表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第二話~昔の姫~

「姫様ーっ! 何処にいらっしゃるのですかぁーっ!?」


メイド服の裾を揺らしながら、私専属の使用人が私を探している。


「ふふふっ。」


そう簡単には物置を出ないんだから!

扉の隙間から使用人を眺めるのに飽きるまで、ずっとここに居るんだもん。


「お父上がお呼びになられているのですーっ!!」


えっ、お父様が?


「ここだよー、こっここっこぉ~!!」


お父様が呼んでいるのなら、話は別だ。

使用人をからかうより、ご飯の時以外は多忙で会えないお父様と話せる事の方が嬉しい!


「姫様! こんな物置なんぞに入ってはなりません! お召し物が汚れてしまいますよ?」


「いいじゃない。そんな事よりも、お父様が私を呼んでるの?」


「良くはないのですが……はい、お父上……陛下がお部屋で姫様をお待ちになられています。」


なんだろう?

どこかに連れていってくれたりするのかな!?




コンコンッとお父様のお部屋の扉を叩いた使用人は、中からお父様の。


「誰だ。」


という威圧的な声には屈せず。

数えきれない程に繰り返してきた……そんな、機械的口調で。


「白雪姫様をお連れしました、ジュードです。」


「入れ。」


「お父様ぁっ!!」


お父様が入室を許可すると、私は使用人が扉を開けるのも待てず、突進する猪の様な勢いでお部屋に飛び込む。


「白雪。」


暑く硬く、そこらの兵士よりも遥かに勝る胸板に抱き着いても、その体はびくともせずに私を受け止めてくれた。

お母様が1年前に亡くなってから、お父様のお仕事は倍に増え、こうやって会える機会が本当に少なくなって……正直寂しい。

だけど、我が儘を言ったらお父様が困るって、9歳だからもう知っている。

それでもこうして、たまーにだけど食事以外で会う時間を作ってくれるお父様が大好き。


「ごめんな。一緒に外出するどころか、遊ぶ事すら出来なくて。さぞ、寂し……。」


「ううん、だいじょーぶ! 使用人達が遊んでくれるもの! そうよね、ジュード?」


「は、はい。毎日の様に元気に遊んでおられます。」


少し困り顔のジュードを見て、お父様は少しだけ微笑んだ。

この後私の周りには、お父様と仲の良い伯爵の令嬢『クララ』と『クレア』という名前の双子が、常にいる様になった。






「クララとクレアは私よりも一つ年上で、友人だけど姉が出来たみたいに……一人っ子の私には嬉しかったの。」


「そうなんだね。そっか……白雪姫にもお友達がいたんだ。」


橙がへにゃっと笑った。


「おいっ、橙! 姫様に失礼だろ!!」


そんな横で、紫は眉を吊り上げて怒る。


「いいのよ、紫さん。」


「ごめんよぉ、白雪姫……。」


「橙さんも気にしないで。ね?」


「う、うん。」


白く清潔なシーツが敷かれた木のベッドの上で、脇にイスを置いて座っている小人達と仲良く話している今。

過去の……6年前の私には、想像も出来なかった。

それにしても……。


「私達、すっかり仲良しになったよね。」


出会ったのは半月前だと言うのに、私と7人の小人は普通に打ち解けている。

むしろ、友人と呼べる関係に……。


「俺はお前と仲良くなったつもりはないぞ。」


「青!! 姫様、すみません。青の奴があんな口を利いて。」


「赤さん、青さんはツンデレだって分かってるから大丈夫。」


「おい、ツンデレって言葉の意味は分からんが、いい気分にはならねぇぞ?」


「はいはい。ツンデレって言うのは、良い意味だから大丈夫。」


「本当か?」


「本当よ。」


嘘だけど。

嘘だけど、青は少しだけ嬉しそうな顔をした。

おじいさん……というかおっさんというか、兎に角小人達の笑顔はなんだか癒される。

……しかし、この半月で私が喧嘩の仲裁役になると、誰も思わなかっただろう。

何故こんな事になったのかは、半月前の自分が行った事に関係がある……当たり前だが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