【25】炎陽
「リロードっ!」
SAIGAから最後の薬莢が排出され、これもまた背中に一応とひっかけておいたひと際大きなマガジンを取り出し、交換する。
「すげぇや! ボス、あんた魔法でも使えるのか!?」
「どうかな」
既に俺の眼前に広がる光景は地獄絵図、焼ける人間の臭いと、助かろうともがいてまだ無事な友人にしがみつき、共々焼け死ぬ亡者たち。
前に出ようとすれば”竜の口”、後ろに下がろうとしても燃え盛る天幕には次々と火が移って、そこから人間にうつり更に燃え広がる。
薬室に送り込まれた新しい弾薬を突き出してきた一隊に放つ。
先頭の三人が撃ち込まれた“ブレス”によって、彼らは体が内側から燃え広がる人生最後の感触を味わった。
盾や藁があればまだマシかもしれないが、完全に不意を突かれたこの攻撃にそこまで準備を回せるような連中はまだまだ後方の方だろう。
本体が追いついてくる前に一気に離脱する。
「こんなものだろう、離脱するぞ! 全員寄り道するなよ、一気に抜けてけ!」
俺がカバーしきれない位置を矢によって押しとどめていたタッツがこちらを向く。
「ボス、俺たちは!?」
「援護しつつ下がる。 タッツ、行け! 俺が最後だ」
先に二人を下がらせ、胸にかけられた最後のスイッチを取り出して、三度タップした。
目の前で地獄が爆ぜる。ちょうど俺たちを追いかけてくるための出入り口で、そこに押し掛けた兵隊ごと爆炎が飲み込んでいく。
「移動する、援護しろ!」
銃口を跳ね上げて伏せていた体を引き起こす。背中を見せて足を速め、タッツ達が引いた場所まで下がりまたSAIGAを覗き込んだ。
「……すげぇ」
「感心するのは後にしろ、行け」
荒れ狂う炎が空まで赤く染めていく。まるで陸に広がる血の赤が、空へ登って染めているように広がっていく。
戦場の死神が彼らの命を刈り取っては、黒煙になって空へと連れていかれ、彼らは雨となっていつか戻ってくるのだろう。
烈火逆巻く地上は既に地獄、天へ上がれた彼らはきっと幸せだ。
「聖戦士様!」
森の入り口まで戻ってくれば小さい影が慌てて草むらから出てくる。
「なんだお前まで来てたのか!?」
「あったり前でしょ! というか僕だけ残していかれた方が怖いよ!」
「それもそうか!」
コニューは必死の形相で俺の周りで囃し立てる、緊張感無くなる奴め。
「ならついてこい、走れなくなったら置いてくぞ!」
「えっ、えぇ、えぇええええええええええ!!」
「行け行け行け! ホフキンスだ! 目指して走れ!」
彼女の背中を叩いて走り出させて、俺は最後に森の入り口で振り返る。
「グレネード!」
胸に括り付けられていた最後の戦友……いや先達か。
1980年頃よりずっと今日この日まで倉庫で出番を待っていた彼を投げ放ち、俺はその場を後にする。
あぁ懐かしい。
小高い丘から見下ろす紅は、オペレーション・マーキュリーハンマーズでアルカイダキャンプにF-35のCASを呼んだ時を思い出す光景であった。




