表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑の丘の銀の星  作者: ひろみ透夏
第7話 洞窟で見つけたものは?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/61

07-02

 

 

 下り坂はさらにきつくなり、地面にうっすらと水が流れている。



「足もと気をつけて。滑りやすくなってる」


「じゃ、じゃあ、手を貸してよ」



 恥ずかしそうに出したトモミの手を取り、急な坂を下る。

 わたしはときどき、周囲をうかがいながら歩いていた。一本道なので迷うことはなかったが、案内役のステネコは、いったい、どこへ行ってしまったのだろう?



「ちょっと、ハカセ……。ごめん」



 下り坂が終わりを見せたころ、トモミがもじもじしながら言った。



「なに?」

「あのね。その……」

「どうしたの?」

「……トイレ、行きたい」

「いいよ。ここで待ってる」

「ええー、まっ暗じゃん。怖いよ」

「わかった。ずっと照らしててあげるから」



 言ったとたん、頭をはたかれた。

 トモミはわたしから懐中電灯を取り上げると「絶対について来ないでね!」と怒鳴りながら、洞窟の奥へ走っていった。


 懐中電灯の光の柱が左右にゆれながら離れていく。それを見計(みはか)らって、わたしは『全宇宙生物図鑑』を背中からおろした。



「パワーオン!」

 わたしの言葉に反応して、図鑑が(ちゅう)に浮く。


「オープン!」

 ぱたりと図鑑が開く。


「ライト!」

  紙面(しめん)がモニタのように光を発する。ぼんやりとした光が(あた)り照らした。


更新(こうしん)されたページへ!」



 ぱらぱらとページがめくられ、あるページでとまる。

 そこには、さっきはさんだクモの写真が載っていた。写真のクモは、もぞもぞとうごめいている。



「キーボード!」

 図鑑の前に、緑色に光る文字盤が現れる。


「まさか、こんなところで出会えるとはね……」

 わたしは文字盤のキーを叩いた。写真の下に文字が浮かび上がっていく。



「クモ――地球に生息する宇宙からの外来生物。アラクネ星人の古い祖先(そせん)にあたる……と」



 そこまで文章を入力したとき、洞窟の奥から光の柱がゆれながら近づいてくるのが見えた。


「パワーオフ!」

 わたしは急いで、図鑑を背中に背負った。



「ハカセー、すごいの見つけたよ!」



 トモミは大声をあげながら戻ってくるなり、わたしの手を取り走りだした。

 奥へ進むほど洞窟の天井は高くなり、広さもましていく。



「見て、あそこ!」



 トモミが懐中電灯で前方を照らした。

 そこには黄土色(おうどいろ)の地面に、エメラルドグリーンから鮮やかな空色へと変わっていく、美しい泉がひろがっていた。


 懐中電灯の光が水面(みなも)に反射して、洞窟の天井や壁全体に、ゆらゆらと揺らめくやわらかな光を()りばめている。



「緑が丘の下に、こんな世界がひろがっていたなんて……」


「ここが行き止まりみたいね。龍の玉はなかったけど、冒険の終着点がこんなステキな泉でよかった!」



 トモミがわたしの手を、ぎゅっとにぎった。



「この泉のこと、アユムには内緒にしない? ふたりだけの秘密の場所にしよう!」


「そうだね……。アユムはたぶん、怖がってここまで来られないだろうし……」



 満足気(まんぞくげ)なトモミとは裏腹(うらはら)に、わたしは少々、()に落ちなかった。



 ステネコは確かに『龍の玉』があると言っていた。



 世界を焼きつくした龍の玉が、本当にあるとは思っていない。だが、せめて伝説のもとになった『何か』をつきとめて、それをトモミとアユムへの恩返しにしたかったのだ。



「……そろそろ戻ろうか? アユムも心配しているだろうし」


 ふたりへの恩返しは、また考えるとしよう……。


 わたしは気を取り直して、うっとりと地下の泉を(なが)めている、トモミの背中に声をかけた。



「そうね……」


 名残惜(なごりお)しそうにふり返った、トモミの笑顔――。


 その笑顔が、一瞬にして凍りついた。



 クモを見たときとはまったく別の叫び声をあげて、トモミがその場にくずれ落ちる。




 驚いてふり返ったわたしの瞳に、暗闇の中で(あや)しく光る、不気味な目が映った。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