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わたしの夢は冒険士 〜冒険者がエリート職だったなんて〜  作者: 蒼空ふわり
すくすく魔力増量中

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24/26

24. ひとつの区切り


 月が変わって、最初の神殿教室の日。そこでアレクから、重大発表があった。……ついにアレクも、今月で辞めることになったんだって。


 誰かが辞めるのは、これが初めてじゃないんだけどね。今回はアレクだったから、思ってたよりショックが大きかったんだよね。だって、魔法のこととか、一緒に練習する大事な仲間なんだもん。やっぱり寂しいよ。


 それから数日後、いつものように広場で集合してたときのこと。行くときは、わたしもハルトも寂しくて、ちょっとしょんぼりしながら広場に向かったんだけどね。

 でも、顔を合わせるなり、アレクのほうから「これからもこうやって集まろう」って言ってくれてね。もう、すっごく嬉しくなっちゃった。

 だって、アレクも、この集まりを大事に思っててくれたのかなって。そう思ったら、3人で照れながら目が合っちゃってね。思わず、みんなで吹き出しちゃった。


 だからね、これからもアレクとハルトとは3人仲間だし、洗礼式に向けて頑張っていくつもり。

 わたしもハルトも、行きに落ち込んでたのが嘘みたいに、帰りはやる気に満ちてたんだよ。やっぱり仲間っていいよね。


⊹ ⊹ ⊹


 それから、季節が夏から秋に移って、だいぶ涼しくなった頃。ついに、わたしとハルトも、神殿教室を辞めることになった。


 アレクが辞めたあとにも、次の月にはカイとコニーが辞めていったんだよね。2人はお金の計算ができればいいんだって。それで、わたしたちが教室に入ったときのメンバーは、誰もいなくなっちゃったんだ。

 だから今は、わたしたちが一番年上になったんだけど、なんだかあっという間だったなぁ。


 それぞれのお別れ会のときには、折り鶴を渡したんだけど、すごく喜んでくれたんだよ。でも、今までみんなに渡してたから、驚きは少なくなってたけどね。


 それと実はね、この3人には、これからも会える機会があるんだよ。アレクには毎月会えるし、カイやコニーも、市場のお店でお手伝いをしてるからね。買い物に行ったときに、会えることもあると思うんだよね。

 もちろん、教室で毎週会ってたのに比べると、やっぱり寂しくなるけどね。でも、また会えると思うと楽しみだし、ちょっとは平気だったんだよ。


 でも、いざ自分が辞めるってなったら、寂しさが違うもんなんだね。毎週通ってたから、行かないほうが変な感じがするくらい。

 お父さんは、まだ通っててもいいよって言ってたんだけどね。先にハルトから辞めるって聞いたら、すごく寂しいなって思っちゃったんだよね。

 もちろん、教室ではほかの子たちとも仲良くしてるけど、やっぱりハルトは特別だもん。小さい頃から一緒だし、魔力のことだって、最初から疑わずに一緒に楽しんでやってくれたしね。


 そして、ソーニャ先生に報告した日の帰り道。なんとなく、ソワソワしながら歩いていると、ハルトから嬉しい提案があった。


「レティちゃんも、今月で辞めるんだよね?」

「うん、そうするつもり」

「じゃあさ、折り鶴をお互いに作って交換しない?」

「わぁ、それいいね!」

「でしょ。作れるのが僕たちだけだから、作り合いっこすればいいと思って」


 たしかに。自分で自分の分を作るのも変だし、交換なら楽しいもんね。さすがハルトだね!


