ある日突然私は彼女らしくなった……かな?
「とみ(・・)ちゅあ~ん!」
「黙れ、円花」
今日も朝からとみちゃんの攻撃は容赦ない。
ただのデコピンのはずなのに、普通の人の何万倍も痛いよ……。
「乙屋さん。これ、どういうこと?」
私が小さくなってうずくまっていると、クラスの女王様、が話しかけてきた。
「これ、乙屋さんよね?」
が私の前に突き出してきたのは、昨日発売の週刊誌。
『一野雫の彼女発言は本物! お相手は女子高生か!?』
開かれたページには、そんな見出しがついていた。
サングラスをした雫くんと、その隣に立っている女の子……私!?
まさか週刊誌に撮られていたなんて……。
だから雫くんに言ったのに。
「雫くんとどういう関係なの? 親戚なら許してあげる。でも彼女とか言ったら、わかってるわよね?」
ひぇぇぇぇぇぇぇ!!!
恐い、恐い、__めっちゃ恐い!
「ちょっとね! あんたたち!」
「なによ? 愛生は関係ないでしょ?」
「大ありよ! 円花は友達なんだから!」
とみちゃん……。
「人のプライベートに踏み込むな! 雫くんと円花がどういう関係でもいいでしょ! 雫くんが選んだんだから」
私は何も言い返せなくて、ただとみちゃんの後ろで小さくなっていた。
本当は私が言わなきゃいけないことなのに。
私が雫くんの彼女だ、って。
私たち二人のことだから口挟まないで、って。
「ありがとう、とみちゃん」
「いいって。そのかわり、これから何を言われても、気にしないこと!」
少し照れた様子でとみちゃんは笑った。
「とみちゃん。……大好き」
「それは雫くんに言ってきなよ」
「そうだね」
少し冷たくて、素っ気ない彼女。
でも、かっこよくて時たまかわいくて。
私の一番の友達。
放課後になって、私はいつものように昇降口へ向かう。
校門のところにはまた雫くんの姿があった。
また大声で叫びそうになったけど、とみちゃんの言葉を思い出してぐっとこらえる。
「雫くん!」
私が名前を呼ぶと、雫くんは目を見開いて私の方を向いた。
「どうしたの? 昨日はあんなに必死になってたのに」
「ダメですか? 彼女が彼氏の名前を呼んじゃ」
何かのドラマで、女優さんが言っていた台詞を真似してみた。
それに気づいたのか雫くんは少しクスッとして、私の手を握る。
「彼氏彼女なら、これくらいはしないとね?」
やっぱり雫くんには勝てません……。
「円花ちゃん。放課後デートしよっか」
「週刊誌見てないんですか!? 写真撮られてたじゃないですか!」
またいつもの雫くんペースに持っていかれて、私はずるずると引っ張られていく。
「だって、円花ちゃんは俺の彼女じゃん? デートくらい、ね?」
斜め上から聞こえるわがままを飲み込んで、雫くんに引っ張られるままに歩く。
隣で王子様が笑う。わがままで強引な、|雫くん(王子様)が。
ううん、|雫くん(私の彼氏)が。