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[05.首都の街(Part4)]

 翌朝、俺はとある商店の前にいた。石造りの堅牢な建物に、その存在を強く主張するかのごとく独特な看板が掲げられ、とっても悪目立ちしているお店。

「ここが……そうなのか?」

 人通りの少ない小道に店を構えるそれは、あきらかに周囲から浮いていた。

 彼女の『見ればわかるよ』との言葉に俺は疑問を抱いたが、改めてそれを目の前にしてみると言いたいことがわかる。

 手にした紙を確認してもう一度、その店の看板を見た。なんて書いてあるかは読めない。

 けど、読めなくてもその真意は嫌と言うほどわかる。

「………ま、ともかく中に入ってみるか」

 外にいるのもなんなので、俺は出入り口を跨いだ。

「邪魔するぞー」

「いらっしゃいませ、ロディック商会へ。何をお探しで、旦那さま?」

 入るなり投げ掛けられる柔らかな物腰の声。

 声のしたほうへ目を向けると、そこには店員と思われる若い男性が、にこやかな顔つきで俺を出迎えたていた。

「えーっと……ここは奴隷を雇える店でいいのか?」

「その通りで御座います。……あなた様の見てくれからして冒険者のようですが、戦闘奴隷をお求めで?」

 おそらく、彼は俺の腰に差した剣―――大量生産品の安物。小粒銀貨2枚で買えた―――を見ての言葉だろうと考え、男の質問に応答する。

「まぁ、そうなんだけど……割といるのか? 戦闘奴隷を買い付ける冒険者は」

「ええ、そういった方は多いですよ。……といっても、大抵は貴族のご子息様なんかが買い付けられますが」

 彼の言葉に、俺はなんとなく言いたいことを察する。

「見ての通り、俺はそんなに大金は持ってないのでな。質は気にしないから安い奴隷を売って欲しい」

「わかりました。ではこちらへ」

 男に連れられ、俺は店の奥へと進んだ。

 そしてある扉の前へと行きつくと、彼が腰に下げた幾重もの鍵から一つを選び、差し込む。

 ガチャン、と―――錆び付いた金属のこすれ合う音が響き、扉が開いた。その奥はすぐ先が見えなくなるほど薄暗い。

「今、明かりを準備しますので少々お待ちを。…………さ、こちらです。ああ、それと、これを」

「………? これは―――」

「匂い袋です。慣れていないと、ここの空気はきついので」

 つまり彼は、臭いということを言いたいのだろう。俺はそれをありがたく受け取った。

 水を張り、例の光る石を入れたランプのような容器―――それを手にした店員の後に俺も続く。カツカツと石段を踏み締める音を響かせながら階段を下った。

 降りるごとに鼻につく匂いが鼻孔を刺激する。言われた通り、俺は匂い袋を鼻に当てる。すると、清涼感のある香りが悪臭を和らげてくれ、なんとか我慢できる程度には落ち着いた。

 そして地下へと到達した。

 進む店員の後に続きながら、俺は周囲に目を配る。

 薄暗い一室。唯一の光は、鉄の格子がついた小さな通気口から入り込む光。かなり高い位置に備え付けられているので、よほど身長が高くても届きそうにない。

 そして、最も目につくのは牢屋のような檻が横一列に並んでいること。光に気づき、こちらを見上げる者もいるが、その顔全てに覇気がない。俺たちが近づいてきてもまったく反応しない者までいる。

