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新・ロリの惑星  作者: 神原ハヤオ
第1節-起
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15/53

その15「水の底⑥生と死の分水領」

 地下一階に立てて並べられた冷凍カプセルの、一番奥から二番目の中に彼女がいた。

 あれからずっと、彼女の時は止まったままだ。

「なあどうして」

 俺は問いかけた。

「あんたは死のうと思ったんだ」

 『幼女』の秘密に衝撃を受けた、それはわかる。しかしこんなにもあっさりと、自分の命を投げ出してしまうとは思わなかった。あの頭のいかれた実験を、まだまだ繰り返すものだと思っていた。

 なぜ、大した理由もなくーー

 俺は俯いた。かぶりを振った。

 問いかけが、静かに自分に返ってきた。

「俺はどうして、今死んでいないんだ」

 人類絶滅、それを目の前にしてなぜ「大した理由もなく」俺は生きるのだろう。死んでしまったっていっそ、かまわないではないか。一度は自分から捨てようとした命ではないか。

 この女は心の中で抵抗していたのだ、きっと。人類絶滅という途方もない絶望を前にしてなお、自らの『好き』を頼りに生きていたのだ。それがなくなれば、彼女にはもうーー

 俺は、彼女のカプセルの横に寄りかかった。俺は今ここにいた。水の中だというのに息ができた。クオンの言っていた通りだった。

 クオンの言っていたことを、俺は思い出していた。

「肌にね、水を感じるんだよ、雑巾の手触りとかほこりっぽい空気とか、そういうものひとつひとつが生きている肌触りなのさ」

 俺はぽつり、ぽつりと語り始めた。生き返ってからのこと。クオンとのこと。アンドロイドの暴虐。彼女には聞こえていないのだろう。地蔵に話しかけるようなものである。

「実は俺も、あんたと同じに身を投げたたちなんだ。あんたと違って川にだったけれど。そのときは、それでいいと思っていた。今だって、生き延びていて良かったのかどうか、よくわからない」

 静かに時間が流れていく。

「ああ……だけどさ、夕日はきれいだったんだよなぁ。今まで、そんなことに目を向ける余裕なんてなかったからなのか、やたらに、眩しいんだよ。そんな時間が何になるのか俺にはわからないけれど、どうせ何にもならない人類なんだ、好きにしたって別にいいよな……」


 しばらくたって、部屋の扉が開いた。クオンがいた。

「そろそろ、戻らないかい」

 俺は頷いた。

「なあクオン、ここは何なんだ? 俺はさっき、この女の過去を見ていたんだが」

「人の心は、海に浮かんだ島なのさ。水に潜れば、繋がるところも見えてくるものなんだ」

 また小難しいことを、クオンは言った。

 立ち去るクオンの背中を見て、俺は心の中で問いかけていた。


 もう子供が生まれてこないはずの世界なら

 クオン、君はいったい何者だ?

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