになるぞ?カネの為ではのうて、縁もゆかりもない他人の為に死ねるのかね?」
2人並んでいた老人が揃って疑問を投げかけて来る。
「それでもいいです。ハンター稼業はカネの為ですが、命はいつ無くなってもおかしくないです。でも、俺はそれじゃなくふるさとの為に、この国の為に戦いたいです」
「ほう、小僧が抜かしよるのう。じゃがのう若造。これを受け切れるかの!」
全く戦闘系の術師には見えない文官とおもわれた長老が、一転して俄かに殺気を漲らせ、強力な雷撃魔法を打ち込んでいった。
轟!
瞬間的に壮絶な閃光と爆音を響かせる。
しかし、雷撃は咄嗟に突き出した水の防壁を纏う少年の左腕により斜め方向に逸らされる。そして、次の瞬間には少年は老人の背後を取っている。が、少年の左腕は焦げて酷い状態だ。
「ほう、受けずに逸らしたか。
一応、Aランクなりには実戦を踏んでいるようじゃの、咄嗟に左腕を犠牲にしても背後を取るか。お主が正面から攻撃を受けていたら死んでおったがのう。
まあ、よかろうて。小僧、名を何と言う?」
「はい、太助です」
「ワシは王宮魔法師相談役。元筆頭魔法師マーレイ・アンドレッティじゃ。お主の命を国に差し出すというのなら、ワシの名で魔法学校に推薦を出してやろう」
「はい、お願いします」
「あーあ、長老の爺さんも相変わらずタチ悪いな」
「いや、あのガキがアホだろう」
「好き好んで地獄になんてなあ」
「校長が手を抜いているという説は無いか?」
「ありゃ、元からタヌキだしな」
「あー、コラ若いの!無駄口を叩いておらんで、お前らしっかり指導せいよ!お前らにも講師料を出しておるのじゃぞ」
タヌキ呼ばわりされた校長が、追討軍の若いモンに文句をつける。一応は講師料が支払われているのは事実だ。一発ヘマを踏むと、命が消えるような過酷極まりない教練の師範代の対価に見合うのかは別として。
「いや、俺らの日常って手を抜いたら即その場で死ぬから。しっかりもクソも無いから」
「そうそう、理不尽って言葉をどこかに置き忘れた職場だし」
「んだ、んだ。考え方の基準が“竜殺し”なのは絶対におかしい」
「毎日、何で生き残っているのか不思議に思う・・・」
自分など足元にも及ばないような精鋭達が本音?を晒しているのを聞いて、ちょっとだけ後悔しかかった太助であった。
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現場で事件は起きているとしても、現場で起きた事件を分析する後方部隊は勿論存在する。
王宮では軍事筋の幹部が総員集合している。
その参加者が、全員揃って緊張が隠せていない。決戦避けられずと判断して、幹部連中が集合して前線の通信を王宮で傍受しているのだ。
中継で入って来た音声を拾うと。
第1区の魔物は後方から来たものだとして。
ゴブリン、オーク、オーガが合計10,000近く。
昆虫系が2,000。
大鰐その他で各種200。
ティラノとトリケラで200、ワイバーンで200。
戦闘開始当初でこれだけの敵が確認できている。
亀田藩の魔物の森というのは、決して広大な場所ではない。それにも関わらずにこれだけの魔物が存在していた。
参謀本部の人間達は困ってしまった。余りにも常識外れの魔物の数である。異例中の異例としか言いようがない。
普通に考えて200ものワイバーンに攻められるだけでも、街がいくつも壊滅してしまうだろう。ティラノの100でも相当に危険だ。
普通の戦力動員の目安としては。
Aランクの6人パーティでオーガの1~2匹くらいなら普通にイケル。
それがオーガ10~30匹くらいなら、フル武装の正規の騎士団が100~150人くらいで束になってかかる。それなら制圧できる。
では、ゴブリン、オーク、オーガ合計10,000匹近くでは?
王国軍でも後方要員も入れて、全部で10万人位は動員しておきたいところだろうか。
昆虫や大鰐でそこに2,000匹追加と言われると、もう1~2万人位欲しい。
普通の軍師・参謀なら、そうソロバンを弾く。
軍学校ならそう教えているのだから。
そこにさらに、ティラノとトリケラ、ワイバーンで400匹追加となれば?