「ここが一番最下層の戦闘奴隷になりますね。相場はだいたい銀貨一枚から数枚程度になります」

 連れてこられた檻の前にたった瞬間、俺は思わず顔をしかめた。

 そこにいたのは下着ともいえないボロ布を身に纏った人々。その格好はほとんど原始人と言ってもいい。

 品揃え(レパートリー)は年老いた老婆から、何らかの病気持ちと思われる醜女の女性、片腕のない男性と(ろく)でもないのは確かだ。

「ここ、か……」

「ええ、ここになりますね」

 きっぱり晴れ晴れしく言い切る店員が恨めしい。わざとやってるんじゃないかと俺は思う。

 一応、匂い袋を当てているが鼻につく匂いは拭えない。ここは一段と臭いが酷かった。

 身なりも体つきもいいとは言えないし、この中から選ぶとなると……。

「―――この中に……迷宮探索をしたことのあるものはいるか?」

「ええ、一人だけ。あそこに膝を抱えている鱗人(カッツロイ)の男性がそうです」

 店員が指さす先を見ると、まんま蜥蜴の顔つきの亜人と視線があった。目立った傷と言えば、片眼に大きな傷跡があるくらいで、その他はこの中で一番丈夫そうだ。

「……いくらだ?」

「銀貨五枚ですね」

「銀貨五枚……」

 上質な剣が買える値段だぞと、思わず考えてしまうのは俺の悲しい性。

 それだけ支払うと、財産が半分切ってしまうのだが、どうしたものかと頭を悩ませていると、ふとあるものが目に入った。

「………………こど、も?」

 檻の隅っこ、縮こまる幼い子どもと思える姿。

 汚れ伸びきった髪のせいで顔は見えないが、小さな体躯からして子どもであるのは間違いない。

 そんな俺の反応に、機敏に対応する店員は丁寧な口調で話した。

「ああ、それはウ族の『忌み子』ですね」

「……いみご?」

「ええ、『忌み子』です。ウ族は普通白髪なのですが、あれは見ての通り黒髪です。まぁ、耳は違いますが……」

 話の話題になっている幼子へと目を向ける定員。俺もそちらに振り向くと、確かに子どもの髪に薄汚れた白いメッシュのようなものが走っていた。つまり、あの長く白いラインが耳だろう。なぜか垂れてるけど、兎の耳に見えなくもない。

 『忌み子』というのだから訳ありであるのは違いない。不幸をあまねくとかそういったものだろうが、俺はそういう迷信は信じないたちなので関係ない。

「子どもですが、状態にはなんの支障もないので銀貨四枚―――といいたいところですが、お客様が二人とも揃えてお買いになりましたら、銀貨七枚、小粒銀貨五枚でお譲りしますよ?」

 奴隷商といえさすが商人。お客の目を見るのはいいのだろう。どこまで妥協できるかよくわかっている。

 銀貨七枚に小粒銀貨五枚―――払えない額ではない。だが、容易く支払える額でもない。

 正直、考え所だ。俺の目的は迷宮(ダンジョン)経験のある奴隷を買い取ることで、戦力にもなりそうにない子どもを買いに来たわけではない。第一、迷宮は子ども連れて歩けるほど生やさしくだろう。それにその食い扶持や面倒は誰が賄う。

 俺は慈善事業にせいを出すほど、金も心のゆとりもあるわけではない。

 なので『買うか買わないか』という判断に俺が悩んでいると、見越した男が口を開いた。

「ウ族は長い耳は、聴覚に優れています。なので、戦力にはならなくても魔物の気配を感じることができるでしょう。それに子どもとはいえ獣人(ウォルト)です。体力は人並み以上であることは保証しますよ?」

 一体、その口でどれほど掴ませてきただろう。

 俺は横を一瞥した。この臭いの中でも顔色一つ変えない商人は、相変わらず読めない顔つきで飄々(ひょうひょう)とした笑みを浮かべている。

「お客の心が読むのが上手だな」

「お褒め頂光栄です。これでも本職ですから」

 お世辞を言うと、にっこりと微笑まれた。

 ―――もっとも、その笑顔は作りもの(・・・・)だろうが。

「……わかった。二人とも買う」

「ありがとうございます。それと当店のサービスはお受けになります?」

「……サービス?」

 俺が店員へと向き直ると、彼は掴み所のない表情で語る。

「ええ。さすがにこの格好で外を歩かせるのはあまりよろしくないでしょう。なので、身体をある程度きれいにして、服もまともなものに変える、というものですが」

「……で、いくらだ?」

「まとめて銀貨七枚に小粒銀貨五枚、銅貨7枚と言ったところです」

 『銅貨七枚って、さりげなくむしり取るなこいつ……』と俺は思いつつも、払えない額でもないので、俺は支払うことに決めた。『正直、あの格好で街中を歩かせるわけにも行かないし』と内心付け加える。

