10-04
「ほかにもいただろう? ドクター・オラキル」
ヤモリのような細い瞳でわたしを睨んだ。
コルド星の代表で、銀河連合軍の参謀を務めているズメイという男だ。
「虚偽の報告は極刑に値するぞ」
ジランダ議長が、いかつい声でつけ足した。
わたしは仕方なくキリ星の攻撃船の話をした。すると貴族院は、火の付いたような大騒ぎとなった。ジランダ議長とズメイ参謀だけが、落ちついた顔を互いに見合わせている。
「間違いなく、その船は残骸だったのだろうね?」
「キリ星人の死体はあったのか?」
「まさか、地球で生活していた痕跡なんてないよな?!」
貴族院たちの矢継ぎ早の質問に、わたしは慎重に言葉を選んでこたえた。
「遺跡のように古びた船がある以外、キリ星人たちが生活していた痕跡は見られません。生き残りはいないかと……」
するとズメイ参謀が、くつくつと笑いだした。
「きみはキリ星人をなめているよ。やつらは凶暴かつ野蛮、ゴキブリのような生命力で、我らの銀河を荒らしまくったのだ。そんな簡単に絶滅などするものか。
……地球人はどうかね? 彼らの姿はキリ星人とよく似ておるそうじゃないか。やつらこそキリ星人の成れの果てではないのかね?」
すかさずわたしは返答する。
「それに関しては、冷静な調査と分析が必要です。もし仮にそうだったとしても、彼らは地球人として五千年以上も生きているのです。もはやキリ星人とは、まったくの別種としてとらえるべきかと……」
「まったくの別種と? 銀河的にも著名な生物学者のオラキル博士ともあろうお方が、キリ星人のDNAを持つかもしれない地球人を、まったくの別種であると?」
ズメイ参謀が間髪入れずに反論した。地球人についてよく知っているようだ。
とっさに言い返そうとしたわたしを制して、ジランダ議長が言葉を続けた。
「わたしたちも、きみが帰還するまで遊んでいたわけではない。独自に地球人を調査していたのだ。彼らの歴史は常に戦争とともにあった。いま現在も地球のいたるところで争いを起こしている。性格的にも粗暴かつ強圧的。まさにキリ星人の野蛮な血が流れている証拠ではないかね?」
「地球人が、粗暴で強圧的……?」
ジランダ議長の言葉が、わたしの心を氷のように冷たくする。
確かにわたしは地球人の歴史について深く知らない。地球に降下する前は、外来生物の調査のことしか頭になかったからだ。
わたしが知っていると胸を張って言えるのは……。
たったふたりの子どもたち――。
ふと浮かんだトモミとアユムの笑顔が、わたしの凍てついた心を溶かしていく。
わたしは地球人とふれあったのだ。
貴族院のように宇宙からのぞき見たのではなく、その地に降り、その手でふれあい、心を通わせ友情が生まれたのだ。
「あなた方は、本当に地球人を知っているのですか……?」




