[03.襲撃の後(Part1)]
遅れてスミマセン……。
どうやら、あの熊さんが盗賊団の首領だったようで、倒されるやいなや、盗賊どもは蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。ただまぁ……中にはそういう考えに至らない馬鹿もいるらしく、首領が殺された後も、図々しく窃盗をくり返す奴が結構いたりする。
当然、その全てを見敵必殺しました。
盗賊狩りに熱中していると、ポーンと、音叉を叩くような音が頭に響く。
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◆襲撃されている村を救え/Achievement!!
・報酬:[鋼鉄の亜神を秘めし断片]/[断章:巨人の歩む道]
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俺は不可思議アイテムを手に入れた。
[鋼鉄の亜神を秘めし断片]は見たところ、あのオベリスクの破片にも思える石ころ。アイテムの説明欄を見てみると、『鋼鉄の亜神の加護が宿った輝石。使用すると〈鋼鉄の亜神の恩恵〉が得られる』とのこと。
ただし、俺には使用できないらしい。おそらく、何かしらの条件を満たさないと使えないアイテム。まぁ、スリルを楽しんでいる俺にとっては無用の長物だな………別に悔しくないぞ……悔しくなんか……。
一方[断章:巨人の歩む道]は、戦闘技能《地割れ》が習得できる不思議な水晶。中央が淡く光ってるから、とっても摩訶不思議で綺麗。ちなみにこちらも覚えられない。イジメですか?
おそらく武器が合ってないためだと俺は簡単に予測する。剣じゃぁ、あんな地割れの隆起は起こせそうにないし。
ともかく、盗賊の脅威は退けらしい。首領以外は……なんともまぁ、味気ない。
少し不燃焼気味が拭えないまま俺は、とにかく人を置いてきた中央に戻ろうとして、ふとあるものに目をつけた。
この集落の家々でおそらく一番大きいと思われる家屋。そこに数人の騎士が守るように辺りを警戒していた。
「おっ……」
俺の視線に気づいたのか、何人かがこちらを警戒する姿勢を見せる。血のついた刃物持っていれば、当たり前に警戒されるだろうけど……少し様子がおかしい。
―――まるで殺気立っているのかのように。
「おい、おまえ」
「……ん?」
騎士の一人が前に出て、俺を呼びかける。が、なぜか殺気の籠もった目で睨まれている気がするのはどうして?
けして友好的に見えません。
そんな対応に、別段どうでもいい俺は気だるげに応じる。そんな目はいくらでも体験済みだ。
戦争とか、国盗り合戦とか、デスマッチのバトルロワイヤルとかのイベントで。
「何か?」
「その剣はどうした」
言われて、俺は気づく。そういえば、あの騎士様から剣借りっぱなしだった。
どう言おうか、と迷う俺。
「あー、これは……」
「―――返答次第では、お前の首が無いと思え」
言いかけた途中、いきなり刃を首に当てられる。俺はそれに動じることなく、ただ呆れ気味に見返した。
よくよく見れば、後ろに控える騎士も柄に手を当てたり、気の早い者はすでに抜刀して構えている。
「物騒だなおい」
「いいから答えろッ!!」
俺の首に、剣を当てている男が怒鳴った。その顔は完全に憤怒のご様子。
刃が皮膚に少し刺さり、薄皮が切られ血が伝う。そのことに俺は侮蔑した視線で剣を当てた騎士を見た。
「………訊ねたいなら、もっとまともな対応があるんじゃない?」
「質問しているのはこっちだッ」
剣を首に当てながら。俺の襟元を掴もうとしたんだろうけど、生憎、これほど見くびられて素直に掴まれる主義はない。
掴まれるよりも早く、そのいけ好かない顔に軽くジョブをかました。
「がふっ!?」
いわゆるカウンター。それは見事に決まり、いけ好かないイケメン顔を歪めた。
情けない声を上げて怯むその隙に、相手の襟首を掴んで足を払うと、勢いよく背負い投げる。
金属っぽいプレートアーマーをつけていたが、投げた感触は思っていたより軽い。
……もしかしてアルミ製? そんな疑問を抱きながら、俺はそいつを地面に向かって背負い落す。
相手の身体がいとも簡単に宙に舞う。そして彼は、背中から落ちた。