「では、そのように。今奴隷を出しますのでお待ちを」

 店員が鍵を開けている間、俺は待ちぼうけ。

「………やっぱり臭うな」

 牢屋が開けられるのを見ながら、俺は匂い袋を強く当てた。


 上に戻ると、早速会計を済ました。

「はい。確かに銀貨七枚に小粒銀貨五枚お預かりします。服はそちらでよろしいですか?」

「ああ、頼む」

 質素な服を受け取り、店員へと支払うと俺は後ろに振り返った。

 そこには白耳の子どもと、爬虫類の大男。一人はまんま蜥蜴だから表情がわからないが、もう一人に至っては前髪で顔が隠れて覗えない。

 ……正直少し人選を間違えたかなと思うが俺は、気を取り直して二人を交互に見た。

「とりあえず、今日から俺がお前たちの主だ。ついてこい」

 抑揚(よくよう)のない話し方で語りかけた。

「へい、旦那様」

「………」

 蜥蜴のほうは返事を返したが、子どもは小さな足取りでただ黙ってついてくる。

 出入り口に差し掛かった所で、俺は一度立ち止まり店員へと振り返った。

「世話になった。また来る」

「……ええ、お待ちしております」

 思ってもいないお世辞を吐き、相変わらず心の読めない笑みを浮かべる店員がそこにいた。

「行くぞ」


 正直、この場にはあまり長く留まりたくなかった。


 ―――何かに染まってしまうように思えて




 一応、姿はマシになった二人だが、その首には刻印が刻まれている―――奴隷紋という消せない証が。

 刺青(タトゥー)のような黒い紋様が首回りにぐるっと一周刻まれている。俺はそれについて独断思うことはないので、むき出しの状態で連れ歩いた。

「―――お、ここがいいな」

 そんな二人を引き連れて、それなりに大きな大衆食堂に入った。いかにも酒場と言えるような円い机が目につく、古めかしくも活気に溢れた食堂。

 そんな中、何人かはこちらに目を向けるが、たいしたことのないように視線を戻す。奴隷を連れているのはそれほど珍しい光景ではないのだろう。

 食事時(しょくじどき)はとっくに過ぎているが、食堂では芳しい香りとアルコールの匂いが絶えない。

 俺は適当に空いている席につき、続いて二人が―――なぜか地面に座ろうとした。

「……なにしてんの?」

 蜥蜴が座り、それを見てうさぎの子が地べたに座ろうとするのを、俺は止めるハメになった。

「へぇ……何かおかしいことでもごぜえやすかい?」

 怪訝そうに首を傾げる蜥蜴の人。俺はそんな当たり前のことにも知らないかと呆れ、そんな彼を半眼で見ながら()いた。

「いや、なんで床に座り込んでの」

「………? 当たり前のことですぜ」

「だから―――」

 俺は言いかけ―――気づいた。

 国が違えば、文化も風習も変わるし、当然価値観も変わる。

 そもそも、奴隷が当たり前に存在する世界で―――ある程度は緩和されているとはいえ―――自分が当たり前とした常識が通用するはずがない。

 いままでに当たり前のようにとらえていた自分の常識のほうがおかしいのだ。

 そう考えると、自分の言っていることの矛盾に気づき、思わず黙り込んでしまう。

「…………とにかく、みっともないから普通に席についてくれ」

「へぇ……しかし旦那様。奴隷は普通、地べたに座らせるか、傍に立たせるかですぜい」

「いいから、さっさと席につけ。―――これは命令だ」

 強い口調で念を押すと、蜥蜴はしずしずと席につき、うさぎの子もそれに続いた。

 二人が戸惑っているのに俺は肌で感じる。

 無理もない。いままでまともに人として扱われていなかったのだから。

 だからといって、俺は彼らを奴隷の身分から解放するつもりはない。彼らを席につかせたのはそれなりの思惑があった。

「―――と、すみませーん」

「あ、はいはーい。少々お待ちおー」

 陽気な掛け声で近づいてくる一人の女性定員。俺とたいして変わらない年齢の少女は、この飲食店指定らしい制服をなびかせて近づいてくる。ファーストフードの規定制服を、ファンタジーにそえ変えたような代物であるのは口を挟まないことにした。

 円形テーブルをかいくぐり、あっという間に近づいてきた彼女は、俺たちのテーブルの前に来ると、清々しいほどにっこりと営業スマイルを浮かべる。

「はいっと、それでは注文をうけたまりまーす」

「ちょっと、質問。おすすめは?」

「おすすめですか? それでしたら、今日水揚げしたばかりのタタラ(ウオ)やシム-ル牛の上質なお肉を使った料理がおすすめです」

「そっか、じゃ、これとこれとこれ………あとこれも」

 俺は次々にメニューに描かれた料理の絵を指さしていく。

 文字が読めなくても、その料理がどんなものかなんとなく分かった。おそらく、文字の読めない人のための配慮だろう。この世界では誰もが文字を読めることが『当たり前』ではないだろうし。