慎重な指揮官なら広範囲に包囲網を引くために追加で10万人を動員しておいて、決戦部隊に2~3万人程度を投入するだろう。空から来るワイバーンだと1ヶ所に陣地を構築しておいても意味がない。複数の拠点を作っておいて、ワイバーンが来るのを待ち受けるようなことになってしまう。必然的に人数が必要になってしまう。
ところが、今回現地にはまともな戦力を用意出来ていなかった。
下手に大軍を動員しているのが察知されて亀田藩の暴走を引き起こすわけにはいかないから、内密に亀田藩の内定を進めつつ、同時に魔物の領域で何が起きているのかも調査して。
内密に進める為に動員できていたのは、正体を隠した公儀隠密衆30人と戦闘要員として追討軍40人だけ。
戦闘開始時点で魔物との最前線になった城門の附近に配置できた一般の戦力は、藩兵と義勇軍の140人とハンター100人だけである・・・。
当日に決戦必至となって、王宮では慌てて動員が掛けられている。
服部忍軍は瞬間移動のできる術者によって、40人程が戦闘開始までに市街地に追加されている。
だが、瞬間移動できる術者は別の作業に入る指示が出て服部忍軍の増援は中止。
別の作業とは、島原でも戦功をあげた富士で訓練を受けた魔法師部隊が急遽集合を掛けられたのだ。負傷などで実戦不能な者を除いて270人程に集合が掛って三々五々王宮に集合し始める。
実戦用装備の用意を整えて暫定的な部隊編成を行って、イザ前線に移動というあたりで対ドラゴン戦闘が始まってしまって移動は中止。結局、彼らの戦線投入は見送られた。
また、王都にいる戦闘要員では無い魔法師にも従軍命令が発せられて、急遽彼らも王宮に集まっている。研究職や学園の教授連中だが、長老に率いられて参陣する手筈だった。
彼らは戦闘系魔法が不得手で研究職をやっている者や老齢で引退した戦闘職の魔法師達になる。
そして、集合を終えていた彼らは戦闘終了後にドラゴンの解体・回収に投入されて行く。
長老の元筆頭魔法師マーレイ・アンドレッティが逸早く現地に到着した理由である。
もし、児雷也、才三、佐助が討たれた場合の前線指揮は、元筆頭のマーレイが受け持つ予定でもあったのだ。あくまで貴志は対ドラゴン戦に備えさせる必要があるので別枠になる。
他には、近隣の大名衆・代官領の軍勢も動員が掛けられたが、移動開始は翌朝になる見通しだった。
そうした努力の割には結局の所、ごく少数の迎撃部隊で、予想外の大軍団を迎え撃つ羽目になったのである。
追討軍が事前に魔物の領域を調査していた段階で、既に相当な戦力が確認されていて、彼らは厄介な存在であるティラノ、トリケラ、ワイバーンを重点的に刈り上げて貴重な魔石の確保に努めていた。
事前に150匹以上は間引いていたのだ。唯一の戦力的な救いは、この潤沢な魔石の存在であった。
しかし、王宮で戦闘の推移を聞いている軍幹部連中としては、大挙して押しかけて来る敵の多さに静まり返り状況の推移に聞き入っていた。
万単位で押し寄せたゴブリン、オーク、オーガ混成軍の報に真っ青になり、追討軍の潰滅を覚悟した。
彼らの魔法砲撃で撃退しつつある報告に狂喜して。
そうしたらティラノとワイバーンの進撃が報じられてまた蒼白になって。
「30人でティラノとワイバーンを300体まとめて相手か?実戦で??」の現場からの悲鳴に似た叫びには、幕僚団からも同じように悲鳴が上がった。
青と赤の魔女が投入されることにひとまず安堵して・・・。
その直後に通信機から流れた“ゴーッ”という大轟音に思わず耳を塞いで。
その後、淡々とワイバーンを始末しているらしい命令が聞こえて来て。
ヤレヤレ、と思ったら最後にはドラゴンが登場してきて、未知の魔物まで現れてきて・・・。
王都の会議室でも、十分に事件は起きていたのである。
幕僚団は全員、汗まみれになりグッタリしてしまったのだった。
現地・王宮を問わず元気一杯だったのは研究職の魔法師連中だけで、この連中は“それ!ドラゴンの解体がまたできる”と戦闘をせねばならないという悲壮な決意が一転しての大喜びだった。
軍幹部、王宮の閣僚は極めつけの憂鬱だった。
竜殺しの少年が竜を殺すというのは―誠に非常識ながらも―流石に最近は少し慣れて来たという感がある。
しかし、地上を進軍してきたティラノの大群を2人の魔女で瞬殺。
40人の魔法師だけで、万余のゴブリンやオーク、オーガを撃退して、なんと200ものワイバーンを撃退させた。
そして未知の羊の化け物・・・・。
起きた出来事が異常過ぎて、何をどう解釈すればいいのか付いて行けないのだ。どこから突っ込めばいいのやら。
何故、さして広くもない場所にこれほどの魔物がいたのか?