「ぐぅッ」
どうやら受け身に失敗したようで、騎士様の口からくぐもった声が出た。
「で、どっちが質問してるって?」
手に持っていた細剣の先端を、その騎士の首元に当てる。だが、彼は青ざめる所か、強い視線でこちらを睨み付けてきた。まぁ、さすがに刃物を首に当てられてると、無駄な言葉は吐けないらしいが。
「貴様ぁ!! レイジスを離せ!!」
後ろに控えている騎士の一人が叫んだ。抜刀していなかった者も全員が剣を抜き、殺気立つ視線で睨み付けて、全ての剣の先を俺に向けた。
一触即発―――まさにそんな瞬間。
「やめなさいっ!!」
凜と響き渡る中性的な声。
全員が全員そちらに顔を向けると、俺が気絶させてしまった騎士様が、見覚えのある深手を負った騎士に肩を貸して立っていた。
「リ、リリィさ、ま……?」
取り押さえていた男が呟く。
「ふむ……」
あの騎士様は『リリィ』というのか。妙に中性的な顔立ちに、少女のように澄んだ声を響かせる銀髪の騎士。
俺が観察するように彼らを見ていると、彼らはゆっくりと、こちらに歩み寄ってくる。
それに気づいた他の騎士達が負傷した男に手を貸そうと、金属を打ち合わせる音を響かせながら彼らに近づいて行く。
そして負傷した騎士が、駆け寄ってきた騎士達に肩を貸されると、肩の空いた騎士がこちらに駆け寄ってきた。あの戦闘に割り込んできたあの騎士様だ。
「部下が失礼なことをしました。先に手を出した方としては済まないけど、その者から手を引いてくれないかな?」
「別にいいけど。こっちもあんたの得物を勝手に借りちゃったわけだし」
取り押さえていた手を離し、男を解放すると、手に持った武器を回転させ、柄の方を彼に差し出す俺。
騎士はそれを受け取ると、静かに鞘に収めた。
「それこそ構わない。君がいたから、僕たちの首が繋がっているようなものだし」
「大袈裟だな~」
「大袈裟じゃないよ。君のおかげで命拾いした。本当に―――ありがとう」
そう言って微笑む彼は、まるで女神のような優しい笑顔を見せる。女だったら、今の一撃で沈みそうだ。それほど魅力的な笑みをリリィは見せた。
「で、助けて貰ってこんなことを聞くのは無粋だと思うけど―――君、何者?」
「あー…………―――しいて言うなら異世界人?」
ゲームの中だからそう答えるのが適切かだろうと、俺は考える。にしても、やけに人工AIの性能がいいな。│まるで本当に異世界の人間と会話しているようだ《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。
至極真っ当に答えたら、顔をしかめられた。……失礼な。
「……からかってる?」
「結構まじめに答えているつもりだけど」
それ以外に答えようがありませんと身振りで表現すると、目の前の騎士は俺に疑わしげな表情を見せるものの、諦めたような目つきで俺を見返した。
「格好からして、旅人には思えないし……、だと言って、君ならその格好で平気で旅してそうだし……」
「すごいな。あって間もないのに、よく俺のことをご存じで」
「ということは、できるんだ………」
「まぁね」
「………はぁ」
規格外の人間を見るような目つきで彼女はうな垂れる。
……それほどすごいことだろうか? 道中出てきた者と言えば、緑色の原始人集団くらいだが……。
「まぁ、それは置いとくとして。助けて貰ったお礼もしたいけど、今の所立て込んでいるから―――」
「あー、それ別にいいけど」
「―――欲がないわね……」
スッと目を細めるリリィ。まるで何かを見定めるような目つきで俺を見つめる。
そんな彼に、俺は屈託に笑ってはっきり断言した。
「戦うことが生きがいですから」
「…………」
呆れて何も言えないといった感じのリリィ。心外だ。
と、そこで俺はふと気がつく。
「あー、そういえば一つ頼みたいことがあったな」
「ん? 今用意できるものならするけど?」
「………なんでもいいから剣くれない?」
そう言うと、リリィは『戦闘中毒者……』と小さく呟いて、呆れ返った視線を俺に向けた。
……心外だ。
きつくなってきた……。
また一週間ぐらい投稿しなくなるかも。
読んでくれる皆様には申し訳がないです。