「おお~。いっぱい頼みますね~。お客さん、もしかして大金持ちだったり?」

「今日はそれなりに奮発してるだけだから。見た目通りが普通だ」

「そうですか~……それは残念」

 値踏みされる視線に愛想笑いしながら、俺は勝手に注文(オーダー)を済ませた。

「それでは、少しお待ちください」

 言って店員は厨房へと消えていく。

「………さて」

 少女が立ち去るやいなや、俺は二人に向き直る。

「お前たちの名前が知りたい。………あるか?」

「へい。あっしはリザドていいやす。姓も部族名もごぜえません」

「………………ルゥ・リラ」

 か細い声でうさぎの子が言った。

「リザドにルゥ……でいいのか?」

 こくりと頷く子兎(ルゥ)を見て、俺は自己紹介をはじめた。

「俺はヤクモだ。見ての通り、駆け出しの冒険者。一応お前らの主人でもある。そこで訊きたいことがあるのだけど……武器は使えるか?」

「あっしは盾と剣……他にも槍や斧をかじったことがありやす」

「………」

 ルゥは首を横に振るう。おそらく、武器も持ったことすらないのだろう。……子どもだしなと、俺は後から心の内に付け加える。

 となると、この子が扱える武器は短剣(ナイフ)短弓(ショートボウ)ぐらいだろう。

 はっきり言って、戦力外なのは間違いなし。まぁ、RPGでの盗賊系職とでも思えばいいだろう。敏捷力(AGI)はよさそうだしな。


 

 

 それから料理が来るまで、会話はない。

 俺は肘をついて完全に暇を持て余す。そんな時、うさぎの子(ルゥ)と目があった。

 伸びきった髪で表情が見えないが、合間から見える金色の瞳がしっかりと俺をとらえる。当然、その瞳に生きる気力は見えなかった。(にご)(よど)んだ絶望しか味わったことのないような目つき。

 そんな瞳に思わず言葉が零れた。

「……なんつー目つきしてるんだ」

 消えそうなぐらい小声で言ったつもりが、うさぎの子(ルゥ)には聞こえたらしい。俺から目を外し、俯いてしまった。

 ……さすが、ウ族。耳がいいというのは伊達じゃないらしい。

 ちなみに、俺はこの子を(けな)したつもりはない。どちらかというと(あわ)れんだつもりなのだが、本人はそう捉えなかったようだ。小さな肩が小刻みに震えている。

 ――― 一体、どういう経験をしたらそんな風になるのか。そんな言葉が俺の脳裏によぎる。

 この子どもが一体何を考えているのか知らないが、とりあえず俺は誤解は解いとこうと思い、ルゥの頭に手を伸ばした。

 瞬間、背筋が大きく震える。だが、俺は気にせずその頭に手を置いた。

「…………」

「…………」

 一体、何をされるかわからない―――俺を見つめた瞳には怯えの色が見え、小刻みに震える子兎(ルゥ)

 そんな子どもに対して、俺は気にせずその頭を無造作に撫で回す。

「………よし(うし)

 ぐりぐりとしばらく堪能した後、俺はルゥの頭からそっと手を離す。

 当の本人は、ボサボサになった髪型で、頭にいくつもの疑問符を浮かべている。どうしてそうなったのかわからない素振りだ。

 言葉でどんなにきれい事を吐いても、それを実行しなければ意味がない……とうのは建前、ぶっちゃけどう弁解したらいいのかわからなかったので、とりあえず撫でてみたというのが本当。自分のコミュニケーション能力の低さに、少し後悔(がっかり)したのは言うまでもない。

 とりあえず戸惑っているうさぎさんはそれ以降放置を決め込み、俺は料理を待った。


 それから二〇分ほどたった辺りで料理が運ばれてきた。

「おまたせ~。では、タタラ魚の姿焼きに、シム-ル牛の赤身を使った荒焼き(カブー)だよ。他の注文はすぐ後から来るから待っててね~」

 器用に皿を置いていく店員はそう言い残すと、素早い足取りで厨房へと小走りしていく。

 そんな彼女を傍目に小刀(ナイフ)肉刺し(フォーク)を手に持った俺は早速料理に手をつけた。

 荒焼き(カブー)という肉の塊から一切れ切り出して口に運ぶと、ジューシーな旨味が口の中に溢れ出す。続いて姿焼きを一口―――白身魚のようなあっさりとした味わいに青魚のような身の食感。