数もそうだが、質も酷すぎるではないか!
それを何故たったの40人でこれを撃退できるのか?
こんな事が同時に異なる場所で起きたらどうなるのか?
喧々諤々たる大激論の末。
ティラノやワイバーン、異国の魔物へ対応できる高度な魔法戦闘集団を2,000名規模まで拡大。
西国と王都に各1,000名を配備し、将来想定される異国からの進攻に対抗する。
その為にある程度魔法の才能のありそうなものを、片っ端から訓練してみて適正を見る。
現在、王国軍所属者、領主軍所属者、魔法学校在学生、ハンター学校在学生に限らず在野の者でも使えそうな者なら部隊に採用すべし。
前線指揮官は通常の武将ではなく、魔法師から選抜せざるを得ないから魔法師の指揮としての養成も行う。
また、通常部隊員でも魔石を使う事で放出系魔法が使える者を選抜して、予備部隊創設をしようということも決議されている。
現状の戦力が弱体に過ぎるという痛切な認識。
今まで余りにも組織立った運用をしなさ過ぎたという魔法師の扱いへの反省。
大慌ての泥縄の感が強い。
そうは言ってもやらない事にはどうにもならない。
現実に対応できなければ、この国の人間は死ぬだけだ。
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かくして、貴志が推薦状を出して王国軍入りした10人は富士の演習場へ改めて送り込まれ。
ハンターになっていた優等生2人組も、強制徴用されて富士へ。
前者は“これでエリート中のエリート部隊入りできる!”と大喜び。
後者は“また、この訓練かい!気軽にカネ稼いでいたかったのに・・・。”
ちなみにこの余波で、なんと黒奈が魔法学校の師範代に狩りだされる始末であった。
追討軍の隊員達は小隊長で正5位、隊員で従5位に列せられた。
彼らは緊急時となればいつでも王宮で謁見する権利が与えられたことになる。
これは上級貴族並の待遇である。
弱小大名よりも権威は高いという扱いをされている訳だ。
領地無しの旗本扱いで給料は安いが、名誉だけは非常に高いという処遇をされた訳である。
彼らは演習場にいる時は貴志と同じ高官用の食事を食らい、貴志の配慮でいい酒を飲み放題。住居は兵舎で家賃無し、衣類は官給品で全部賄える。
武器類は好きな物を申請すれば、貴志の決済で何でも調達できてしまう。貴志はそうした面には趣味の人間だ。
そして、神社の警備についている時には公爵家や伯爵家の食事にありついて、時間が許せば温泉まで入れる。
彼らは衣食に関しては確実に並の貴族よりも良い状態にある。
そして、竜の緋羽織を羽織っている者ともなれば、若い婦女子からは憧れの対象である。
子供の目からは男女を問わずに英雄扱い、武家の子弟からは垂涎の眼差し。
隠密働きではなく、魔物対策要員だから顔を知られていて、庶民からは完全にスター扱いされている。
もっとも、日々一歩間違うと死亡するような訓練に明け暮れる羽目になっているのだが。
“体力消耗するからちゃんとしたモノを食わないと駄目だろう?体力ギリギリだと食欲無くなる時があるから酒飲ませないと食えないだろうし。
武器?俺達が負ける時には魔物が街中を蹂躙する訳だけれど、その被害と俺らの武器代とどっちが安いの?”
