その25「ロリ人間コンテスト③櫻宮薫子の必勝法」
「この混戦を制する方法があります」
櫻宮薫子は言った。
俺は腕を組んだ。
「また何か良からぬことを考えてるんじゃないだろうな」
「とんでもありません、いたって真剣です」
あんたの場合はその真剣が斜め方向だから怖いのだが。
「前々から疑問だったのです。幼女は皆、その格好にちなんだ行動パターンを起こします。つまり医者の格好の幼女は医者の真似をし、患者の格好の幼女は患者の真似をする……」
「そして海賊の格好の幼女は海賊の真似を……ということか?」
「幼女がそれぞれの嗜好を持ち、その嗜好に合わせて服装を選んでいるのか? もしくは全く逆で、服装に合わせた嗜好を持つようになるのか? ……先ほど確かめたのはそれです。答えは」
「服装に合わせた嗜好……」
患者の姿の幼女に海賊服を着せた瞬間に、彼女は海賊らしい振る舞いをはじめた。つまり幼女の好みは見た目によって決定する、ということか。
「普通は逆だと思うのだが」
「幼女は私たち人間とは違います。ですからそういうこともあるのでしょう。そこでこれです」
櫻宮薫子は、何かの詰まった段ボール箱を俺の前に置いた。開かれたその中に入っていたのは、紺色の何かだった。
「これが私の必勝法です」
「これは」
「スクール水着です」
「さようなら」
俺は踵を返した。
「待ってください! 何故急に?! 話はまだ終わってませんよ?!」
「お断りする」
「まだ何も頼んでいませんけど?!」
何も言わなくとも分かっていた。どうせ「私は幼女恐怖症なのでこれを着せることができません、トキワさんが幼女をこれに着替えさせてください」などと続くに決まっているのである。先に断る、これが大切だ。君子は危うきに近寄らない。
「話だけでも聞いて下さい! いいですか、私は幼女恐怖症なのでこれを着せることができません、トキワさんが幼女をこれに着替えさせてください!」
俺は歩みを止めなかった。そのお願いはすでにお断りしている。
と、櫻宮薫子が俺の二の腕を掴んだ。
その力の切実さに、俺は思わずたじろいでしまう。
「お願いします……トキワさんにしかお願いできないんです」
「なあ……なんでそこまでコンテストにこだわるんだ? 幼女が怖い、それはあんたの本心なんだろ?」
「そうです。……ならばなぜ、そう言いたいんですよね、でもだからこそです」
「だからこそ?」
「私、得体の知れないものが怖いんです、昔から。人間って、ほら、よくわからないじゃないですか。だから昔は、人間のことも怖くて」
櫻宮薫子は苦笑いをした。
「でもあるとき気がついたんです。人間は欲望で出来ているんだ、そんなもんなんだ、そしたらようやっとほっとしたんですよね……。幼女も同じだと思うんです。わからないから怖いけれど、わかったら好きになる、かも」
彼女は言った。
「人間のことは、好きになれたんです。そうじゃなきゃ医者になんてなりませんよね。だからもしかしたら、と。幼女の秘密を知れば、好きになれるかも……だから、どうかお願いです」
そう言って、彼女は俺の手にスク水を握らせるのであった。
「スク水を幼女に着せてください」
「……いや、美談風に言っても無理なものは無理だ!」
「話は聞かせてもらった」
ロクでもないのが絡んできた!
「トゥインクルの一人勝ちは私とてしても望むところではない。その作戦、私も一口乗ろう」
LO-426が言った。
「その代わり、幼女一年分の1/2は私に……それでどうだ?」
「いいでしょう。ただし私が1/3、あなたに1/3、トキワさんに1/3」
「俺を巻き込むんじゃない!」
「いいだろう」
「良くないが!」
桜宮薫子とLO-426、固い握手が交わされた。変態連合軍ここに結成。
かくしてロリ人間コンテストはついに佳境を迎えたのである。