「うん、うまい」

 その後も、続く料理に舌を唸らせつつ、じっくりと味わった。

 ―――兎のから揚げ、ポテトフライのような揚げ物、鍋に入ったリゾットのようなもの……etc。

 来たものからさっそく口つけてどんどん食べ進んでいきながら、俺はふと気がつく。

 目の前の二人―――リザドはいたって普通なのだが、ルゥは食い入る視線で俺の口へと運ばれていく料理を見ている。

「……はむ」

 フォークで刺しつまんでいたお肉をパクリ。すると、ルゥはゴクリと唾を飲む。その様子がまるでエサを待たされている犬のような……。

「………あ」

 そこで、俺は二人に許可を出していないことに気がついた。二人は俺の奴隷であるのだから、俺が指示を出さないと、食べようにも食べられない。

 本当のところ、俺は三人分のメニューを頼んだつもりだ。当然、二人が食べると思って。

 なので食って貰わなければ―――いや、食ってもらわないと困る。俺一人じゃあ、到底平らげそうにない量があるから……。

「食ってもいいぞ」

 言うなり、二人がおもしろいように反応する。リザドは蛇のような細い舌の出し入れが早くなり、ルゥに至っては迷っているような素振りを見せる。

 だが、それでも踏み切る決心はつかないのか、二人とも食事に手をつけようとしない。

「食わないと全部食っちまうぞ?」

「…………いいですかい? あっし達にこんなもの食わせて?」

 リザドの迷っているような声に、俺は素直に応えた。

「別に慈善のために食べさせる訳じゃないからな。迷宮を潜るなら、それなりに体力がないとただの足手まといだし。それに―――これが最後の晩餐になるかもしれないしな」

「……へぇ」

 俺が、彼らにまともなご飯を食べさせる理由がソレだった。誰しも、ゲームとかの冒険の時に、最高の状態(コンディション)で挑むだろう。わざわざ、HPを減らしてやる馬鹿はいない。

 ―――まぁ、この世界の人間がどうかは知らないけど。

 俺の言葉に納得したのか、二人とも俺を伺うように食事に手をつける。だが、それもしばらくも経たないうちに普通に、または大胆へと変わる。

 リザドはそれなりに食べ方を心得ているのか、ちゃんとフォークを使って食事を取る。……蜥蜴なのに―――シュールな光景が目に入った。

 一方、ルゥは完全に手づかみ。パンならまだしも、ソースのついた肉料理とかも普通に手づかみで食らいつく。それこそエサに貪り喰らう肉食獣のごとく。

 その光景に俺は顔をしかめずにはいられなかった。理由は聞くまでもない。

 だけど、俺はそのことについて注意を(うなが)すことはしなかった。

「………」

 できるはずがない。この料理は確かにうまいが、人生で最高の―――というわけではない。

 なのに、この子(ルゥ)は泣いていた。

 ただの料理に、まともな食べ物に。

 一体、どんな人生を送ればこの程度の食事に涙を流せるだろう。貪り喰らいながらも、しっかり味を噛み締めるように咀嚼し、かすかに聞こえる嗚咽を抑えながら、流れる涙を両手で拭うそんな子どもの姿。

 自然と食事を取る手を止めていた。そのまま、俺は最後までこの子が食べる姿を見続ける。

 自分の気持ちがわからない。―――ただ、複雑な気分だった。

ドグマ中毒をリハビリ中……。

書いていて、自分でも改めて『書くこと』の難しさを実感する。

ちなみにルゥちゃんは自分でも気に入っているキャラクター。娘のような愛しさを感じますぅ……。


それと話は変わりますが、『最強で最弱』とか書いちゃってるけど、比較対象がいないから薄まりつつある……それに危機感を覚えるこの頃………。

リリィを魅力的に見せようと試行錯誤したり、文章をくどすぎないように無い頭フル動員して書いているけどきびしくなってるなぁ……。

やっぱりちゃんとしたプロットを書いておけばよかったと反省しております。

こんな小説でも、ちゃんと読んでくれる人がいるということは励みになるぜぃ。

……だけど、そろそろ別の小説を書きたくなる今日この頃。色々台無しだヲ!!

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