鷹揚な部隊長である。
そもそも、部隊長は戦場でも、訓練場でも、常に美人の側室を侍らせている訳で・・・。
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魔法学校での訓練は、基本的に小隊長達が交代で行うようになって、貴志は富士の演習場に張り付くことが多くなっている。
異国の魔物は彼にしか召喚できなかったというのが大きい。
逆に、ティラノやワイバーン、オーガ、オーク位なら小隊長達でも訓練用には問題なく口寄せする。彼らは凶悪な切り札を召喚するのだ、小物位ならどうということは無い。
そうなると、学校での戦闘実戦講座というのはオークやオーガは入門用。ティラノやワイバーンとタイマン張って当たり前と言う次第になって行く。
“無理”と書いて“あたりまえ”と読む。
教官達を称して学生達が評した台詞である。
Aランク・パーティ5~6人でオーガ1匹が当たり前、2~3匹相手に出来たら大成功。
それ以上なら逃げ出せ。改めて複数パーティで出直すというのが基本である。
カネを稼ぎに行くのがハンター稼業なのであって、命を捨てに行くのではない。
ハンター学校なら、そう教える。
この魔法学校の実戦講座なら1人でワイバーン2匹相手にできれば優等生。
富士に送り込まれて修行の結果次第では、さらなるエリートコース入り。
1匹なら並評価。
相手にできなければ落第。
オーガの1匹相手に10分以上かけたら話にならない落ちこぼれ。
こうなってしまう。
この教官達は何を無理だと称するのかワカランというのが学生達の実感だ。
「いやー、俺達30人でワイバーンの200匹とティラノの100匹の相手は無理だったわな。ティラノの100匹をシェイラとレキュアが始末してくれて助かった」
暫く任務に就いていたという教官達が姿を見せて、生徒の前で突拍子もないことを言いだす。
「あの戦いは神々の戦いでした・・・」
「後始末の解体は大変だったねえ」
遠くを見るような目で述懐する少年と大変だったなぁと追随する校長が登場して、一体何をしていたのかと訝る学生達。
「あー、諸君。今度、亀田からAランクハンター太助君が転入することになった。
元老マーレイ・アンドレッティ卿の推挙を受けている。
彼は若くても実戦経験は豊富だ。皆も彼の経験は参考になるだろう。
君達は一流の魔法師になるのでは困る。超一流の魔法師として巣立って欲しい。
その為に厳しい訓練をしてもらうのだ。
いいかね?やる前から自分の限界など作るな。
先達は遥かな高みに到達して、さらなる高みを目指しているのだ。
君らはそこに追いつく義務がある。努々それを忘れること無きように」
「太助です。自分はAランクになって一人前のつもりでした。
でも、本当に必要な強さを自分は持っていませんでした。
俺は追討軍の皆さん方のように強くなりたいです。
自分の仲間を殺されないように。自分のふるさとを、自分の国を自分で守れるように。
俺は強くなるためにここに来ました。宜しくお願いします」
「元老様の推薦だって・・・」
「先々代の筆頭様だろ?」
「どうやって・・・」
「Aランクの奴が来たのか?」
「なんでAランクまで?」
「あの教官殿、レキュア様とシェイラ様とは基礎理論講座のお2人でしょうか?」
在校生が訝し気な顔で師範代に挙手して質問する。
「おうよ、あの2人こそ大将閣下以前は最強だったからな」
「えっと、自分は基礎理論も受講しておりますが大変にお優しい方ですが?」
「そりゃ、閣下の側室だしな。それらしい振る舞いくらいするだろよ」
「えっと、ティラノの100匹を始末したのですよね?」
「それだけではなくワイバーンの200匹にも止めを刺しておれらます。
あの御二方は女神のごとき権能を振るわれて、お味方の窮地を救われました・・・」
「太助君、キミは見ていたのかい?」
「はい、城門でただ震えて見ていました。Aランクハンターの自分では何も役に立ちませんでした」
「一体何があったの?」
「ゴホン。詳細は別途通達のあるまで伏せられておる。余計な詮索は禁止である」
「申し訳ございません・・・」
「一体何が・・・
「何だろうな」
「トンデモナイことだろうな」
かくして魔法学校の実戦講座は、いよいよ阿鼻叫喚の脅威の度合いを増した講座となって行くのである。
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さて、既存の軍人や学生達の底上げは一応の算段が付くとして。
やはり、在野の中から使える者を採用するということも重要だろう。
誰でも考えつくことではある。
では、埋もれている才能を如何に発掘するか?
そも、学校に来るような人間なら生活に余裕がある家のものでしかない。
それ以外の存在を探すとなると、途端に困難になってしまう。
まずは手っ取り早く高額賞金でもかけて武芸大会でもやってみるかという案が採用されて、実施される運びになった。
優勝賞金3億を掛けての大勝負を半年後に実施する。
予備予選を代官領、公爵領で行い。予備予選突破者には旅費を王宮負担で王都まで。
その後の本予選は王都にて実施される。
また、優勝者には開国貴志との模擬戦の権利も与える。試合の内容次第では即エリート部隊に採用する。
ルールは相手を殺す以外の事は何でもあり。特別な制約は一切なし。
そう王国中に宣伝されたのであった。
このイベントは確かに大いに効果的であった。
優勝したのは15才の山伏。名前を与楽という。
この少年。
なんと優勝後の模擬戦で貴志を完全にノックアウト。
貴志は昏倒して戦闘不能に追い込まれている・・・。
さて、次回は第2の主役が登場です。まあ、ヒロイン役の方は既に顔出しは済ませていますけれど。