「うん、そのほうが楽しそう! ハルトは何色にするの?」

「僕は紫色かなぁ」

「紫色かぁ。お花あるかな?」

「どうだろう? 作るときに、アメリさんのお店に行って決めてもいいよね。レティちゃんは何色がいいの?」

「わたしはピンク色かな!」

「ピンク色ならありそう。それじゃあ僕は、一番は紫色で、なかったら別の色にしようかな」

「それがいいね。いつ作る?」

「僕はいつでもいいけど、早く作りたい気もするし……明日はどう?」

「いいよ、明日ね!」


 そうして次の日。朝からハルトと一緒に、アメリさんのお店に向かった。


 秋に入って涼しくなってきたから、上着を羽織ってるんだけどね。すごく可愛くて、お気に入りなの。少し前に、お父さんに買ってもらったんだけどね。

 なんと、わたしって思ったより成長してたみたいで、前に着てたのがきつくなってたんだよね。靴も少し大きめのを買ってもらったし、ちゃんと成長してるって感じがするよね。


 これも、広場で走ったり、腕立て伏せをしたりしてる成果なのかな? だって、前よりごはんを食べる量も増えてきたもん。

 ハルトには追いついてないけど、まだまだ背も伸びるはずだよね。冒険者になるためにも、もっと体力をつけないとね。


 しばらく歩いていると、角にあるアメリさんのお花屋さんに着いた。挨拶しながら扉を開けると、アメリさんが気づいて声をかけてくれた。


「あら、レティちゃん、ハルトくん。おはよう。またお花が必要になったの?」

「そうなんです。今回は、僕たちが教室を辞めることになって。それでせっかくだから、お互いに作り合おうってことになったんです」

「もうそんなに経つのね。最初に来たのが、ついこの間みたいなのに」

「そうですよね。僕たちなんて、お客さんでもなくて、突然来ただけだったのに……本当にありがとうございます」

「ありがとうございます!」


 わたしもちゃんとお礼を伝えた。アメリさんのおかげで、教室のみんなに素敵な折り鶴を渡せたんだからね。


「ふふっ、いいのよ。それで、今回は何色にするの?」

「紫色とピンク色にしたいんですけど、ありますか?」

「そうねぇ。ピンク色はあるけど、紫色はないわね。売り物ならあるんだけど、売れ残りがなかったから」

「そうなんですね。そしたら、水色ってありますか?」

「それならあるわよ。ちょっと待っててね」


 そう言ってアメリさんは、奥の棚の上に置いてある中から、ピンク色と水色のお花を抜き出して、それぞれを束にしてくれた。


 紫色のお花って、売り物ならあるんだよね。どれどれ。あっ、可愛いお花! 色も綺麗だし、これ使いたいなぁ。……そうだ! ハルトにはいつも助けてもらってるんだから、これで作っちゃおう!

 お花は、あとでこっそり買いに来ればいいよね。魔道具の設計料もあるんだもん。そうしよう!

 あっでも、どうやってお金を手もとに持ってくるのか分からないから、家に帰ったらお父さんに聞いてみなきゃ。


「はい、お待たせ」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます! また買いに来ますね」

「いいのよ。いつかお金を稼ぐようになったら、買いに来てね」

「もちろんです!」


 最後は、2人で声が被っちゃった。わたしは、あとで来るつもりだけどね。ふふん。

 そうして、わたしが水色の束、ハルトがピンク色の束を持ってお店を出た。


「一緒に作ると楽しみが減っちゃうから、それぞれで作らない?」

「うん、僕はそれでもいいよ」

「じゃあ、できたらお互いの家に持って行くっていうのはどう?」

「いいよ。できたら持って行くね」


 そうして、わたしの家の前でお別れした。あのお花が売れちゃう前に、急いでお父さんに聞かないと。そう思って、すぐに作業場に向かった。


「お父さん、ちょっといい?」

「うん? どうしたんだい?」

「あのね、今月でハルトも教室を辞めるでしょ。それでね――」


 お互いに折り鶴を作って、交換することになったこと。アメリさんのお店に行ったけど、売れ残りの中に、ハルトの好きな色のお花がなかったこと。でも売り物ならあるから、それを買いたいっていうのを説明した。


「お花を買うのに、あの設計料を使いたいんだけどね。どうやってお金にするの?」

「なるほどね。お金はギルドで引き出すんだけど、お花はすぐ買いに行きたいんだよね? それなら、お父さんが貸しておくから、それで払うといいよ」


 そう言って、銅貨を3枚持ってきてくれた。


「念のため、少し多く渡しておくからね。これで買えると思うよ」

「お父さん、ありがとう! さっそく行ってくるね!」

「行ってらっしゃい。気をつけてね」


 お父さんが後ろから声をかけてくれたけど、急いでたから振り返らずに「わかったー!」って言って、そのまま歩いて行った。あのお花が売り切れたら大変だもんね。

 お店に着くと、急いだおかげか、あのお花はまだ売れていなかった。よかったぁ。


「あら、レティちゃん。ほかの色も必要だったの?」

「えっと、実はあそこの紫色のお花を買いたくて」

「まぁ、わざわざ買いに来てくれたのね。ありがとう。もしかして、このお花も紙を染めるのに使うの?」

「そうなんです。1枚分なんですけど……」

「それなら、これくらいかしら」


 アメリさんが、何本か抜いて持ってきてくれた。今までは売れ残りをもらってたから、お金を払うのは初めてでドキドキする。銅貨3枚で足りるかな……?


