表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑の丘の銀の星  作者: ひろみ透夏
第8話 龍の玉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/61

08-01 龍の玉

 

 

 トモミは糸を切られた操り人形ように(ひざ)からくずれ落ち、そのまま気を失ってしまった。

 暗闇に(あや)しく光る不気味な目は、じっとこちらを見すえながら、ゆっくりと近づいてくる。



「まだ帰るには早すぎます。目的の物は、この先です」



 ステネコだ。

 妙に静かに、わたしを(にら)みつけるようにして言った。



「おどかすなよステネコ! トモミが気絶しちゃったじゃないか!」


 ステネコは、すくっと二本足で立ち上がり、冷たい目でトモミを見やると、


「この先は、あなたにさえ来ていただければ結構。ついて来てください」


 と言って、地下の泉に向かって歩きだした。



「ついて来いって……。まさか、その泉の中へ?」



 ステネコは何でもないように泉に足を踏み入れ、水の中を進んでいく。


 わたしはトモミを洞窟の壁に寄りかからせ、その手に懐中電灯を持たせると、背負った『全宇宙生物図鑑』を背中からおろした。



「パワーオン、オープン、ライト!」



 (ちゅう)に浮いた図鑑が、ぱたりと開き、ぼわんと音をたてて紙面(しめん)を光らせる。

 わたしが歩くと、図鑑は鳥のようにページを羽ばたかせ、(あた)りをぼんやりと照らしながらついてくる。その明かりをたよりに、わたしは急いでステネコのあとを追った。


 ばしゃばしゃと激しく水しぶきをあげて、地下の泉に駆け込む。見れば、水面から頭だけを出したステネコが、黄緑色に光る目でこちらを見つめていた。



「こちらです、博士」



 そう言うやいなや、ステネコの頭は、とぷんと水の中へ沈んでしまった。



「ま、待て、ステネコ! 早まるな!」



 あわてて駆け寄ったとたん、とつぜん水深が深くなっていたのか、わたしの体もすっかり水中に沈んでしまった。




 し、しまった! わたしは泳げないんだ……!




 水面に向かって必死にもがいたが、まるで吸い込まれるように底へ底へと沈んでいく。


 なんてことだ。

 こんな辺境の星の誰も知らない洞窟のなかで、(おぼ)れ死んでしまうなんて……。



 水面(みなも)に淡く光っていた『全宇宙生物図鑑』が、わたしを追って水中に飛び込んでくるのを見たのを最後に、わたしの体と意識は、暗い水底(みなそこ)に沈んでいった。





         *





 ふと目が覚めたとき、わたしは冷たい床にうつ伏せに寝ていた。


 水の中ではない。

 気持ちよく息が吸える。

 驚いたことに、髪も服もまったく()れていなかった。


 ただそこは、目を開けても閉じても変わりがないほどの、まっ暗な空間。



 わたしは……死んだのか……。



 そのとき、はるか頭上からばさばさと羽ばたく音が聞こえて、わたしは見上げた。

 夜空に輝く、小さな星のように見えてきたのは『全宇宙生物図鑑』。

 ようやくわたしのそばまで降りてくると、ぼんやりと足もとを照らしだした。


 白くつややかに光る、大理石の床だった。




「博士、ゆかいな仲間たちとの楽しい洞窟探検も、ここが終着点です」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