「染める用なら、少し萎れてるのでも使えるから、おまけに付けておくわね」

「わぁ、ありがとうございます!」

「お代は銅貨1枚ね」


 よかったぁ。かばんから銅貨を1枚出して、アメリさんに渡すと、代わりにお花を持たせてくれた。


「はい、たしかに。買いに来てくれてありがとうね」

「こちらこそ、おまけも付けてもらっちゃって、ありがとうございます。そういえば、アメリさんは好きな色ってありますか?」

「ふふっ、いきなりね。わたしはオレンジ色が好きなの」

「もしよかったらなんですけど、いつも友だちに作ってるプレゼントを、アメリさんにも渡せたらなって思って」

「まぁ、ありがとう。……ということは、オレンジ色のお花が必要ってことね? たしか売れ残りの中にあったと思うから、ちょっと待ってね」


 そうして、奥からオレンジ色の花を束にしながら持ってきてくれた。


「ありがとうございます! ちょっとしたものなんですけど、できたら持って来ますね」

「ふふっ、楽しみに待ってるわ」


 アメリさんと約束して、お店を出た。手には、紫色の花束とオレンジ色の花束を持って。


 家に帰ったら、紙を染めては干して、を繰り返す。何度もやってるから、もうすっかり慣れちゃった。次の日には、水色、紫色、オレンジ色の、薄く色付いた紙ができあがった。念のために、もう1日置いてから折ったんだけどね。


 紙もなかなか綺麗に染まったと思うし、折り鶴も丁寧に折ったから、我ながらいい出来だと思う。

 紫色はハルトに、オレンジ色はアメリさんに。そして水色は、お父さんにあげようかなって。お花は余ってたものだったけど、お父さんのために折ったんだからいいよね。


 お父さんは作業場にいるから、あとで渡すとして、先にアメリさんに渡してこようかな? そう思って、アメリさんのお店に行くと、嬉しそうに受け取ってくれた。


「まぁ! なんて綺麗な紙細工なの。今まで、こんな素敵なものを作ってたのね。私にまでくれるなんて、本当にありがとう」

「こちらこそ、何度もお花を分けてくれて、ありがとうございました。ハルトも同じ気持ちだと思うので、2人からのお礼ということで」

「ありがとうね。ハルトくんにもお礼を伝えてね」

「はい!」


 その後、家に帰ってお父さんにも渡したんだけど、すごく喜んでくれて、自分の部屋に飾りに行ってたんだよ。今までだって、わたしが家で作ってたから、折り鶴は見たことがあったのにね。こんなに喜んでくれるんなら、もっと早く作ってあげればよかったなって思っちゃった。


 そうして、お昼ごはんを食べ終わったあとにハルトがやってきた。ピンク色の折り鶴を持ってね。


「はい、これ。レティちゃんに」

「ありがとう! わたしも持ってくるね」

「うん」


 ハルトに見えないように、両手で隠しながら持ってきて、そっとハルトの手に置いた。


「あっ!」

「へへっ、びっくりした?」

「うん、だって紫色だよ!? どうしたの?」

「いつもハルトには助けてもらってるからね。紫色のお花を使ってみたんだよ」

「えっ、売れ残りにはなかったよね?」

「ふふん。わたしには、魔道具の設計料があるからね。どーんと使っちゃった。っていっても、アメリさんがおまけを付けてくれたから、お得に買えたんだけどね」

「それでも、買ってまで作ってくれるなんて。……本当にありがとう。大切にするね」

「どういたしまして。わたしも大切にするね。ありがとう」


 ちょっと照れくさかったけど、想像してたよりも驚いて喜んでくれたから、やっぱり紫色にしてよかったな。それに、わたしも嬉しくなったもんね。


⊹ ⊹ ⊹


 そうして、今月最後の風の日。わたしたちの神殿教室での日々は、終わりを迎えた。


 神殿教室に入ったことで、アレクという大事な仲間もできたし、ハルト以外の同世代の子にも出会えたんだよね。

 文字だって書けるようになったし、絵本も読めるようになった。計算もできるようになったし、お金だって自分で払えるようになったんだよ。すごく成長したよね。

 それから、いろんな思い出も神殿教室に入ったからできたものだし、今まで本当に楽しかったなぁ。


 これからは、洗礼式に向かって魔力量を増やさないといけないし、体力もつけていかなきゃ。……うん、泣いてる場合じゃない!


――でも、やっぱり寂しいなぁ。


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